紙の本
あの『砂糖の世界史』に並ぶ名著。
2022/12/09 18:46
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
食というテーマから、資本主義の歴史と現在を振り返り、未来を模索する。あえて言います。必読、と。中高生から大人まで、ぜひ。平易な語り口、食という理解しやすい題材で、バッサリと資本主義を切った大人の読み物。食べものから世界経済の歴史を学べば、人も自然も壊さない「経世済民」が見えてくるだろう。
紙の本
提言が手厳しい1冊です
2021/08/03 07:37
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の「食」をビジネス・経済に取り入れる社会はいかがなものか?という提言に基づく、紙幅は薄いですが、読んで考えさせる1冊です。昔から現代までの「食」を順に振り返る、タイトル通り世界史のストーリーで構成されています。
著者の、「食」をビジネスにすることで、食糧の貧富の差、フードロス問題、環境問題に大きな悪影響を与えている現実に対する、提言が本当に手厳しいです。
どのような世代にも読んでいただきたい良書です。私も考えさせられました。
紙の本
今までとは違った視点での、世界史がある!
2023/03/04 14:53
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投稿者:野間丸男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「身近な田畑や自然環境から日々の食を得ていた」から、
大航海時代を経て、重商主義の金銀がお金の時代になり、
その後の産業革命により労働者が発生し、
そのための生活・食べるモノが変化し、市場が変化・発展していく。
小麦粉や油を多用する食品産業の発展のよる「食生活の変化」が、
どのように資本主義に影響を与えてきているかが、よく理解できる。
食べものから資本主義を学ぶとは
農耕から近代世界システムの形成まで
山積み小麦と失業者たち
世界の半分が飢えるのはなぜ?
日本における食と資本主義の歴史
中国のブタとグローバリゼーション
農耕と資本主義とを結び付けて考えることは無かったが、
「なるほど~!」と、納得の本である。
紙の本
大人の学び直しにもよい
2023/08/10 15:03
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投稿者:くまを - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生半ばの年齢になって恥ずかしながら知らないことばかりで、とても興味深く読みました。こういうことを義務教育の期間に体系的に学べるといいのにな。
紙の本
資本主義経済と食料
2022/07/26 09:17
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めると資本主義の発達が食べ物にも大きく影響しグローバル化から「北」と「南」、貧困問題まで関連し資本主義経済を否定するかのように思うかもしれないが、それは大きな誤り。読んでいる自分自身がどっぷりと資本主義経済の食料システムに浸かっているのを感じてしまった。本来人間が生きる為、健康と自然環境のための食と農が軽んじられていること。ビジネス利益第一主義が何も考えずに三食たべている現実。ちょっとでも現在の食料事情を考えた時には読んでおくべき。ジュニア新書だが大人が読んでも十分に考えさせられ、何か自分でもできないか。と思う。「命か経済か」より「命のための経済」この著者の言葉は食べ物だけでなくコロナ禍の政治家や資本家が心に刻む言葉。
紙の本
ほんとうのことは知らされないもの
2021/10/13 08:14
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
思春期の子どもたち、もっと小さい人たちにも、知って欲しい事実。
なぜいまさらSDGsなどと言われているのか。
生きることは、食べること。私たちの先祖がどのように生きてきたかを、食べ物を通じて学べる一冊。何を選択するべきか、心に思うことがひとつでもふたつでも増えれば、少しずつ現実の世界は変わっていけるという希望を持ちたい。
紙の本
大人にもぜひ読んで欲しい一冊
2021/11/01 00:08
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投稿者:あけみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分が生まれる前からずっと、資本主義ができた時から、食と農が資本主義経済のビジネスとして組み込まれ生産されていることを知った。色々とモヤモヤしています。今まで、知らなかっただけで、それが現実なんだと感じた。
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ジュニア新書ではないと思う
2022/08/18 21:31
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投稿者:サンバ - この投稿者のレビュー一覧を見る
食べものの歴史を振り返り、「なぜ農家が食べものに困るのか」、「どうして食べものが溢れているのに飢餓に喘ぐ人々はこんなにも多いのか」を紐解く。
帝国主義国家をはじめ、資本主義の勝ち組が作物に始まり、種や機械を支配し、国ごとの農業を塗り潰した経緯は、知ることができてよかった。すでに世界レベルで認識されている飢餓の構造。解決は、巨大資本からどれだけ私たちが離れられるかにかかっている。
内容が重たいのもあるが、固い内容が単に「ですます調」書かれているだけに感じる。著者のパワポで作った、テキストだけの箱二つを矢印で結んだ図は、完全に研究者の発表のそれ。編集者含め本当に子どもに寄り添っていれば、こうはならない。世界史を学んでいない中高生が読んで分かるかは疑問。
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いろいろ考えさせられます~1農耕の始まりから近代世界史ステムの形成まで2山積みの小麦と失業者たち3食べ過ぎの「デブの帝国」へ4世界の半分が飢えるのはなぜ?(植民地支配~1970年代「南」の途上国では)5日本における食と資本主義の歴史(19世紀の開国~1970年代)6中国のブタとグロバリぜーション(1970年代~現在)~てっきり、やせぎすの坊主頭に眼鏡の男だと想像していたのに・・あとがきの「亡き元夫」と見て、「女性だった」・名前が緑だもんなぁと驚いた。地理の授業でも92~93をコピーして読み聞かせました
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食べものをキーとして、資本主義経済の成り立ちと仕組みが分かりやすく述べられていた。
こんな時代だからこそ、読んでおきたいという内容だった。
この先生の講義を直接聞いてみたいと思った。
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何でこの本を知ったのかは忘れてしまったけれど(たぶん生活と自治)、最初図書館で借りたときは「はじめに」だけ読んで、読もうと思っているうちに返却期限が来てしまった。生活クラブの本の共同購入カタログ『本の花束』に取り上げられたので注文。本が届く直前に地域で開催された平賀緑さんのオンライン講演会にも参加した。
1996年次男を助産院で出産して入院している間にふと「豊かさってなんだろう?私たちは豊かなのか?」と考えたことがある。それから28年、ますます状況はひどくなるばかり。「なぜ?」この本を読んだら、薄々わかっていたことだけど、わかりやすくまとめられていて理解が深まった(かな?)
私は生活クラブの組合員だけど、扱っているものを『消費材』と呼ぶ理由もあらためて納得できた。「商品」とは「市場」で他の人に売って利潤を得るために生産するモノであって、自分で使うために作るモノではないということ。自分で使うために作るモノと、売って利益を得るために作るモノとでは、違ってくるということ。自分で使うためにモノを作るときには、役に立つことが重要(使用価値)。そのモノを作るための資源や知恵やスキルを自分で持ち続けることも大切。
小さめの生活圏の中で、モノや資源や労働力やスキルなどを循環させ再投資していくことで、地域の本当の意味での経済を豊かにすることもできる、とあったけれど、それって『ローカルSDGs』全部私たちが生活クラブでやろうとしてることじゃん!
お金に支配されない生き方を考えたいと思う、きょうこの頃です。
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東京新聞の書評で面白そうだっので読んでみる
ジュニア文庫のターゲットは中高生くらい? 昭和の暮らしを知っている大人がターゲットのような気がする
世界史というよりは資本主義の問題点に視点を当てた経済の解説 植民地支配によって資本主義が拡大した経緯、非支配地域の農業システムが壊された経緯、穀物、油脂、砂糖の市場の拡大と食生活の変化などについて、今まで考えていなかった視点から解説がなされていてとても説得的だった
他方で、資本主義が拡大する以前の経済状況、特に食べ物の流通システムがどのようなものだったのか、著者が「自給自足」と呼ぶ経済システムにおいて人々はどのようにして食べ物を手に入れていたのか、「自給自足」していた時代に人々はどんな食生活を送っていたのかについてほとんど説明がない。
穀物メジャーの発展によって食物に関する市場が歪み、経済格差が拡大して是正されないことは問題だとは思うけど、それによって日本人も非支配地域の人々も、程度の差はあれど食文化が豊かになってきているはずだし、栄養状態も改善されている地域が広がっているはず(ファクトフルネスではそう説明されていた)
斉藤幸平の資本論も白井聡の資本論も積読になっててまだ読めてないけど、改めてちゃんと読みたくなってきた
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書名に「世界史」とあるが、先史時代も含めた通史ではなく、近現代において食と農が資本主義経済に包摂されていく過程に焦点を当てているので、『食べものから学ぶ資本主義の歴史』などのほうが正確かも。
ともあれ18世紀の産業革命、19世紀の植民地主義、20世紀の世界恐慌と戦争とグローバリゼーションを経て、21世紀に暮らす私たちの「食べる」が矛盾や課題を抱えるようになった経緯がわかりやすく説明されていて、勉強になったし面白かった。
地球は120億人を養えるのだから「飢餓は殺人にほかならない」、という指摘がとくに響いた。
【要点】
Q1. いま私たちの食べものをめぐって、どんな問題が起こっているの?
→「食べもの」が「商品」になり、経済成長のために人と社会と地球を壊しながら食料増産した結果、いろいろおかしなことが起こるようになった
Q2. どのようにして「食べもの」が「商品」になっていったの?
→自分たちが食べるための栄養バランスのとれた食べものを自分たちで作っていた暮らし(使用価値としての食べもの)が、産業革命と植民地主義をきっかけに都市生活と資本主義経済が拡大するなかで、他人が食べるための安価な食料(食べられる商品=食品)を大量生産し、自分たちのご飯は働いて稼いだお金で買って食べる暮らし(交換価値としての食べもの)に変わっていった
Q3. 私たちの食生活を、ひいては人生や社会をより良いものにするために、私たち一人ひとりに何ができる?
→まずは今日のご飯から、人も自然も壊さない世界を考えてみる
【Q1メモ: いま私たちの食べものをめぐって、どんな問題が起こっているの?】
・世界には十分な量の食料があるはずなのに、慢性的に栄養不良の人たちが何億人もいる
・貧しい国では人々が飢餓に苦しむ一方、豊かな国では食べ過ぎによる生活習慣病に苦しむ
・他人の食べものを育てている農家が自分たちのご飯を買えない
・膨大な資源をつぎ込んで生産された世界の食料のうち、3分の1が廃棄
・農業と食料システムが大量の温室効果ガスを排出、気候危機の一大要因
【Q2メモ: どのようにして「食べもの」が「商品」になっていったの?】
・「使用価値」としてのモノ = 自分で使うために作る→長く使える役に立つものを作ろうとする
・「交換価値」としての商品 = 市場で他の人に売って儲けるために作る→できるだけ安い原材料で作ろうとする
・資本主義的食料システム(capitalist food system)の枠組み
→利潤最大化をめざす企業にとっては人の幸せや自然環境への配慮はただのコストでしかなくマイナス要素
→たとえ人と自然を破壊することでもお金が循環すれば国のGDP上はプラス要素
・経済成長をGDPで計るかぎり、人や地球が不健康になるほど経済成長していることに(『肥満の惑星 Planet Obesity』)
・資本主義のポイント:
①財産の私有(生産手段を持つ資本家や地主↔持たない労働者)
②利潤追求の欲望に終わりがない(↔地球は有限)
・砂糖、小麦、トウモロコシ、豚肉、それぞれの物語
→砂糖(植民地の砂糖がイギリスの産業革命を支えた)
→小麦(アメリカで大量生産された小麦が余って世界恐慌、でも失業者は食べられなかった)
→トウモロコシ(大量生産した糖分や油を大量消費させた「デブ」の帝国)
→豚肉(グローバリゼーションが進んだ結果、中国は小麦の最大生産国から最大輸入国へ)
【Q3メモ: 私たちの食生活を、ひいては人生や社会をより良いものにするために、私たち一人ひとりに何ができる?】
・ふだんの生活のなかで、交換価値としての商品(売って儲ける/買うために稼ぐ)ではなく、使用価値としてのモノ(自分や自分の身の回りの人たちが使う、自分たちで作る)に注目
・自分で料理してみる = 自分のからだと心の素となる食材を選び取る+自分で調理する(自己防衛のため、環境負荷を減らすため)
・地域が支える農業(CSA: community-supported agriculture)
・「命か経済か」ではなく「命のための経済」(=経世済民)を取り戻す
【メモ】
・「近代食」(白い小麦パンと白い砂糖)が主食に→必須栄養素が不足して人々の身体が退化(cf. 南アのボーア戦争での徴兵)
・豊作貧乏
・ケインズ革命: 公共事業など政府支出を増やして人工的に有効需要を創出し、購買力を増やす
・HFCS: high-fructose corn syrup(「異性化糖」「ブドウ糖」「果糖ブドウ糖液糖」などと表記される安価な甘味料)
・現在のアメリカ人 =「歩くトウモロコシ」
・日本人の身体の炭素の4割がトウモロコシ由来という報告も
・ハンガーマップ: 現在の慢性的な飢餓地域 ≒ かつての植民地
・「空っぽのカロリー」「隠れた飢餓」= カロリーは十分でも、その他の必要な栄養素が不足
・地球は120億人を養える → 「飢餓は殺人にほかならない」(エルヴィン・ヴァーゲンホーファー監督『ありあまるごちそう』)
・「緑の革命(Green Revolution)」→ たしかに穀物の収穫量を増やして人々を飢餓から救ったが、同時に「南」の農民や農地が「北」の資本主義経済システムに包摂されることで新たな貧困と飢餓を生んだ
・「肥満の輸出(exporting obesity)」
・日本の伝統的な食事は雑穀と菜っ葉や大根の混ぜご飯=「糧飯(かてめし)」 ↔ いわゆる「和食」は戦後の1950年代に確立
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人類史上切っても切り離せない食べものの問題を通して数世紀に渡る世界経済の歴史を学ぶ。食や農を自然や文化、人間の本能として語るのではなく、現代政治や資本主義経済に向き合うという著者の世界観が展開される。
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わたしたちの口に入るまで、生産・加工・流通において安い労働力を使い、冷蔵や冷房、輸送にかかる膨大なエネルギーと資源を使い、経済成長だけを優先して地球の裏側から運ばれてくる食品。
わたしは、いまのような経済至上主義から早急に脱却したほうがいいと思っているので、得るものがとても多かった。
産業革命以降、デブを作る食に変えられた世界。
栄養ゼロで真っ白で炭水化物の塊である小麦粉、進んで摂取させられる油。
海外産の小麦も大豆も、もちろんそのほかの食材も、まじで体に入れたくない。
資源も人も他国から勝手に奪って、自国を発展させた『北』であるヨーロッパとアメリカ。
彼らが『発展途上国』(=南)を作った。
『北』が経済成長するために『南』をこき使い、戦後には援助と称して地元の農家を廃業に追い込み、その結果、現在のような作っているのに食べられず(生産者)、貧困と飢餓に苦しむ状況を生み出した。
なんで、『北』の傲慢に『南』が従わなきゃいけないんだろう。
『北』は足るを知らない不幸な人間。
収穫量は増える種だけど、一代で終わるから毎年種を買わなきゃいけないし、害虫や病気に弱いから、農薬も買わなきゃいけない。
灌漑も前提の種。
だから、干ばつにとても弱い。
その土地固有の生物多様性も奪った。
『食』という商品、上手いこと作り込んでる仕組みだなあ。
金持ちだけが儲かって、貧富の差をどんどん広げる資本主義経済システム。
『北』が持ち込まなければ、ちょうどよく幸せに生きられていたのに。
92ページから94ページに書かれている、実際に起こったエピソードを読んでほしい。
ぎゅうぎゅうに押し込まれ、光や風に当たることもなく、短い生命を一方的に終わらせられる動物たち。
大量に生産して稼ぐため、同じものだけを作り、農薬を撒き散らし作られる野菜。
大量のエネルギーを消費し、奪って生産されるのに、世界で1/3が廃棄される。
いまの世界には78億人もの人類がいる。
本当は120億人が十分に食べられるくらいの食物があるのに、飢餓人口は7,8億人、食料不安を感じている人は20億人ほど。
一方で、10億人以上が食べ過ぎによって病に侵されている。
これのどこが幸せ?