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実朝の首(角川文庫)

実朝の首 みんなのレビュー

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みんなのレビュー16件

みんなの評価3.6

評価内訳

16 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

源氏の血統と北條氏の陰謀を描く

2012/04/15 21:20

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 葉室はつい最近直木賞を受賞した作家である。時代小説を得意としているそうだ。その葉室が本書で選んだ題材は、鎌倉幕府三代将軍源実朝である。永らく鎌倉時代の源氏、北條を描いてきたのは永井路子である。この他には高橋直樹を知るのみであったが、この葉室麒が鎌倉時代に挑戦だ。描いた題材は暗殺された実朝の首である。

 実朝は乱心将軍の頼家の弟で、どうみても征夷大将軍という器ではなかったと言われている。それにはいくつかの根拠がある。金槐和歌集を編纂し、和歌に傾倒していたということがあり、陳和卿という宋人に船を作らせ、宋に渡ろうとするなど、武家の頂点に立つ将軍には似つかわしくない行動をとっている。

その実朝が公暁に殺され、その公暁が三浦氏の館に逃げ込もうとするというところは、永井、高橋がすでに描いているシーンである。実朝が物語の中心にいることに違いはないのであるが、実際は三浦氏の行動と思惑が焦点であると言ってもよい。一族の和田合戦の際も三浦氏の決断は先送りされた。

 本書では実朝の首が持ち去られ行方不明になり、その首が不利に利用されるのを恐れる北條氏、三浦氏の政権派のうろたえぶりが面白く描かれている。首の行方よりは、朝廷と武家の間の確執に、より頁が割かれている。

 時の執権は北条義時であり、それを支える三浦一族であるが、実際の権力ははまだ健在である北条政子にある。彼等の最大の関心事は都から実朝の後継公家将軍を迎えることにある。将軍不在の幕府の迷走ぶりを見て、後鳥羽上皇が決起し、承久の変を起こしたことまでが描かれているが、なぜ義時追討の宣旨を出したのかがよく理解できるストーリーとなっている。

 実朝の首から話題がだいぶ変転しているので、読者にとっては作者が何を描きたかったのかがいささか分かりにくい。実朝の暗殺、公暁の処分を見ても源氏の血統は次々に消えていく。それをうまく利用していたのが北條氏であることを葉室は描いている。

 こういう政治を100年以上も継続させるには限界があるが、弱小勢力だった北條氏としてはよく持ったという見方もあろう。否、むしろ源氏に政治家としての人がいなかったと見る方が正しいのかも知れない。

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紙の本

七人のサムライが悲劇の宰相の首を守り、お姫様のために戦う

2012/03/09 14:55

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

建保七年(1219年)初めの雪の夜、右大臣源実朝が殺された。暗殺者公暁もまた、すぐに殺され、実朝の首が、公暁に仕えていた少年弥源太によって持ち去られた。

少年は性的虐待を加えた主人を恨み、許嫁の少女を殺した一族の棟梁三浦義村を恨み、自分の手で実朝の首を将軍家の御所に持って行って褒美をせしめるつもりだった。ところが、どこでどうまちがったか、気がついたら、相模の波多野の廃れ館で、武常晴、朝夷奈三郎義秀、青栗七郎、泉親衡、安念坊、和田朝盛という、6人のつわものたちとともに、鎌倉から首を取り返しに来る討手を迎えて闘う破目に!

さすがに大軍に囲まれたときには伏兵を呼んでくるが、その闘いぶりの描写が、まるで絵画のようである。

>騎馬隊は誰もが走りながら左腰を前にねじり、前方に向かって矢を射掛けた。さらに左へ射るとともに腰を大きくひねって後方へも矢を射る芸を見せた。

>坂東武者の強さは走る馬上から弓を射て外さない、
――弓射騎兵
の強さである。

大陸の騎馬民族を彷彿とさせる。きっとそっちの血も引いているに違いない。

この騒動の背景には、源氏の血筋を絶やして北条氏の権力固めをと企てる北条義時、義時に命じられて公暁をそそのかした三浦義村、更に実はそのふたりよりも前に公暁をそそのかしていた黒幕、更にその黒幕をそそのかした黒幕までいて、京都の後鳥羽上皇も幕府を倒す隙をうかがうように間者を鎌倉に派遣してくるし……。

彼ら権謀術数にたけた黒い人々と闘う、波多野の廃れ館の七人のサムライは、さわやかである。最初は世をすねていた弥源太も、だんだんと成長していく。

さらに魅力的なのは女性陣である。

尼御台の北条政子。彼女は父や兄によって、頼朝との間に生まれた息子たちを殺されてしまったわけだが、その大きな悲しみと怒りを胸に抱えつつ、鎌倉の武家政権の屋台骨をささえ、聡明さと胆力、器量で、御家人たちの尊敬を一身に集める。彼女が登場すると、その場がきりっと引き締まる。

実朝の妻。永井路子の『歴史をさわがせた夫婦たち』では、彼女は凡庸な女性ということだったが、この葉室麟の小説では、なかなかのくせ者である。もともと、文武両道に優れる豪胆な後鳥羽上皇に、熱い憧れを抱く少女だった。しかし、実朝と暮らすうちに、彼の優しさ誠実さに心打たれ、しんから愛するようになっていた。もっとも、実朝没後、史実で京都へ帰ったからなのか、この小説の後半ではまったく登場しなくなる。

代わって登場するのが、公暁の妹の鞠子である。彼女こそ、この小説のマドンナ、ヒロインといえよう。鞠子が、おじの実朝に深い愛情を抱いているさまは、実朝の妻が後鳥羽上皇に憧れていたのと、相似ている。鞠子はたいへん聡明で、その性格は、頼朝の息子たち以上に、政子に似ているようだ。政子も、鞠子こそ、鎌倉政権を支えて行く後継者にふさわしいと考える。しかしそれは、鞠子の女性としての幸福を犠牲にするかもしれなかった。

鎌倉の北条政権側からも後鳥羽上皇側からも狙われる、弥源太や和田朝盛が、ひょんなことから鞠子にかくまわれ、ほほえましい場面が展開する。特に和田朝盛は、実阿弥という名も持つ出家だけれど、実朝の親友でもあるし、還俗して鞠子と結婚すればお似合いなのに……と、私は思ったのだが……。

北条政子は京都から親王を迎えて次期将軍にすえようとするが、後鳥羽上皇が選んだ親王はまだ赤ちゃん。鞠子は、政子から、十五歳も年下の男性と結婚し、当分は夫に代わって政治をみるように、要請される。鞠子はそれを自分の運命として受け入れるのである。全然、忍従の女性というイメージではなく、明るく行動的な女性なのだが、だからこそか、積極的に受け入れる。

弥源太たち七人のサムライは、そんな結婚はかわいそうだと、京都から下って来る親王の一行を襲う計画をたてた。

まるで黒沢映画と山本周五郎の小説を足して2で割ったような、おもしろさと文章の質で、最初の一行から最後の一行まで、楽しく読むことができた。

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2012/02/27 22:47

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2012/05/15 14:07

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2013/10/24 18:14

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2012/03/22 21:57

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2013/08/28 21:26

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2012/08/19 19:22

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2011/10/26 20:39

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2012/05/28 21:51

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2017/01/23 23:37

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2015/06/04 00:17

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2014/08/26 22:45

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2015/01/15 19:11

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2016/06/20 07:32

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