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刑事ヴァランダー・シリーズ みんなのレビュー

  • ヘニング・マンケル(著), 柳沢由実子(訳)
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みんなのレビュー28件

みんなの評価4.1

評価内訳

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本霜の降りる前に 下

2017/09/27 11:38

女ヴァランダー

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:バニー - この投稿者のレビュー一覧を見る

今まで通り、父ヴァランダーを主役に、娘のリンダの話が展開するのかと思っていたのに、完全にリンダ主役の話だった。なーんだ。
でも、いつもヴァランダー視点で描かれていたから、ヴァランダーが他の人からどう見られているのかが知れたのが、面白かった。
美女に出会った時のヴァランダーの毎度の反応が笑ける。

それにしてもこのシリーズに出てくる登場人物に性格のいい人がいない。
みんな自己主張が激しすぎて衝突ばかりしているような。
ステファン・リンドマンが一番マシか。

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紙の本霜の降りる前に 下

2016/03/30 09:51

マンケルさん大丈夫?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る

マンケルさん、亡くなってしまったのでしたね。あと、何作残っているのかなぁ。とても残念です。この本はヴァランダーシリーズではなくて、娘のリンダが主人公と聞いていましたが、まるでヴァランダーシリーズの一作と言ってもよいほどです。
 マンケルがまだ50代前半の時の作品のはずですが、この方、どんどんミステリーを書く気持ちが薄くなっていったのではないか。この作品もクライムノベルというより、リンダ自身と親子、家族(アンナの家族も含む)を書こうとしたのではないだろうか。
 だが、終盤に驚きもなくミステリーとしてもイマイチだった。リンダを描くことにも成功したとは言い難い。ラストシーンがあまりに見え透いていて、ありきたりなので逆に驚いたほどだ。つまり、マンケル作品は質が落ちていっている気がする。
 とはいえ、残っている作品は全部、読むつもりですけど。

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紙の本殺人者の顔

2002/07/22 23:21

小市民的な刑事が主人公の、スウェーデン警察小説

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浅知 恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ある雪の予感がする寒い早朝、通報を受けた刑事クルト・ヴァランダーは、老夫妻に振るわれた残酷な暴力の爪痕を目の当たりにする。瀕死の老婦人が残したのは、「外国の」という一言だった。捜査の陣頭指揮をとるクルトは緘口令を敷くが、テレビ局に情報が漏れ、移民への襲撃事件までもが発生してしまう。クルトたちは執念で犯人を追い続けるが……。

主人公クルトは警察官としては優秀だが、私人としてはお世辞にも格好良いとはいえない中年男。妻には逃げられ、娘とは上手くいかず、父親はどうやらボケ始めているようだ。おまけに食事の不摂生がたたって、中年太りが深刻な問題となってきている。どうも親近感を感じてしまう、小市民的なキャラクターなのだ。

物語は老夫婦の惨殺事件からはじまり、やがてスウェーデンの移民政策ともリンクしていく。このあたりの展開は非常に上手い。スウェーデンの移民受け入れの状況なども丁寧に説明されていて、興味を満足させてくれる出来になっている。

ところで、本書の警察官たちは他国の警察官に比べ、仕事量が少ないような気がする。割と早い時間に帰宅してしまうし。この辺はお国柄なのだろうか。

続編の邦訳が待たれる好シリーズとなりそうだ。

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紙の本笑う男

2006/02/24 00:51

苦しい休暇、気まずい復帰を乗り越えて

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヴァランダー警部は、前作『白い雌ライオン』の事件から立ち直ることができず、長く苦しい休暇を経て警官を辞めようと心を決めた。そこへ友人の弁護士が訪ねてくる。父親の事故死に不審な点があるので調べて欲しいというのだ。警官としての自信を失ったヴァランダーが、力になれないと伝えた数日後、その友人が殺されてしまう。事故死と他殺。まるで無関係にみえる二つの事件に繋がりを感じ取ったヴァランダーは、辞意を撤回して捜査を開始する。
 辞職すると聞いていた同僚や部下は、ヴァランダーの部屋を使い、捜査での役割も新たにしていたから、皆、戸惑いを隠せない。かなり気まずい上に、休職が長すぎたせいで聞き込みや会議の進め方にも自信が持てない。そんなヴァランダーだったが、事件の核心に迫るにつれて、だんだんと警官としての勘が戻ってくる。いつも衝突している父親を古い人間だと批判していた自分が、古い警官の部類に入るようになったことを感じ、世代間のギャップにも悩むが、新しい警官像の必要性を認めた上で、自分のような警官も悪くないのではないかと思い始める。ヴァランダー再生の物語ともいえるかもしれない。
 本シリーズの魅力のひとつにスウェーデン小説であることが挙げられると思うが、本書でスウェーデンらしさを感じたのは、新しく登場した女性警官フーグルンドの設定だ。若くて美人で優秀な刑事とくれば、たいてい独身だが、彼女は結婚していて子供もいる。子供が病気になれば仕事を休むし、夜間の捜査が必要になれば夫に子供をみてもらい、「先に寝ててね」と言って仕事に出る。彼女は仕事か家庭かという二者択一で悩んだりはせず、家族のことは家族の問題として、仕事のことは仕事の問題として対処するのである。今後、イースタ署におけるフーグルンドの存在はますます大きくなりそうだ。

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紙の本五番目の女 上

2010/10/11 23:10

悪人なら殺してもいいのか

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヴァランダー刑事シリーズ第6弾。一人暮らしの老人の不在、何も盗らない不法侵入。事件性がないと思われた二つの通報が、たっぷりと苦痛を与えてゆっくりと殺された死体の発見で、残虐な連続殺人事件へと発展する。殺人方法の異常さと、それぞれが何の接点もないことからサイコパスを疑うが、被害者たちの人物像が明らかになるにつれ、ヴァランダーは別の観点から捜査を進めていく。

 何年にも渡って他人を痛めつけてきたような人間は、殺されて当然だという感情は抑えがたいし、警察は何をやっているのだ、と思うことはしばしばある。しかし、私達は法によって秩序を保っているのだし、警察だって現場の人間はこつこつと地道な仕事を重ねているのだ、ということが、ヴァランダーたちの捜査を通して、リアルに描かれている。

 1996年の作品(スウェーデンが舞台)だが、正義とは何かという問いや、信用できない警察に代わって市民が悪人を裁こうとする動きなど、現在の日本にとってはタイムリーな問題ではなかろうか。

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紙の本背後の足音 上

2011/08/19 22:28

8月を暖かいと感じる国の事件

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヴァランダー刑事の同僚スヴェードベリが頭を吹き飛ばされて殺された。同じ頃、友達と旅行に行った娘がいつまでも帰ってこないと何度も訴えてくる母親がいた。警察は事件性はないと考えて放置していたが、なぜかスヴェードベリは一人で捜査をしていたようなのだ。やがて娘たち3人の遺体が奇妙な状態で発見される。

 殺人は計画的で異常なまでに緻密で、おまけに被害者たちが私生活の一部を注意深く隠していたため、動機や手がかりとなる人間関係がまったく浮かんでこない。死んだ若者の両親には責められるばかりだし、ヴァランダーは糖尿病にも苦しめられ、相棒の女性刑事は夫婦関係の危機にあり、実りのない捜査が続いてまともな睡眠も取れず、誰もが消耗していく。

 今回は警察の仕事が肉体的にも精神的にもひたすらハードワークであることがリアルに描かれている。警官たちはまともに家に帰れないし、際限のない徹夜続きだ。上層部が政治的駆け引きをしている間、現場の人間が這いずり回って作業を進めているのは、どの国も同じということか。

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紙の本リガの犬たち

2016/06/30 19:43

警察小説のはずが、国際的な陰謀ものに。それもスウェーデンという立地のせい

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

このシリーズ、「警察小説」と言ってはいますが、作者が描きたいのはその時代の空気、体制やら組織やら、混沌とした世界そのものと、そこに生きるひとりひとりの人間の姿、という気がする。 だから登場人物それぞれが魅力的なのだ。 かっこ悪くても、間違いだらけでも。
冒頭で、リードヴェリ(前作に登場。 ヴァランダーの先輩刑事)がすでに亡くなっていることがわかる。 いや、いつかは死ぬことは知っていましたが、こんなに早くとは・・・。 ヴァランダーのように、私もショックを引きずった。

スウェーデン南部の海岸に、二人の男の射殺死体が横たわったボートが流れ着いた。 彼らはどこから来たのか? 捜査の結果、どうやらラトヴィアかららしいということがわかるが・・・。
ラトヴィアってどこですか?、という私の疑問にもヴァランダー警部が答えてくれる。
スウェーデンとバルト海を挟んで向かい側にあるのに、ラトヴィアについてよく知らないどころかバルト三国の首都もごっちゃになっているそうで・・・わー、近くの国の人もそうなんだね! というかそれで私もスウェーデンとバルト三国の位置関係を知るのだった・・・リガが世界遺産に登録されてるのは知ってましたけどね(物語の設定は1991年。 世界遺産登録前だ)。

独立はしたもののロシアからの影響から逃れられない共産主義国家、それがここに出てくるラトヴィアの姿で、自由やら民主主義が当然のこととして身についているヴァランダー警部にはわかったつもりではいても理解できないことらしい。 なんでこんなにラトヴィア人はたばこを吸うのかと驚き、自分は死刑が存在する国にいるのだと気づいて息が止まりそうになったりしている。
ヴァランダー警部、日本に来ても驚いちゃうだろうな・・・。

まぁそんなわけで女運の悪いヴァランダー警部はリガの未亡人に恋してしまい、彼女のために、要人の汚職・腐敗を糾弾し真の独立を目指そうというまぁある意味テロリストグループに加担することになるのです。 まぁテログループというよりは、レジスタンスに近いか(そこに至るまでの、リガの捜査官との友情のほうをもっと読みたかったのだが)。
警察小説のはずが国際陰謀物語になってしまいましたが・・・でも、話がそっちに飛ぶ可能性を、その時期のスウェーデンが持っていた、ということなんだろう。

北欧は私の中で長らく「テキスタイルの国」だったが、やっと実情を伴った国として認識できてきたような気がする。 これもこのシリーズのおかげかと。(2009年2月読了)

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紙の本リガの犬たち

2004/06/20 15:50

後を引く捨てがたい味わい

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 後を引く印象的な雰囲気と、ちょっと捨てがたい味わいを湛えたスウェーデン警察小説の佳品。惜しいと思うのは、主人公クルト・ヴァランダー警部と、鳥類学者かマジシャンになりたかったリトアニアのカルリス・リエパ中佐(ミステリアスな憂愁をたたえていて魅力的)が、つかの間の出会いにもかかわらず深く心を通わせあうに至った経緯がやや説明不足であることと、未亡人バイバ・リエパ(弱さと毅然を兼ね備えていて切なく魅力的)とクルト・ヴァランダーのラブ・アフェアをめぐる顛末がちょっと淡泊すぎて食い足りないきらいがあること。そもそも、主人公がリトアニアの政情に巻きこまれ深入りしていく経緯が、心理的にもストーリー的にも唐突な感じがする(だから、意外な真犯人が判明するクライマックスの盛り上がりにちょっと不満が残る)。このあたりのことをじっくりと書き込んでいれば、紛れもない傑作ミステリーの水準に達したと思う。

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紙の本リガの犬たち

2003/05/04 01:05

常に監視されることの恐怖と状況がまったくわからない不安

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 二年三ヵ月待ってのクルト・ヴァランダー・シリーズの第二弾。遅いじゃないかとつぶやきながらも、ほっとした。第一作『殺人者の顔』で虜になり、ぜひ読み続けたいシリーズだと思ったが、展開は地味だし、主人公は情けない中年男だし、舞台は馴染みのないスウェーデンの田舎町とくれば、売行きが悪ければ次は出ないかもしれない、そして何よりもスウェーデン語の翻訳者は多くはないだろうから、本書の訳者が翻訳を続けてくれなかったらどうなるのだろうなどと考え、ずっと心配だったのだ。本国ではとっくに出版されていると知っているのに、言語の違いゆえに翻訳を待つしかないというのは、自分ではどうしようもないだけに本当にじれったい。

 その私の状況をヴァランダー警部が同情してくれたわけではないだろうが、本作では彼も言語の違いに悩まされる。題名にあるリガとは、バルト三国のひとつラトビアの首都のことで、ヴァランダーは事件の捜査のためリガの警察と協力しあうことになる。お互いの言語ができないので、会話は英語を使うことになるのだが、お互いに上手ではない。ひどく手間がかかり、うまく伝わらなくていらいらする。しかし、理解の欠如は言語だけの問題ではないことを、リガに行って身をもって知ることになる。

 射殺死体を載せたゴムボートの漂着から始まった事件は、ヴァランダーに常識外れの行動を起こさせるほどの体験を強いる。二十四時間監視され、誰もがもっともらしい話で表面をつくろい本心を見せず、物事がどこへ進もうとしているのかまったく予想がつかない中で、ヴァランダーの推理は何度も根底から崩れていく。彼の不安と恐怖は、そのまま社会状況を映し出す。
 強大な政権が崩壊したとき、圧政から解放されて自動的に自由が手に入るわけではなく、新しい種類の犯罪や予想のできない事態が起こる。これは、ソ連が崩壊していく時期、独立直前のラトビアを舞台にしているが、近年のアフガニスタンやイラクの状況を推測させる描写も少なくない。

 前作は移民問題に伴う犯罪、そして今回は大きな国際情勢の変化に伴う混乱と先の見えない不安。当時のヨーロッパの問題は十年以上たった今、私たちにとってももはや無縁とは言えないものとなっている。

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紙の本笑う男

2016/07/03 18:02

警察小説の原点に帰りつつ、やはり社会派

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

ついにクルト・ヴァランダー警部シリーズ第4弾『笑う男』を読み終わる。
これで(この時点での)邦訳分は全部読み終わってしまった・・・続きの翻訳と出版を首を長くして待つ。

前作『白い雌ライオン』で正当防衛とはいえ人を殺してしまったヴァランダーはうつ状態に陥り、警察を一年以上休職。 デンマークのスカーゲンで隠遁&リハビリ生活を送っていたが、やはり無理だと退職を決意する。 そこへ旧友が訪ねて来て「事故で父親が死んだが、どうも事故ではないと思う」と捜査を依頼するのだが、ヴァランダーの決心を変えることはできない。 退職届を出そうとスウェーデン・スコーネに戻ってきたヴァランダーの目に映ったのは、その旧友が殺されたという新聞記事だった・・・という話。

ベテラン警部が正当防衛でしかも職務で人を撃ったのに、そのことから立ち直れない、というのがお悩みがちのヴァランダー警部だからというだけでなく、スウェーデンという国なのだなぁ、と思う。
まわりの人たちの理解度がアメリカなどとはまったく違う(まぁ日本もあやしいが)。 そして国際陰謀小説になっていたこのシリーズがまたスウェーデン国内の問題に目を向けており、勿論外国との関係はゼロではないものの軌道修正されたのか?、と思ってニヤつく。 ヴァランダー警部ばかりでなくマーティンソンや他の刑事たちにも愛着を感じている自分に気づくし。

第5作『目くらましの道』で重要な位置にいた女性刑事フーングルドがこの巻で初登場、まわりがどう扱っていいかわからなかったり優秀だという噂に自分の地位を脅かされると感じる人もいる中で、ヴァランダー警部と心を通わせていく過程はとても素敵だ。 しかも彼女は子供がいたりして、子供が熱を出したからと仕事を休んだりするのである。 勿論、男性刑事も奥さんが風邪をひいたから子供を迎えにいかないと、と普通に早退したりするし、みなそれを当然のことだと思っている。 さすがスウェーデン!
なんか女性刑事って独身で仕事バリバリじゃないとやっていけないようなイメージが自分の中にもあったのね・・・と反省した。

なんだかあたしはスウェーデンが好きになっている模様。
そしてシリーズ第6作刊行も、待ち遠しい。(2009年4月読了。 2016年現在、シリーズは9作目まで刊行中です)

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紙の本白い雌ライオン

2016/06/30 19:50

ヴァランダー警部シリーズである意味は薄いが・・・<現在>を生きるための物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

いきなり分厚くなってます。 700ページ越え。
『白い雌ライオン』というタイトルですが、表紙はアンテロープですかね?

不動産売買の仲介をしている女性が失踪したと届け出がある。 ヴァランダーたちの願いもむなしく、数日後、女性は眉間を撃ち抜かれた死体となって発見される。 一体誰が何のために? その事件は、南アフリカ共和国で起きようとしている陰謀につながっていた・・・という話。

前作『リガの犬たち』もそうだが、これもスウェーデンと他国の関係や違いが描かれ、国際スパイ小説ばりの展開を見せるのでページをめくる手が止まらず。
ボーア人、という存在、初めて知りました。
選民思想はユダヤ人だけじゃなかったのね(いや、どの人種にもそういう特別な気持ちはあるのか)。
そして何故アパルトヘイトなんてものが敷かれたのか、更に撤廃への道がこんなにも険しかったのだということも。 当時、アパルトヘイト廃止のニュースを見ているはずなのに、まったくわかってない自分、どうよ・・・(ベルリンの壁崩壊もリアルタイムで『今日の出来事』で見たはずなんだけど、その背景を学んだのもまた映画からだったなぁ)。

ヴァランダー警部の出番は半分くらいですが、まぁ話の都合上そうなるのは仕方がない。 ラストシーンにも立ち会えない主人公ですが、世界規模の物語ではそうなってしまうのかも。 というかヴァランダー警部シリーズとして書かなくてもよかったのかもしれないと思えるほど、独立した話というか、南アフリカに力点を置きすぎたような気もしないでもないんだけれど、まぁでも読んじゃった(読まされた)んで。
事件のたびに異文化に触れて自分の認識はとても狭いものであると驚くヴァランダー警部は、自分の足元はだいたい安定してると思っている世界中の人たちの代表であり、またそんな人々が彼のようであってほしいという作者の気持ちなのだろうか。 だからヴァランダー警部の話を、こっちも読んでいたいと思うのかも。
面白かったです。 また勉強になりました。(2009年2月読了)

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紙の本殺人者の顔

2016/06/30 19:35

タイトルは地味だが、その主題は2016年でも通用する。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

『目くらましの道』から遡って、クルト・ヴァランダー警部シリーズ第一作を探し出す。
なんだか、スコーネという地名(物語の舞台)が懐かしい感じさえするわ。 すっかり彼らやあの土地に、親近感抱いてしまったようだ。

「スウェーデン警察小説の最高峰」と言われるシリーズの第一作としては地味なタイトル。 内容を読めば確かにこのタイトルにテーマは集約されるのですが。

ヴァランダー警視は妻に出て行かれたばかりで現実としてまだ受け入れられない状態。 仕事もするけど酒に逃げている。 5作目『目くらましの道』でもそれほどカッコイイというわけではなかったものの、登場となるこの作品ではひときわ格好悪い。 立ち直っていくその後を知っているのでよかったけれど、いきなりこれから読んでいたらすごくイライラしたかもしれない・・・。

移民問題とか、外国人を排斥しようとする極右的な勢力がいたりとか、スウェーデンも大変ですね。
犯罪、それも凶悪犯罪の手段と動機の移り変わりを「古い犯罪」と「新しい犯罪」とにわけ、これからは新しい犯罪が増える、事件は残忍になり捜査は困難を極めることになるだろうことをヴァランダーは実感する。
それが1991年の話。 確かに世界は、新しい犯罪のほうに進んでいます。 このシリーズはそんな激動の90年代を切り取る物語群なのですね。(2009年1月読了)

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紙の本白い雌ライオン

2005/03/13 00:18

困った中年警察官

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 クルト・ヴァランダー・シリーズ第三弾。今回、重要な鍵となるのは南アフリカだ。シリーズの舞台スウェーデンと南アフリカとの間にいったいどんな関係が? と思ったが、読み進むうちに、政治情勢によって利害関係が刻々と変化する、犯罪ネットワークの活動範囲の広さがわかってくる。いまや日本でも様々な国の犯罪組織の潜伏が報道される状況になってきているので、本書で指摘されている出入国管理の問題は、意外に身近なことかもしれない。
 ヴァランダーは相変わらずダメ男である。私生活で不器用なのは、警察小説にはよくあることだが、彼の場合、仕事でも問題が多い。規則違反でも型破りな捜査で事件を解決するならカッコイイかもしれないが、そうはならない。容疑者に軟禁されれば恐怖に震えるだけだし、根拠のない確信で独りよがりに突っ走っては犠牲者を出してしまう。上司はもちろん、部下までもが頭を抱えるばかりだ。
 ヴァランダー自身もタフではあるが、繊細で、自分の行動を客観的に振り返ることができるだけに、いつも後悔に苛まされることになる。このあたり、情けない中年男として共感を持つか、いい加減にしてよと苛立つか分かれるところだろう。
 南アフリカといえば、人種問題を避けることはできないが、本書での描き方は、黒人対白人といった単純なものではなく、個々人の複雑な事情が語られていく。アフリカ滞在が長く、現在もスウェーデンとアフリカを行き来しているマンケルならではの視点が随所で活かされている。

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紙の本霜の降りる前に 上

2023/05/07 13:46

ヴァランダーの家庭状況が・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作「ファイアーウォール」で、娘のリンダから警察官になると告げられたヴァランダー。
新たな社会の幕開けとそれについていけないと自覚している彼だが、娘の進路選択を聞いてもとりわけ喜んでいるわけでもない。子供世代が親と同じ職業を選択したからといっても、しょせん時代も個々の考え方も異なるのが当たり前と見なされる現在、一口に「跡継ぎ」というくくりでは語られないだろう。
現実でも親子、または三世代にわたる警察官一家というひとを時々見かけるが、上の世代は裏も表も知り尽くした自分の職場を、子供世代が選んだことをどう思っているのか知りたいところだ。知っているからこそ就かせたくないと思う気持ち、逆に特殊な環境であるからこそ導いたり相談に乗ったりできるということか?

さらに今作ではリンダが実習直前という微妙なポジションながら、友人が不可解な失踪をしたことで警察の捜査と並行して自分なりの調査を始めるという設定なので、彼女の視点からすべての状況が語られることになっている。
するとヴァランダーやモナとの親子関係、小さいころの家庭環境など、今までよりもはっきりとしたことがわかるようになってきたのは面白い。
親には知られていない二度目の自殺未遂のシーンが彼女の心に深い痕跡をのこしたこと、その場を収めてくれた若い女性警官の存在など、今回の職業選択に強い影響を与えた要因が次々と明かされる。忙しすぎるせいもあるがこれらのことにまったく気づいていないヴァランダー、家族と言ってもその心の中は神秘の森だということがひしひしと胸に迫る。

また母親のモナという女性も気の毒なひとだと思う。シリーズではヴァランダーとの関係をさっさと終わらせ、経済的にも時間的にも恵まれていそうな新しい男性と再婚したことしか情報がなかったが、その再婚も修復不可能なほどの危機に陥っている。上巻終わり近くのモナのシーン、娘なら絶対に記憶から消したいものだろう。その場に残って慰めることはせず、当初の計画どおり友人の捜索を続けるリンダ。親との不毛な関係から距離をおきケンカを避ける彼女は、ストレスの多い警官に向いているともいえるし、自殺未遂から救ってくれた女性警官とはちがうタイプだともいえる。
そしてこの両親の老後の面倒まで視野に入れているのは、30歳前にしてはちょっと老成しすぎている感もある。

とにかく新しい視点が加わったことで新風が吹き込んだこのシリーズ、作者が存命ならどんな展開を考えていたのか返す返すも残念だ。

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紙の本五番目の女 上

2020/06/14 22:47

まだ上巻だが・・・

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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作「目くらましの道」のなんと数か月後という設定で始まる今作。
長いこと心が通じ合わなかった父親とのローマ旅行を終えて、気分一新で仕事に復帰したヴァランダーだったが、一見些細な通報2件からまたも身の毛のよだつような事件が襲いかかってくる。秋というよりほとんど冬のような強風と雨の中、ヴァランダーたちの手探りの捜査が続く。
今作で印象的だったのは、人の心もそそけ立たせるようなスコーネ地方の冬の始まりの描写だ。スェーデンでも最南部のスコーネ地方だが、バルト海に面していてとにかく風が強いらしい。以前デンマークのユトランド半島のドキュメンタリーを見た時にも感じたが、海岸が数年で砂交じりの強風により何メートルも崩壊して後退してゆくという人が住むにはかなり厳しいところなのだ。ヴァランダーの住むイースタもドイツや東欧、ロシアとは海を挟んで向かい合い、開かれた世界のようにも見えるが、同時にそれは未知の人やものが入り込んでくる玄関口でもある。そしてヴァランダーはいつも海の向こうからやってくるものに、自分の価値観とのギャップを知らされ思い悩む。
上巻の最後あたりでリンダに語る彼の心情につい感情移入してしまう自分も、年取った者にも若い者にも厳しい現代の新しい価値基準にはあまり賛成できないし、乗っていこうとも思わない。
下巻で展開されるだろう犯人の理屈を読むのが、もう今から憂鬱に感じて仕様がない。

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