紙の本
流浪の床屋が見上げる空は
2009/08/08 12:29
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
鋏ひとつでどこでも仕事はできるからと
小さな店をたたんで、
流浪の床屋となったホクトをめぐる12の短編集。
ホクトは「好きなときに、好きな場所で、
好きな人の髪を切る」という習慣を
小さな物語の中で崩しません。
ある時は語り手として、
ある時はわき役として、
ある時は小説の中の登場人物として、
彼は人の髪を切っています。
ひとつひとつの短編も、ロマンチックでミステリアスです。
冬の3か月は好きな本を抱えて「冬眠」状態になるアヤトリ。
(「彼女の冬の読書」)
幼い頃出会った流浪の床屋が映画になって、目の前に現れる。
その映画を買い付ける配給会社社長。
(「海の床屋」)
密やかにささやくように語られ、
そこに確かに存在する小さな世界。
そして確固としたスタイルをもつ主人公。
小説の世界にしばし現実を忘れます。
最後の物語によって、すべてがメビウスの輪になって
繋がっていく不可思議さを味わい、
極上の時間が通り過ぎていったことに気づきます。
紙の本
理解できなかった
2022/12/22 13:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
放浪の床屋さんの話なんだけど、ファンタジー要素がいっぱいというか。
必ずしも現実じゃないのね。
おもしろさが理解できなかった。
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沁みた。ひとつひとつのストーリーが指先からしっとりと切なく沁みこんでくる。この本を汲み取ることができる柔らかな心がまだ自分にあることが嬉しい。
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ホクトという名の理髪師があてどない旅をする話。
舞台も、おそらくは時代も一定していない。「ホクト」という名前だけしか出ていないような回もあり、遠ざかったり近づいたりする。不思議で静かな小説だった。
あの「マアト」というお菓子、本当にあるなら食べてみたい。
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この作家の書くものが、かなり好きです。
フィクションのあり方として、個人的にめっちゃ好きです。
私は幸福な小説が好きなのです。
それか、徹底的に否幸福な小説が好きです。
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クラフト・エヴィング商社の本も好きだけど、吉田篤弘名義の本も好き。
これは、世にもめずらしい流しの床屋さんの話。
ちょっと不思議で、あったかい雰囲気。
マアトってお菓子、食べてみたい。
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旅をする床屋さんの話。
をめぐる短編集。
クラフトエヴィング商会の吉田さんの書く、不思議な物語。
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ナガシのトコヤさん、のおはなし。
ホクトさんがぽろりと発する言葉がどれもいとしいな。
あったかくて、やさしいな。なつかしいな。
そうおもったな。
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流しの理髪師のホクトさん
世界中をハサミ一つで旅をしている
お話が 何処の国か よくわからなくなったりしたけど
引き込まれるものがありました
パントマイムが出来るホクトさん
天井に絵を描けるホクトさん
チェスが上手なホクトさん
存在感があるようでなく
本の中で ゆっくり時間が過ぎてゆく
不思議な短編集
いる けど いない
ある けど ない マアトとはそんなお菓子ってあったけど
それって ホクトさんのこと?
全然関係はないけど
『不思議な少年』という漫画に 雰囲気が似ていました
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ホクトという世界を流す床屋が、全てのショートストーリーに登場してくるのですが、吉田さん特有の世界観が描かれていてとても好きです。
ある作品は現実っぽくあり、また別のものはファンタジーであり、またおとぎ話のようであり・・・
一冊の本として見ると個々の作品の性質に統一感はないかも知れませんが、いろいろな色の吉田作品に触れられる。と良い解釈をすることにします。
「リトル・ファンファーレ」が一番好きです。
それにしても「マアト」食べてみたい。
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短編集みたいだけれども、
1人の理髪師でリンクしています。。
洋書を読んでいる気分でした。。
情景描写や人物描写が素敵で、
そこがとっても気に入りました♪・:*:・ ( ̄* )
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吉田篤弘の本はいろいろと拝読しましたがこれが暫定1位です!
短編集と呼ぶのが正しいのか、連作集と呼ぶのが正しいのか分かりませんが、ひとつひとつのお話を書かせて彼の右出るものはいないのではないかと私は疑います。
奇蹟が起こる、決して大袈裟な形ではなく自然な形で。
評判の手品師のよう。
12のものがたりから構成されていますが、特に後半6作品は圧巻。
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流しの床屋ホクトさん。ほんわかといくか飄々としたというか。見てないようでちゃんと見てるというか。その雰囲気にあこがれます。
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空ばかり見ていた。
はてしなく続く空ばかり見ていると、その澄み渡った青にみとれてしまい、みとれているウチに自分の周りの出来事が大きく変わってしまってそれに気づかないでいる。
ホクトという一人のトコヤは小さな町の小さな床屋で黙々と町の人々の散髪に勤しんでいるがある時、彼は吸い込まれそうなくらい美しい空を見上げてこんなことをつぶやく。
「考えてみると私の商売道具ははさみ一つで事足りる。それなら何も一つの場所に留まることもない。私はもっとたくさんの人の髪を切ってみたい。」
そうして彼は本当に鋏一つだけをおさめ、自由気ままな流浪の床屋として行く当てのない旅に出てゆく。
この本はそれを基にホクトが主人公ないしはエキストラのように登場して成り立つ12話が収録。
私が好きな話と場面についてこのレビューに載せるなら・・・
→「モンローが泊まった部屋」という話。マリリン・モンローが宿泊したというホテルで撮影をしている女優さんのお話。
ホクトはそのホテルの支配人の髪を切るのに登場するかたちとなる。
「私はマリリンモンローを知らない。でも嫌いではない。どとらかというと好きな方だ。いつだったか姉からモンローのモノクロのポートレートを使った絵葉書が送られてきたことがあった。「泣いてばかりよ」とたったひとことだけ書かれた葉書裏に眉をひそめ今にも泣き出しそうな表情のモンローが暗闇を背にして立っていた。だから私にとってモンローは「泣いてばかりよ」とつぶやく憂愁の人であり、たしかに私が今いるこの部屋はモンローが泊まった部屋にふさわしい色合いであるのかもしれないけど、私にはどうしてもその色に馴染むことが出来なかった。「お嬢さんは悲しいのですか?」とベッドのシーツを交換しにきた小さなメイドが私の顔を見上げながら自分も悲しいそうにそう聞いてきた。「そう。私も悲しいの。」私は姉への返信の葉書に選んだ涙を拭いている天使の絵柄を思い浮かべ「天使みたいに涙が出そう」と冗談めかして答えると、「それは空から落ちてしまったからですか?」小さな彼女の質問は彼女の容貌に見合ってどこかおとぎ話めいている。「そうねぇ。毎日空があんまり青いから。というとメイドは「この町の博物館にあるんです。ご覧になるといいですよ。空から落ちてきた天使が博物館に保管されています。」と教えてくれた。そう言われて多分冗談なのだろうと思っていた。しかし彼女が部屋を出て行った後でこれまで目を通していなかったホテルのパンフレットを見ると近隣の観光スポットと街の概要の最後にごく事務的な博物館についての記述が見つけられた。~自然科学全般。規模は小さいが展示品の中にはかつて新聞上を賑わした(墜落した天使の残骸)もある~と・・・。」
主人公の女優は色々とあってから話の最後のほうでその博物館に出向くことになる。そこで待ち受けていた『天使の残骸』の正体は意外にも意外でそれは確かに神々しくもあった(笑)
→「ローストチキン ダイアリー」も笑みのこぼれてしまう可愛らしいお話だった。
スウェーデンではクリスマスイブの10日前から日付を書いた紅茶のティーバックの袋を破りながら、カウントダウンを行う。
袋を破くと、中からクリスマスツリーのオーナメントやキャンディーが出てきたり、クリスマス行事を祝う定番メニューのレシピなんかも入っていたりする北欧の地かた伝えられた愉しいカウントダウンなのである。
主人公は小さな女の子を持つお父さん。(ホクトは今回、お父さんが翻訳する本の主人公になっている・笑)
スウェーデン人のお母さんがクリスマス前に急遽母国に帰ることになってしまい、正月過ぎまで戻ってこれなくなってしまった。彼女は愛する子供にティーバックを利用したカウントダウン・カレンダーを残して旅だち、子供は毎晩お父さんと一緒にそのティーバックの袋を破いて中から出てくる可愛らしい贈り物に心を弾ませるのだった。
そしてある時、袋の中からロースト・チキンのレシピが出てきて・・・それを作るのに作ったことのないお父さんは色々と思い悩むのだが・・・といった話だ。
→「草原の向こうの神様」も良かったなぁ。
束髪師のホクトはある時村はずれの廃墟の塔に居を構えていた。しかしその塔は雷に打たれて崩壊しかけていてその上層部には小国の王子から転身した盗賊の大将が幽閉されていたという伝説があった。王子は瓦礫に埋もれて息絶えた、塔から逃げようとして雷に打たれた、塔に雷を呼び寄せて自ら命を絶った、そんな話が繰り返される中でただ一人「王子は雷雲に吸い上げられ夜空の果てで青い大蛇に化けた、そして雷に打たれ空から草原へ叩きつけられた。青く放電した大蛇は光に包まれて目玉を動かし、ひとつ長い息を吐くなり、空を見上げてそのまま絶命した・・・それで王子の魂は草原に残った。今も彼はそこでさまよっている。誰かが塔に住めばいずれ彼の声を耳にすることがあるだろ。」と話す老人がいた。その話を聞いたホクトはある晩自分に問いかける声を聞く。
「私はどうしたらいい・・・?」という声を。
さまよっている王子の魂の声なのか実際正体が分からないホクトはある日天から選ばれて、神様の髪を結う束髪師を任命される。
神様の髪を結うには澄んだ水やうぶ毛におおわれたような桃を一盛り、白サテンの胴着や草で編まれた冠、天球儀など用意するものが多いので、それをかき集めている最中に塔にみすぼらしい格好の老人が髪結いにやってくる。
おじいさんの要望を受けて、髪をゆっていたホクトはそこで不思議な体験をするのだ。
おじいさんは次第に光につつまれ、最後にこう言うのだった。
「君が気にかけていた王子の魂は私が連れて帰ろう。そうすれば君が美しいとたたえた窓辺の涙壷にはもう悲しみが宿らない」と・・・。
その他、一つ一つの思いがつのっていけばやがて時間はせき止められ、物だけでなく、時間そのものが遡り始めるという「ワニが泣く夜」。
たとえ時間が滞りなく進んでいたとしてもいつでも川の流れのように全てを抱き込んでゆくとは限らない。中には留まり続ける物もあるはずで時には逆らって退行を始めるものも中にはあるのだ。
また「リトルファンファーレ」
ホクトが床屋になる前のパントマイムの修行をしながらするパリでの生活を描いた、天使(パントマイムの先生)にまつわるお話だ。
このお話の中には「いるけど、いない」「あ���けど、ない」という雰囲気を漂わす「マァト」という口に入れると味わう前に下に上で溶けてなくなる不思議なお菓子が出てくる。
その昔エジプト人が魂の重さを量るとき使った羽の名前を意味するお菓子。
見た目も白く、重みもないのでまさに天子の羽を想像させるような心地のするモノなのである。
このお菓子と天使の比喩が重なってこの話は膨らんでいく。
ここで紹介きれなかった話もホクト、青空、天使・・・をキーワードにしていて、心が和む。
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ローストチキン・ダイアリーと永き水曜日の休息が好き。
ほっこりしたり、しんみりしたり。
なんだか一筋縄ではいかない連作短編集でした。