紙の本
親がいる14歳の子供たちへ。あるいは「トラウマ」のことなど。
2006/04/03 06:00
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テンポのいい対談本だ。ウチダファンはもちろん、14歳の子がいなくても、子供自体がいなくても、楽しめる要素はある。カテゴリーとしては「しつけ・教育論」なのだろうが、その枠に収まってはいない。
内田氏の発言には、以前のものの繰り返しが多く新味は少ないが、名越氏のおかげでそんなに気にならない。どちらかといえば、内田氏の方がリードし、名越氏は控えめ。お互い反論し合うことは少なく、名越氏が内田氏の発言を受容・補完して、融合した趣の対談になっている。
これを読んで、若い人達はどんな感想を持つだろう。ここは、14歳前後の子供達に「批判的」に読んでもらうのも面白いかもしれないな。
ルーティンが大事であるとして、「家族揃って同じ時間に飯を食う」ことを説くなど、型にはめようとするところもある。
他方で、もっと大ざっぱで適当でいい、ということも強調されている。他人のことなんか6割も分かれば奇跡であるとか、14歳ぐらいになると体と心のバランスが崩れるが、その中途半端な状態で構わないんだとか。『だいたいで、いいじゃない。』の世界だ。ここなんかもそう。
《内田 「トラウマ」ですね。この言葉も禁止にしたいなあ、もう。》
禁止はともかく、私も気になっている。さらに引用。
《内田 あれはいけないですよ。「トラウマ」っていう言葉で自分の経験を説明した瞬間に、自分の身にこれから新しく起きるかもしれないすべての出来事をたった一つのチープでシンプルな物語のうちに回収しちゃうんですから。フロイトが言った通り、「トラウマ」なんか実在しないんですから。「物語」を作ることで自分の身に起こったよくわからない出来事を説明する方便なんだから。嘘でもいいから、説明できる方が説明できないよりいくぶんましだから。でも、精神的に混乱してる子って、ときどき目を据えて「本当のことを言いましょうか」って、「わがトラウマ」を語ったりする。どうしてそんなに全部「説明」したがるのか、その理由が僕にはよくわからない。自分のことだってわかることもあるし、わからないこともある。説明できることも、できないこともある。過去のことなんか忘れちゃった、未来のことはまだわからない。それくらい適当でいいじゃないかと思うんですけど。
名越 トラウマ論的見方にとらわれてしまうと、自分の現在のリアルな体験はまるで影絵みたいなものになってしまう。現実の方が全て影絵で、影絵の本体がトラウマという過去の側にある。そこから影絵を映してるという意味付けになってしまう。》
この文脈では異存はないが、見方を変えると、安易に使われているのには別な側面もある。「トラウマ」を、傷の軽重は問わずに「過去の心の傷」全般にあてがう形に変容させて、「乱用」しているという側面だ。ならば、禁止ではなく「乱用」を積極的に認めることで、「トラウマ」という言葉から「重し」を取り払ってしまうというのも、一つの手かと思う。
《内田 一人の人間が人格として成り立っているのは、数え切れないほどのファクターの複合効果なわけでしょう。「実はオレがこんな風になったのはね、六つの時にこんなことがあったからなんだよ」って言う人間の話を聞くと、「嘘つけ」って思うんです。そんなことあるはずないと。お前がそんな風な人間になってるのは、さっき食った海老が不味かったからじゃないかって(笑)。でもトラウマ説の人っていうのはそういう複数のファクターの関与を絶対認めないですね。全部単一の原因に還元しちゃう。》
分かる、分かる。そういう人っている。内田氏の切り返しは冴えている。
賛成しかねることも幾つかある。女性の平均寿命がなぜ長いかの理由についてが、その一つ。それこそ著者に「嘘つけ」(笑)と言いたいところなんだけど、字数も尽きたので、お開きに。
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内田氏、名越氏の対話の流れに引き込まれて一気に読めた。もちろん子育てのハウツー本ではない。子育ての覚悟を決めるための本かなぁ。
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題には14歳の〜と書かれていますが、本当に当てはまる人は、読むのに根性がいるかもしれません。鋭い指摘を受けると、人間って拒否的になったり、逆に煽られたりしますから。
でも、子どもがいるいない関係なしに、読んで考えて欲しいなあと思いました。
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本人も言っているように、内田樹はその著書において何度も同じことを言っている。全部まとめろよと言いたくなるが、テーマによっての差異が重要な気がするので仕方なく読んでしまう。同じ部分は、いわば水戸黄門の印籠のように、なくてはならない大いなるマンネリのような気もする。この本は精神科医である名越康文氏との対談であり、タイトルがタイトルなので、思春期の親子関係に特化された本であろうと思いがちだが、一見特化しているとは思えない内容である。というより語り手が特化する気がない。ひいき目に見れば、特化してはいけないだろうという配慮のもとだろう。あとは読者が自分で引っかかりを見つければいいと言うような。つまり、この本自体を評価しても批評してもしかたなく、そこから思春期の親子関係に対する考え方のとっかかり(ヒントではない)を見つけるべく心構えて読む本だ。そして僕はいくつかのとっかかりを見つけた。それをどうするかはまだ分かっていないけれども。
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内田と精神科医名越との対談集。面白いんだけど、放言集と言えなくもないというか・・。いわゆる子育て論と思って悩める親御さんが読むのは薦めない。面白いけど。
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おとうさんの母性の話(うろおぼえ)が重要だと思います。そうそう、母性ってあとからついてくるものだと思う。勝手にわきあがってきたと言っても、それは子どもを見てからだったもんな、私。
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教師を目指す自分にとって、なんだか題名が意味深だったので手にとってみた本。
この本では、子どもに親や教師はどう接していけばよいか、どう接するべきかが現代の子どもの問題行動などをもとに書かれている。
この本は、問題があるのは子どももそうだが、むしろ親や教師側にあるのではないかという視点で書かれている。とても分かりやすく、おもしろい。
形式は、内田樹氏と名越康文氏の対話形式となっているので読みやすい。
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思春期の前の「前思春期」の時期に同姓との間にいかに濃い時間を過ごすかという事が大切だという理論には感激しました。
その時間がその人にとってよりよい思春期を迎えるにあたってとても大切だと言っています。
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明瞭な意思表明よりも口ごもるシャイネス。
言葉にならないことを恥じ入ることは美徳。
敬意をもって接することでしか、敬意は与えられない。
時間に限界があると知った時、人は善を為す。
常に感情が行為に先行するわけじゃない。行為が感情を形成してゆくことがある。
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「敬意」というのは子どもの成長過程において必要な要素という話が一番、納得出来ました。内田作品で一番、面白かったかも。
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14歳の子供なんていないけど内田先生が好きだから買ってしまった。「子供たちの暴走」を前に子育てに自信を持てなくなってしまった親を読者として想定しているようではあるが、実際子供のいない自分でも読めた。言ってることもわかる。でも、やっぱり親になってみないと拾えない「発見」がいっぱい転がっているんだろうな…とも読んでいて思った。「知性は情緒に現れる」これだけは覚えておこう。
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内田樹と名越康文(精神科医)との対談本。タイトルから分かるように、この本は子を持つ親向けの本。いろいろなところから親子の関係、社会の変化などを語り合っていた。親子の関係については、親が子どもをコントロールしようと思っても駄目で、きっかけや道しるべを示して、後は自然にまかせるしかないのだなと思った。内田樹の白黒つかないけれど説得力のある意見がよいなと思う。
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子供はいろいろとシグナルを発しているのに、母親はそれをシステマチックに無視する。でもその子の中の承認可能な部分についてだけは,反応する。成績がいいとか、スポーツがうまいとか。でも、子供が弱っていたり、苦しんでいたりするシグナルには反応しない。そういうメッセージは母親の子育ての失敗にたいする言外の非難を含んでいるから。そういう受信したくないシグナルだけは選択的に無視する。自分が許容可能なメッセージだけは受信する。都合のわるいシグナルは自動的にただのノイズに変換されてしまって、もう人間の声としては耳に届かない。傍らにいる人間を選択的に透明にしてしまうマナーを子供たちは自分たちを平気で透明にしてしまった親から学習しているのではないでしょうか
今の母親達は、あえて可聴音域を狭くして、聞き取れる範囲を絞り込んで、その中で整合的なメッセージだけを聴き取ろうとする傾向がすごく強いと思うんです。
親がどう思っていようとも、子供が親の思う通りに育つことなんてまずないです。
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最近の子供たちは自分の感情を表現する語彙をほとんどもっていない、むかつくとかわいいしか言わないなど今の若者の問題を掘り下げています。
そういう子供を作るのは親だという流れ。
精神科医の名越さんは臨床の中で問題のある子供は8割がた親の問題と述べています。
子供が一番かかわるのは親ですから確かに影響力は絶大です。
私は親が問題なのは今の社会が押しつけてくる生き方や価値観にあると思っています。
お金や競争中心の価値観の中では差は増えて、個人主義に走る傾向は止められないでしょう。
それでも社会のせいだと責任転嫁することもよくないと私は思います。
ではどうしたらよいか。
個人が自分で考える力をつけることが大切です。
そのためには本を読むことが一番ではないでしょうか。
様々な本を読むことで視点の幅が広がります。
よく言われることですが、周囲を変えるにはまず自分を変えるということです。