リンカーン・ライム みんなのレビュー
- ジェフリー・ディーヴァー, 池田真紀子・訳
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12番目のカード 上
2010/05/09 21:27
シリーズ物の安定感と追跡物の迫力を感じる
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は初めて読むのだが、ディーヴァーの推理小説はかなり高い評価を受けているようだ。本書はディーヴァーの中でも、リンカーン・ライムというニューヨーク市警に所属していた警部のシリーズ物である。ライムは事故で車椅子生活を余儀なくされている。しかし、その才能を見込まれて顧問を仰せつかっているという設定である。文字通りの車椅子探偵である。車椅子というとどうしてもテレビドラマで一世を風靡した『鬼警部アイアンサイド』を思い出す。
本書ではもちろん殺人事件を扱っているのだが、その殺人の動機が何と100年以上前の出来事に端を発している。100年以上も前であると、どうしても記録が残っていない。すると逮捕しても裁判で勝利を得ることは難しい。しかし、それは動機に関することであって、実際の事件は21世紀の現代ニューヨークで起きている。
近代化を早くに迎えた米国では、市民の生活に関する記録が残っているのだろうか。今年は昭和の年号で言えば、昭和85年である。つまり、来年は大正100年を迎える。今から100年前のわが国は大正元年だったということである。それほど昔の出来事の記録が残されているのだろうか。代替わりも三代以上は変遷を遂げているであろう。
それではなぜそれほど昔の出来事が事件の動機になり得るかである。しかし、これこそが本書の大事なプロットである。分かれば読者の大半は、なるほどと思うだろう。それにしても、時効はないのか、そんなことが証明できるのかなど、首を傾げたくなることは、我々日本人なら持つであろう。
これが原因で追われる少女の恐怖感はよく描かれている。また、犯人は執拗で、かつ腕が良いことを読者に理解させているので、一層迫力を感じるのである。依頼者が意外であった点も期待を裏切らなかった。
また、ライムの周囲にいるスタッフも腕利きであるし、両者の力が拮抗している点も読んでいて飽きさせない点であろう。人気シリーズだけあって、読ませる文庫本上・下2巻であった。他のシリーズも読んで外れはないと確信した。
ウォッチメイカー 上
2012/02/26 21:19
ストーリー、新たなキャラクターの登場で目が離せないライムのシリーズ
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディーヴァーによるリンカーン・ライム・シリーズ第7作である。前回は『魔術師』を読んでディーヴァーの本領を発揮した一編に魅了されてしまった。ジェット・コースターと命名されているディーヴァーのストーリーであるが、今回は如何に。
ウォッチメーカーとは所謂「時計師」のことで、時計を扱うことを職業としている人を言う。時計の電子化とともに、今や時計の修理などを手がける時計師は少なくなってきた。従来の時計師は電池の交換で生計を立てる他はなくなってきた。しかし、時計が持つ本来の性質についてはよく知っている。腕時計など電池切れで放置しておくと、電池を新たに入れ替えても動作しなくなるそうだ。腕時計は人間の腕にはめて、人間の体温と常に接しておくことを前提に設計されているので、このようなことになるそうである。これも街の時計師から得た知識である。大量消費の使い捨ての時代にはそんなことを知っている人も少なくなってきた。
犯人がウォッチメーカーであることが判明したのは、犯行現場に時計が置かれていたからである。主人公ライム、サックス、刑事セリットー、介護人のトムなどのいつものメンバーの活躍は作業は迅速で、推理も冴えている。スピード感のある仕事ぶりである。
以前に読んだ『魔術師』で読者が学んだことであるが、このウォッチメーカーは捜査と読者の目を逸らせるために驚くべき仕掛けを施す。この辺りがディーヴァーの警察小説の特徴であろう。ここまで用意周到に計画を立てられると、解明する側は犯人の真の目的を見失ってしまう。
その結果、捜査資源を分散されて結局失敗してしまう。ところがこのリンカーン・ライムのチームはよく食い下がっていく。見事に裏をかかれてやられたと思う次の瞬間まんまと犯人を欺いて犯行を阻止する。
今回のケースでは、最後が意外な終わり方でこれも呆気に取れられてしまった。読み切り小説では有り得ないスタイルである。また、シリーズを意識して書かれているところも随所にある。以前登場した少女が再登場している。これもシリーズを通して楽しんでいる読者には大いなるサービスである。
今回はキャサリン・ダンスというキネクシスという人間の反応を読み取って、相手に言っていることの真偽を見極める専門家が登場する。このダンスはスピンアウトして2冊のシリーズにもなっている。たしかに、ライム・シリーズにレギュラーで登場すると、一層魅力的なスタッフ陣となるであろう。単独でもスピンアウトして成り立つくらいの魅力があるキャラクターである。全く、目が離せないライム・シリーズである。
魔術師 上
2012/01/03 21:19
イリュージョンをテーマにした大いに楽しめるエンターテイメント
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は車椅子探偵、リンカーン・ライムのシリーズに属するである。探偵ではなく、ニューヨーク市警の嘱託ということだそうだが、実際には捜査を指揮している。こんなことは本来はありえないであろう。そこが小説たる所以である。
今まで、このシリーズは『12番目のカード』しか読んだことはなかった。しかし、このシリーズはもう8作目も発表されている。他の作品を読んだことがないので、比較のしようがないのだが、この『魔術師』は極めて楽しい。とくに魔術師(イリュージョニスト)を題材に取り上げた。魔術師の技などは読み物にしてもそれほど生きてこない。やはり映像の世界の方がどれほど効果的かと誰しもが思うであろう。
ところが、ディーヴァーの筆になると、見事に各シーンが読者のイメージとしてよみがえってくるから不思議である。たしかに、映像化すればそれなりに楽しめると思うのだが、読者の個々のイメージに訴求する力は抜群である。個々の描写が実に巧妙かつ流麗である。一方で、ストーリーについてはさらに磨きがかかっている。
いわゆるどんでん返しの連続で、読み終えるまでどうなるかが分からないと言ってもよい。読者は何度も騙されるであろう。信頼していた協力者に暗い影が落ちたと思ったら、次の瞬間には特等席の切符を手にしていたという具合である。
加えて今回はライムの身にも危険が迫り、手に汗握るシーンの連続である。サービス精神旺盛のディーヴァーである。本書は第一級のエンターテイメントに仕上がっている。シリーズ物の難しいところはヒットしたからといって同じ手を何回も使えないというところであろう。
次はどのような仕掛けを登場させるのか、ディーヴァーの腕の見せ所であろう。本書の次の作品はもう登場しており、確たる評価を得ているであろう。それ以外にも未読のストックがある分、これからまだまだ楽しめるということである。
コフィン・ダンサー 上
2011/12/24 14:51
書籍「コフィン・ダンサー(上・下」人物描写は殺し屋に至るまで緻密で最高
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る
「映画でリンカーン・ライムを知ってから
どのくらい過ぎただろう、
今でも自分の頭の中のリンカーンは
デンゼル・ワシントンだし、
サックスはアンジェリーナ・ジョリーだが
『ボーン・コレクター』の頃と比べると
アンジーは有名になりすぎて
ちょっとイメージは変わってきたかな」
「棺の前で踊る男(コフィン・ダンサー)」の
異名を持つ殺し屋は
ターゲットを狙ったら決して外さない、
今回リンカーンにはその殺し屋を捕まえる手助けが依頼された、
操作中の事故により重度の肢体不自由でベッドで過ごす彼は
手足となる最新のコンピュータを駆使し
犯罪現場で手足となって活躍するアメリア・サックスと共に、
決して不用意な証拠など残さないダンサーを
追い詰めていくわけだけど、
次がどうなるか気になる、
まさにページターナーと言われるだけのことはある、
文庫で上下巻なのがうれしい、
読み始めはまだまだたくさんるとどんどんめくれるからね。
リンカーンの実質的な手足となるアメリア・サックスも
今作では犯罪現場の科学捜査官として
成長した姿を見せてくれる。
実際のアンジェーリーナ・ジョリーは
この作品のサックスよりも知名度や実力も上がってしまったので
その点ではイメージの原作と俳優がちょっと食い違うが
それでもヒットした映画ってのは
それ以降も強烈な印象を残してしまうから
原作者が映画化に慎重になるのも仕方ないだろうな。
ある犯罪の重要証言をしてくれる3人の証人のひとりが
経営者でありパイロットでもある彼が飛行中の爆発で殺された、
残る2人をダンサーの手から守り
そしてダンサーを捕らえようと
犯行現場やさまざまな考えから集めた証拠をもとに
ダンサーの近辺には迫るが
いつも彼らの手からスルリと消えてしまう、
このあたりの展開を読んでいて感じるのは
捕まってほしいが、そう間単に捕まってもらいたくもなく
そのもどかしさとでも期待を裏切らない展開で
ホント楽しませてくれた。
今回はリンカーンとサックスの際どい関係や
明敏さを感じさせない分析官のメル・クーパーにも
リンカーンは実は信頼してる描写があったり
ニューヨーク市警の殺人課からきた二人も時折登場しては
ちょっとした笑いやなるほどと思わせるような活躍もし
チーム全体として事件にあたる様子が
丹念にそしてスピーディーに描かれていて
今後のチームの発展も期待したい。
この作品はリンカーン・ライムシリーズの2作目、
最新刊は新書で読んだけれど途中が全部抜けてるので
文庫で続けて読もうと思っている、
映画は知っていたがそのときはジェフリー・ディーヴァーという
原作者は知らなかった、
彼の作品を読もうと思ったのは今年亡くなった
児玉清さんがさかんに薦めていたからで
こうして人の想いってものは伝わるんだと感じている。
★100点満点で90点★
soramove
ソウル・コレクター 上
2012/11/24 22:07
近未来の犯罪を予感させる一篇
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はディーヴァーによるリンカーン・ライムのシリーズ第8作目である。シリーズ物は難しい。読者はシリーズに何を期待しているのか? 作家はそれをよく汲み取らなければならない。たとえば、ディーヴァーのスピンアウト作品であるキャサリン・ダンスが主人公のスリーピング・ドールは期待外れであった。
何故ならば、キャサリン・ダンスの持ち味であるキネシクスが活躍する場がほとんど描かれていなかったからである。それを期待していた私は肩透かしを喰らったような気がした。ライムのシリーズは、ライムとサックスのコンビ、あるいは周囲の仲間であるセリットー、クーバーなどの絡みが面白く、人気が高まったのであろう。
しかし、そもそもライムの持ち味である捜査手法に興味を覚えた人が多かったのではなかろうか? 現場を隈なく調べ上げて証拠を分析するライムの捜査手法である。シリーズではこれを必ず出して欲しいものである。それが私の期待なのだ。しかし、今回はそれがほとんど出てこない。少なくとも犯人逮捕への貢献度は低いように描かれている。
そろそろ材料が枯渇してきたのか、あるいはいつもそれでは飽きがくると考えて、異なる趣向を用意したのか? それはそれでディーヴァーの考える効果は出ていないとは言えない。しかし、今後はこれが当たり前の描き方になるのであれば、落胆してしまう。このようにシリーズになった場合の期待の仕方は、読者毎に分裂を始めるので、当初の作品のように簡単ではないと推定する次第である。
今回はライムの成長過程でいわくのあった従兄弟の登場である。ライムは今まで事情によって絶縁状態にあった従兄弟と接触する必要が出てきた。この従兄弟が殺人の容疑者となったからである。
シリーズ物は難しいと書いたのだが、実は本書ではライムの捜査手法を登場させる暇がないほど、犯人の策略が巧みであった。この策略が面白い。ディーヴァーの発想は近未来の犯罪を想起させる。つまり、個人情報を利用した犯罪である。情報を巧みに利用して他人を犯人に仕立て上げるというものである。
この種の犯人は個人情報にアクセスできる立場にある人物に限られるのだが、情報管理が杜撰であれば容易に悪用されてしまう。そういう点で近未来的な犯罪の姿が描かれているといっても過言ではない。ディーヴァーのアイデアの泉はまだまだ滾滾と湧き出ているといってもよい。次回もどのような展開を見せるのか期待できよう。
ウォッチメイカー 上
2011/11/24 16:06
敵役を含めキャラクターの造形が見事、ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチ・メイカー」。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ7作目だから当然といえば当然だが、この物語、車イスの元
ニューヨーク市警科学捜査本部長リンカーン・ライムをはじめライム組
のメンバーの造形が素晴らしい。これだけキャラが立っていれば、物語
も動かしやすいだろう。その中でも、鑑識捜査官としてライムの手とな
り足となるアメリア・サックス、今回、助っ人的に登場する人間ウソ発
見器、キネシクスの専門家であるキャサリン・ダンスの個性が際立って
いる。そして、今回の殺人者"ウォッチメイカー"、残忍な手口と現場に
アンティークの時計を残す謎めいた行動、敵役としての存在感もなかな
かのものだ。冒頭で起こる2件の殺人事件、それが連続殺人へと発展し
ていきライムたちが動き出すのだが、後半はドンデン返しに次ぐドンデ
ン返しで、ラストは事件の驚くべき真相が明らかになる。このスピード
感とエンターティメント性はディーヴァーならでは。ここまでドンデン
しちゃうと軽さを感じたりもするのだが、それさえ許されてしまうよう
な楽しさがある。事件の後日談的な第4部が何ともいい感じで後味もと
てもいい。
スティール・キス 上
2020/12/30 23:47
どんでん返しはいまだ健在?
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はディーヴァーのロング・シリーズであるリンカーン・ライム・シリーズの第12作目に当たるミステリ小説である。警察小説でもあるが、どちらかといえば鑑識畑の分野であろう。鑑識畑の小説、ドラマはわが国でも人気が高い。『臨場』、『科捜研の女』などである。理詰めで犯人を特定し、追い詰めていく。如何にも日本人好みである。
本シリーズはこの後、14作目まで発表されているヒットシリーズである。ディーヴァーの筆が早く、翻訳が間に合わず、年単位で遅れているくらいである。
このくらいのロング・セラーになると、登場人物もお馴染みが増えてくる。今回は女性の鑑識類似業種の新人が加わって、登場人物の彩りが豊かになっている。勿論、お馴染みも見せ場が多い。
ネットワークや先端通信技術などが出てくると、如何にも時代を先取りしている雰囲気があるが、今回はIoT、で機械と人間のやり取りを進めたものが主題となっている。ディーヴァー一人では見切れない範囲の広さである。おそらく専門家のスタッフが活躍していることであろう。
それらのテーマに加えて、今回は30代の男性が連続殺人を犯す。この中ではサックスの元亭主、母親などのプライベート事情なども登場する。何気ないプライベートであるが、元亭主の追い詰められた情景、悪事を重ねる様子などが本筋そっちのけで読ませるところである。
ネタが枯渇することを当初考えていたが、さすがにディーヴァーである。枯渇どころかさらに読者の興味を吸収するところは恐れ入るほかはない。付け加えると、本書ではライムがニューヨーク市警の顧問を辞し、プライベートな存在になっているのも面白い。次の展開が誠に楽しみである。
エンプティー・チェア 上
2012/05/30 22:12
あっと驚くサックスの行動に意外性あり
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディーヴァーによるリンカーン・ライムのシリーズ3作目である。事故で車椅子生活となったライムが地元ニューヨークを離れて、名医のいるノースカロライナ州へ手術を受けに行った。したがって、舞台はノースカロライナ州の街である。
病院での手術を待つ間に、ニューヨーク市警のベルの親戚からの依頼で、解決が難航する事件の解決に助力をする。ここからライムとサックスの活躍が始まるのである。馴れない土地での捜査はきわめてやりにくい。地質や植栽などの特徴は地域によってかなり異なるので、科学捜査を行うライムとしては証拠となるこれらについて知識がないことは、致命的なのかもしれない。地元ニューヨーク以外の土地についてはライムといえども見当がつかないのである。
さらに、ライムとしては商売道具がなければ何もできない。そこはニューヨークの自分の実験室とは環境が大いに異なる。まず、保安官事務所に検査機器を借りるなり、買うなりして揃えてもらうところからスタートする。
シリーズを通してみると、手強く凶悪なライバルが登場してライムの前に立ちはだかり、真剣勝負になるのが常であった。本書ではライムとサックスは敵役が誰かとか、どういう人物かという以前に事件の全容を掴むのに苦労する。
場所はノースカロライナ州の片田舎で、少し北に行くともうヴァージニア州である。地元の警察は保安官事務所の保安官と保安官補である。実在の地名と架空の地名が混在している。
内容は複雑であるが、それがいつもの通り面白いのである。時々刻々情勢は変わっていく。読んでいる方もなかなか追いつかないほどである。今まで味方だと思っていた者が敵であることが判明する。すると、今までの情報は相手方に筒抜けであったことになる。この味方が急に敵になったり、敵になりそうになることは、ライム・シリーズの真骨頂であろう。
シリーズの面白さはやはり本書でも如何なく表出する。舞台を変えることによって趣が異なる本書であるが、捜査方法は同じである。ただし、サックスが自分の信念を曲げずにあえて違法な行為で闇雲に突き進むという行動はサックスの意外な面を見せてくれることになった。
石の猿 上
2012/04/30 21:40
中国マフィアを相手にするライム
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディーヴァーの描くリンカーン・ライムのシリーズである。これが4作目となる作品である。1作目のボーン・コレクター、2作目のコフィン・ダンサー3作目のエンプティ・チェアーに比べるとだいぶ落ち着いてきた感がある。毎回毎回発展と進歩があるのがこのシリーズの特徴だと思う。同じ調子で描かれているわけではないが、今回もお得意のどんでん返しが用意されている。
今回は中国の難民が米国に流れ着くところから始まる。実はこれにも最後に驚くべき種明かしが待っている。このシリーズの共通点を上げれば、凶悪で狂気の殺人鬼がライムの相手として登場することであろう。あっさりと兜を脱ぐようなヤワな殺人鬼では物足りない。散々弱い者を痛めつけて悪虐非道ぶりを見せ付け、読者の怒りを買うだけ買ったところで、ライムと対峙させる。
これで相互にハンディはなしだ。ここから両者が策略をめぐらし、互いを意識し、試合が始まるのである。策略は秘中の秘であるはずだが、これが漏れてしまう。味方のどこかにスパイがいるのかも知れない。疑心暗鬼になる。
この辺の駆け引きがなかなか面白い。何故作戦が漏れてしまったのか。これが本作品の最も重要な部分かもしれない。シリーズのこれ以降の作品でもほぼ同様の仕掛けが再登場してくる。
今回登場するのは中国人が多いが、中国の福建省は華僑が多いところだそうだ。この中国人の風俗、習慣がよく登場する。そのなかに、「六十歳は老年期の始まり、尊敬の念を抱かれる年代の始まりとされ、華々しくお祝いをするのが伝統」と記されていた。福建省の言い伝えであり、お祝いの習慣であろう。人生の真理を言い当てているような気がする。含みのある言葉であると感じた次第である。
本書ではライムの手術の話が出ていたが、リスクのある手術を受けるのか否か。ストーリーへの影響はさしてないようだが、案外これが何かの伏線になっているような気もする。しかし、それはまだ先の話であろう。
ボーン・コレクター 上
2018/09/30 18:10
知識とスピード感あふれる警察小説
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
捜査中の事故で四肢麻痺となったリンカーン・ライム。尊厳死まで考えていた彼のもとに、事件に協力してほしいという依頼が舞い込んでくる。徐々に熱意を取り戻し、独自の調査チームを招集して連続殺人犯と対決する。「CSI科学捜査班」ばりの最先端捜査技術が出てきて、なんかすごいことやっとるな、というのは伝わってくる。非常にスピード感があり、息つく暇がない。下巻がどうなるか楽しみだ。
2017/11/11 21:16
読み終えるにがもったいない
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミント - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっとリンカーンとアメリアが帰って来た!前作は私的には今ひとつだったが、今作は壮快感疾走感謎解きの面白さに加えて、より一層登場人物たちが魅力的に書かれていると思った。
バーニング・ワイヤー 下
2016/05/24 16:21
しっかりと計算されつくした二転三転の展開に敬服
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
しっかりと計算されつくした二転三転の展開に圧倒されました。科学捜査という一見地味な作業を生き生きと描いており、電力という何処にでもあるモノを途方もない大量殺人兵器として駆使する手腕に敬服でした。冒頭の電力トラブルから早い展開で“アークフラッシュ”による事故。それに並行する形でメキシコ舞台での因縁のテロリスト:ウォッチメイカー=リチャード・ローガンの追跡劇、更にFBI潜入捜査官フレッド・デルレイも何かの事件を追って登場してくるが、まだ伏線の段階。当面は、“アークフラッシュ”は事故でなくテロと推測したリンカーン・ライムグループによる科学捜査で、現場で何が行われたかを追求していくやり方に引き込まれてしまった。ライムグループによる捜査の結果、犯人は電力会社アルゴンクイン・コンソリデーテッドの中堅職員レイ・ゴールトと判明し、次のターゲットもほぼ推測されるが、惜しいところでレイ・ゴールドに逃げられ、次のターゲットの推測もできないという、犯人に一歩先行される展開で下巻へ。電力会社の保安部長バーニー・ウォールがレイ・ゴールトを捜索中に逆に捕えられ、追跡側の陣容を吐かされ攻守逆転。一方、10万ドルもの大金を盗んで(横領?)情報屋ウィリアム・ブレントに渡して貴重な情報を得ようとしたFBI潜入捜査官フレッド・デルレイの前にブレントは現れない。一方、伏線のまま忘れ去られていたウォッチメイカーがやっと本格登場してくるが、メキシコ警察の有能な捜査官アルトゥール・ディアス中佐を狙ったテロ現場で警察に包囲されている。何か予想外の展開・・・???・・・と思っていると、カリフォルニアでは電力テロが急展開。犯人とほぼ断定されていたレイ・ゴールトはテロ事件前に殺害され、何者かがすり替わっていたことが判明。しかも、その全体を企画した黒幕は電力会社女社長アンディ・ジェッセンであり、実行犯はその弟であるという。エエーッ、驚天動地の展開であるが、更に二転三転のどんでん返しが仕掛けられているのだから凄い。
2013/02/10 18:32
はやく、次回作の電子書籍化を!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:電子書籍Zさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジェフリーディーヴァーはとにかく面白い。で、読み応えがある。
ボーンコレクターは古い作品だけど、もう一回読んでもやっぱり面白かったです。
もはや、電子書籍でしか小説を読まない私としては、
はやく次回作「コフィン・ダンサー」の電子化をしてほしくてたまらないわけです。
いや、もう、ほんとにお願いします。
ウォッチメイカー 上
2012/05/31 17:36
個人的にはライムシリーズの最高傑作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:rc2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ライムシリーズは今まで全部読んできていて、どれも最高に面白いのですが、その中でもウォッチメイカーは最高傑作だと思います。
今回はキャサリン・ダンスなどの魅力的なサブキャラクターが登場するのに加え、サブプロットとしてサックスと亡くなった父の話が繰り広げられます。これがストーリーに深みを加える効果を生んでいます。
こういうシリーズ物はメインの探偵役が成長しないパターンが通常ですが、本作ではサックスの父のエピソードによってサックスの成長が見られ、違った感動を生んでいます。
2024/12/31 21:42
情報化社会への警告
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:lucky077 - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人情報を操作し、人を追い詰めていく犯罪を描いています。様々な情報が集まる会社に目をつけますが、持ち出し方がわかなない(当然犯人も見えない)。
一気読みでした。