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手紙にしたためた言葉の力を思わないではいられない見事な短編集
2010/12/17 21:43
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
読売新聞の書評欄(2010年8月9日)で女優の小泉今日子が「最近、久しぶりに読み返してみて、やはり名作だと再確認できた」と「私のイチオシ文庫」に選んでいました。
二十数年来、KYON2が面白いと言った本で、ハズレがあったためしはありません。彼女の言葉を読んで、これは手にしないわけにはいきません。
そして今回もまた、彼女の書を読む力に間違いがないことが「再確認」できた思いがしています。
書簡ないし公文書の類い、つまり誰かが誰かにあてた文書で紡ぎあげた13の短編を集めた一冊です。「十二人の手紙」とありながら13の短編がある理由については実際にこの本を手にすれば分かります。確かに12人が、というより正確には縁づいた12組の人々の手紙によって紡がれる物語が詰まった一冊です。
ここに掲げられた書簡があぶりだす物語の妖しさと不気味さに悪寒を覚える読書でした。
ほとんどの短編は、便りの書き手が「信頼できない語り手(unreliable narrator)」であることが最後に明らかになります。そのとき、登場人物たちに対する私の<信頼>がいかに無邪気なものであったかを思い知り、そしてその私の信頼が大きく裏切られたことの衝撃の強さに色を失うのです。
そう、まさに人と人との間にこの信頼というものを生み、育み、つなぎとめんと努める思いがこの手紙には込められています。ですがその思いが、つなぎとめんがためのいじきたない嘘に堕していることがあります。そこに私は言葉というものが持つ偽ることの力をまざまざと見せつけられ、怖気づいてしまうのです。
それでもわずかにいくつかの短編は、嘘は嘘でも、微苦笑をもって読まざるをえない方便の嘘が散りばめられた作品があります。(『ペンフレンド』『鍵』)
その嘘が人と人との間に温もりを生む手ごたえを感じないではいられません。
言葉が偽り以外の何かを生む力がまだあることをどこかに思い、安堵の念も抱く作品群です。
井上ひさし全著作レヴュー31
2010/11/17 20:10
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
井上ひさしという作家は、戯曲・小説・エッセイ等々その手掛けた素材の多彩さ、生み出した作品の豊饒さでは現代日本作家の中で群を抜いているが、そのアプローチも素材・主題に応じて自在に使い分けている。
本書では、十二人の手紙およびエピローグを全て書簡という形式で統一した、極めて独創的な作物である。単行本腰巻きに記された著者の言葉にはこうある――「たいていの用事が電話で足りてしまうせいか、わたしたちはこのごろあまり手紙というものを書かない。(中略)手紙は「劇的」な情況で書かれることが多くなってきているのではないか。/ここに着目したわたしは、ありとあらゆる種類の手紙を網羅し、合わせて十二篇の物語を創り上げようと試みた」。
されど言うは易し行うは難しで、凡庸な作家ならその「十二篇の物語」が単なる同工異曲の陥穽に陥りかねない。ところが、井上ひさしは様々なスタイル、テクニックを駆使して鮮やかな推理劇的短編集に仕上げて見せた。役所への届出書類で一人の女性の薄倖の運命を浮かび上がらせた『赤い手』、見事などんでん返しを仕掛けた『鍵』『泥と雪』等々、どれも趣向が凝らされた秀作ばかりだが、飛び切りの作品を一篇だけ挙げるとすれば矢張り『玉の輿』になろう。最後に記された二行の後書きは、正に驚天動地的ショックを読者に与える。よくもまあこんな「トリック」を考え付き、それを作品化したものだと、その非凡な着眼点にはただただ敬服する。
全篇極めて完成度の高い短編集。物語の内容云々より、まるで大演奏家の超絶技巧振りに圧倒されるような、凄まじいテクニックに平伏すのみ。
手紙の魅力
2021/02/21 17:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かぎろひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつ頃から手紙を書かなくなってしまったのかな。
小説の内容は人生の厳しさを表しているものが多かったですが、手紙の魅力を思い出しながら読みました。
井上ひさし氏による手紙が物語る人生ドラマを描いた作品です!
2020/07/17 10:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、放送作家、戯曲家、小説家として大活躍された井上ひさし氏の作品です。同氏は、小説では『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(日本SF大賞)、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、戯曲では「道元の冒険」(岸田戯曲賞)、そして放送作品としては「ひょっこりひょうたん島」などの名作を手掛けてこられた人物です。同書は、様々な人たちの手紙をテーマに、そこに語られる人生ドラマを生き生きと描き出した傑作です。例えば、キャバレーのホステスになった修道女による身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙などです。ぜひ、それぞれの手紙が物語る笑いと哀しみがいっぱいのドラマをお楽しみください。
劇を観ているような奇譚集
2021/10/06 23:28
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投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の不条理、欲望にまっすぐに、演技性の表現手法を駆使して語られる。でもユーモアがある。
井上ひさし作品に共通する温もりも感じて、この短編集は代表作ではないかもしれないけど、井上らしさを随所に感じた。
末尾の解説も秀逸で出来の良い文庫本です。
面白い
2020/06/26 18:25
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投稿者:カツサンド - この投稿者のレビュー一覧を見る
12話からなるミステリー短編小説。13話めになるエピローグは、1~12話の登場人物、すべてが出てくる。まさかの構成で意外だった。
どんでん返しがとにかく面白い。
今読んでも問題無し!
2020/06/08 18:04
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投稿者:タナーシュ - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、時代背景や設定が今はつらい部分も。
ただ、それを上回るアイディア。
改めて、「言葉使い」井上ひさしに感服。
趣向を凝らした井上ひさしの連作短編集
2023/04/15 12:42
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
趣向を凝らした井上ひさしの連作短編集です。すべてが手紙を含めなんらかの文字によって表されたものによるやり取りによって構成されている。全てがいいわけではないが、いいものは意外などんでん返しがあったりする。最後の短編も趣向が凝らしてあって面白いと思う。
人それぞれ
2022/01/23 16:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
12組の13通の手紙のカタチで、物語は進みます。手紙は、書いている本人の主観が、真実か否かの判断がつかないので、それを鵜呑みには出来ないのですが……。泣ける話あり、あきれる人間がいたり……でした。