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開かせていただき光栄です DILATED TO MEET YOU みんなのレビュー

第12回本格ミステリ大賞小説部門 受賞作品

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みんなのレビュー222件

みんなの評価4.1

評価内訳

222 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

この作品に出会えて光栄です

2011/12/29 21:50

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 タイトルからして人を食ってます。
 最初一体どんな内容なのか想像もつかず。が、冒頭からいきなり解剖室での妊婦の死骸描写にあ然・呆然。ここでもう作者の術中にハマってしまいました。かなりグロテスクなはずなのに、ちっとも陰惨ではない。むしろカラッとしてユーモラス。なにより登場人物たちが個性的で魅力的だから。
 重要なキーパーソンである解剖専門の外科医・ダニエル。そして5人の才能ある助手たち。そのやりとりが面白い。師弟の絆は強く結束していて読んでいて羨ましいくらい。
 舞台設定が18世紀ロンドンなので解剖学がまだまだ認知されていない時代。そのため、技術向上のための死骸調達もままならず、危ない橋を渡ってようやく手に入れた死骸はなんと準男爵令嬢。しかも未婚でありながら妊婦だったという、いわくつきのもの。
 紆余曲折あって、なんと男爵令嬢の他に2体もあるはずのない死骸が発見されてしまう……。

 もうここからが本格ミステリーの始まり。探偵役は清廉潔白な法の番人サー・ジョン治安判事。彼は盲目であるけれど、その分雑多な周囲に惑わされることなく、しっかりと真実を見極めることができる。
 インパクトありすぎる脇キャラ・少年ネイサンの所有する稀覯本をめぐる陰謀にまきこまれるダニエルとその助手達。彼等は解剖技術を武器にして共にサー・ジョン治安判事とタッグを組んで数奇な殺人事件を解明してゆく。
 二転三転する事態。一体真犯人は誰なのか? ネイサンを主軸に置いた視点とサー・ジョン判事主軸の現在進行形視点。時系列が異なりながら進行し、ラストには見事に融合するという構成の巧みさ。裏に裏をかくトリックの鮮やかさ。そして毒々しいまでのユーモア。そしてほのかに漂う背徳と耽美。

 作者はとてもご高齢とのこと。ですが、その熟練の職人技に酔わされました。特に事件が解決したあとのあの寂寥感がたまらない。そして全編通してどこか突き放して達観しているような洒脱さ。助手たちが死者を送るために歌う「解剖ソング」をラストにもってきているところがなんともブラックユーモア溢れています。それに対する、特に作中最も魅力的なキャラ、エドとナイジェルの末路がこれまた切なく哀しい。
 
 解剖学とミステリーのコラボが白眉。元ネタ的作品「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」も併せて読むと、より一層作品世界を理解できること請け合いです。

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電子書籍

三部作だった

2022/04/24 13:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:M★ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本格ミステリ大賞受賞作  
魚の開き状態の美少年の挿絵が目を惹く。 

詩人志望の少年が辿る数奇な運命を外科医ダニエルが推理する。
・・これは、18世紀ロンドンが舞台。

続編があって、三部作。
続きは、五年後を舞台にした「アルモニカ・ディアボリカ」
アメリカ独立戦争中の「インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー」

シリーズと知らずに手を付けてしまった。

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紙の本

大変読み応えが感じられる推理小説ですね。

2017/05/22 21:08

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者: - この投稿者のレビュー一覧を見る

先ず、本書を読む過程、著者の素晴らしい筆力と瑞々しい才能を痛感させられました。

そして、著者がイギリスの風俗や史実を見事にご自分の中で咀嚼なさった上で、世界観を構築なさっておられます事、脱帽の思いが致しました。

それから、本当に大どんでん返しの連続のストーリー展開でした。

以上の様な次第で、大変読み応えが感じられる推理小説でした。

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電子書籍

多芸な著者に敬意

2016/05/31 11:13

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る

産業革命期のロンドンの雰囲気を出すため様々な職業の人たちや小道具を登場させている。本格的ミステリーとしても文化史としても楽しめる。
多芸な著者に敬意を表したい。

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紙の本

皆川博子氏の作品は『死の泉』『薔薇密室』『伯林蝋人形館』を読んでいた。いずれもナチズムの狂気をエロチックにグロテスクに描いた耽美・幻想の世界で、あまり後味がいい作品ではなかったとの印象がある。ところが、びっくりしたことにこのジャンルとはまったく違うのだ。今回の『開かせていただき光栄です』は上等の本格探偵小説である。

2012/01/29 20:12

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四股を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事(ジョン・フィールディング)は捜査協力を要請する。だが、背後には、詩人志望の少年(ネイサン・カレン)の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が………。解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代のおとし子たちがときに可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む」

ダニエル先生と弟子たちにネイサンが絡んで周辺に起こる連続殺人事件である。探偵役としての捜査陣だが、盲目の治安判事・フィールディングは人並みはずれた聴覚と触覚、人の会話の中から嘘を見分ける神業的能力の人格者。彼に付きっ切りで視覚を助ける姪のアン=シャーリー・モアとオッチョコチョイだが忠実で行動力のある助手、デニス・アボット。
死体消失、連続殺人、稀覯本、密室、ダイイングメッセージなど懐かしい探偵小説のガジェットをふんだんに盛り込み、叙述トリック的に重層化した謎を精密に構成するミステリーの面白みにのめりこまされる。全編にわたり作者が周到にめぐらせ伏線だらけだから、謎解きにあたる筋書きには触れないほうがよさそうである。
とにかく犯人は誰かと二転三転し、法廷シーンのおまけまでついたギョッとするドンデンガエシ、それでもいらいらする読者、落ち着くべきところに落ち着いて読者をホッとさせる結末と、完璧なミステリーである。皆川博子はもともと推理小説家だったのだろうか。

しかも並みの探偵小説とはレベルが違っていた。ダニエルと弟子たち、治安判事らのグループ、彼らの個性が浮き彫りにされ、冒頭からウィットとユーモア。その珍妙なやりとりは最近はやりのライトノベルの軽口にはない、英国流本場のユーモア精神があった。日本人ばなれした語り口の妙で全編を一貫させている洒脱な文芸作品としても楽しませていただきました。著者は81歳とご高齢でおられるが、これまでの枠を破る新境地開拓の若々しい意欲、しかも結果としての作品の高い完成度にはほとほと感服いたしました。

タイトル「開かせていただき光栄です」(Dilated to meet you)とは、彼等が苦労して手にいれた解剖遺体を前に、こう言ってメスを入れるジョークである。
注書きにせずに文中で丁寧にも「Dilated to meet you」<Dilate=広げる>は「Delighted to meet you」(お目にかかれて光栄です)を言い換えたものであると説明してある。私はここまで読んできて、そんなはずはないとおもいつつ、この作品はもともと英国作家の手になる原書があって皆川博子氏が翻訳したものだと錯覚しそうになった。日本の小説家だったら、オリジナルの作品でこんなややこしい英語のジョークは使わないものだ。
登場人物のあだ名にしてもそうなのだ。饒舌(ルビでチャターボックスと記述されている)クラレンス。肥満体(ファッティ)ベン。骨皮(スキニー)アル。捻れ鼻トピー。鉄の罠アボット。日本人なら、たとえば「おしゃべりクラレンス」、「太っちょのベン」と名づけるところだ。いかにも原典があってそれを直訳したかのように見える。6人の弟子たちが解剖中に歌うアルファベット順のざれ歌も文字通り直訳としか思われない。
しかし、この意図されたぎこちなさが私を18世紀のロンドンに同化させるという素晴らしい効果を発揮している。
どうですか?本物の英国作家が書いた本物の英国のお話。それを翻訳したように見えるでしょう!と。
しかも物語には15世紀の古文体を今に再現できる天才少年が登場するのである。
これは著者自身のユーモア精神にほかならない。氏はその茶目っ気をおおっぴらにみせ、みずから楽しんで創作したに違いない。とにかくいたるところ用意周到のワザがあるのだ。これがあの怪奇趣味のお人かと、その転身ぶりに驚かされました。

舞台は1770年のロンドン。その光と影。産業革命がダイナミックに進行し、やがて英国は「世界の工場」として君臨するのであるが、都市にあっては貧困や失業、労働や生活の環境悪化による享楽と退廃、そして犯罪が同居していた。庶民にとっては無政府状態。多くの新興の勢力は金の力にものいわせ、自由の名のもとに社会的不正義をおこなう。司法制度はお粗末であり、庶民にとって公正な裁判を受けられる保証はなく、無実あるいは軽犯罪者が有罪死刑とされることが頻繁におこった時代である。
科学的医療も萌芽期であった。まだ、治療といったら瀉血と浣腸の時代だったようだ。人体の研究は墓堀人から密かに買い取った屍体、あるいは払い下げられる刑死者などを解剖の対象として行われていた。だから人体構造を究明しようとする研究者にとって解剖用死体はめったにお目にかからない貴重品であった(だからタイトルの言葉が意味を持つ)。
外科医というのは内科医に比較し身分は低い。だが、外科医、ダニエル・バートンは内科医である兄ロバートの支援を受け、私的解剖教室を開く志の高い研究者である。彼は並外れの世間知らずで、そこを世慣れた6人弟子たちが補っている。それぞれが優秀で個性豊かな人物であり、師を尊敬し、師の事業を力いっぱい支えている。

最近のミステリーがテーマにする動機不明の猟奇事件ではない。事件発端と経緯、終結の背景としてこのような当時の英国があった。氏はその時代を語る。ロンドンの風俗、とくに下層階級の詳細を物語の各所にちりばめる。「講釈師見てきたような嘘を言い」ではないが、このリアルな生活感覚を読者が共有するから、殺人の動機は人間味が濃厚に、事件はますますドラマティックに語られる。語りの魅力はユーモアだけではないリアリズムがそこにある。

弱者に対する社会的不公平、人間の精神を歪めるカネカネカネ。そんなロンドンにあってダニエル先生と弟子たち、そしてフィールディング判事と仲間たちはみな限りない優しさをもって人間を見つめている。弟子たちは人生の矛盾や不条理を鋭敏に感じ取り、それに耐え、受け入れながらも陰気に落ち込むことなく笑いで乗り越える。 私にはディケンズの世界を見るような気がした。

匠の手になる珠玉の工芸品である。
新年早々にいい小説にめぐり合えました。

Delighted to meet you

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紙の本

文春のミステリーベスト10で第3位に偽りなし!

2012/06/26 16:50

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:書子司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本の紹介に「作家生活40年のキャリアを誇る著者の集大成にして新境地!」とあったが、その通りで、今までの作品とはかなり違っていた。ミステリーとしての仕立ても見事なら、18世紀ロンドンに生きる人々も生き生き!文春の「2011年ミステリーベスト10」の第3位に選ばれたのも当然かもしれない。
実際、これまでこの作者の作品は“面白そう”と読み出すのだが、なんとなく読み通せず、途中でおいてそのまま積ん読になっていたのが多かったのだが、この作品は最後まで飽きさせず、今までの皆川作品になかった物語的な面白さに魅了されて、一気に読み終えてしまった。
舞台は18世紀のロンドン。一方に解剖教室を開く外科医ダニエルとその弟子たち、他方に「グッドホープ邸の殺人」にも描かれた実在の判事サー・ジョン・フィールディングとその姪である助手のアン・シャーリー・モア。中心に四肢を切断された少年の死体、さらに顔をつぶされた男の死体も現れる。
自分たちの無罪を証明するためにも、判事からの捜査協力の要請に応えて謎の解明に奔走するダニエルの弟子たち。それと平行して、自作の詩と稀覯書を持ってロンドンにやってきたネイサンのストーリーが語られる。少し話が逸れるが、ネイサンのストーリーの始まりが読み進めていて一瞬わからなかった。装丁の関係だろうか……行が空くこともなく、章を変えることもなく時系列が変わってしまっていたからだ。エッ?と一瞬わからなくなってしまった。とは言え、物語の面白さを損なうほどのこともなく、慣れてしまえば苦になることは無かった。
18世紀イギリスの風景も、人物も生き生きとして、ミステリーの面白さもヒストリーの魅力もある本当に読むのが愉しい1冊。実在の人物や歴史的事実を活かした虚実とり混ぜての展開は、歴史ミステリーならではの醍醐味。
特に物語後半の展開は、これまでのこの作者にはないスピード感で、特にラストのどんでん返しはジェフリー・ディーバーもびっくりの仕掛け!これだけでも読む価値はあるかとも思えた。

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紙の本

私、自信なくしました。何がって、皆さん絶賛なわけですよ、この小説を。2011年のベスト3に選ばれたのも当然、だとか、本格ミステリとしても優れているとか。いえ、悪くはないんです。皆川作品の中では読みやすい方だし、皆川の年齢を考えるとクリスティみたい、なんて思うんです。でも、どこかスッキリしない。ベスト1にならなかったことを私なんかは考えてしまうんですね。むしろ当時の英国を知る小説として楽しみました。

2012/05/01 18:57

5人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

佳嶋の装画がいいです。繊細で、美しく、官能的。こういう絵を書く人は、最近増えていますが、でも色彩も含めて最近の装画ではトップレベルではないでしょうか。この人、結構コアなファンがついたイラストレーターらしく、画集もでているようですし、個展・グループ展での発表も盛んです。覚えておいて損しない人でしょう。ちなみに、私はこのカバー画の色使いと表現方法などから、洋画家の谷川泰宏の絵を思い浮かべました。ちなみに装幀は柳川貴代(Fragment)。

で皆川博子、私が苦手とする作家です。いえ、好きなんです。取り上げるテーマも、扱う時代も濃密な文章も、全てが魅力的です。ただし、読むのに時間がかかる。しかも話が長い。だから読んでいて、疲れるんです。今までも、途中で断念した本が何冊もあります。話の展開がゆっくりしているので、面白くなる前に放り出してしまうので、また読もう、っていうことにならない。

でもです、取り上げるテーマも、扱う時代も濃密な文章も、全てが魅力的なんていう作家はそうはいません。結果、新刊が出るたびに手を出しては撥ね付けられるということの繰り返しということになります。今回も、本を開けば字が一杯、無事に読み終えることができるのでしょうか、不安な思いで頁を繰り始めたのですが・・・

お話は18世紀のロンドンが舞台です。主人公といっていいのがダニエル・バートン、聖ジョージ病院に勤める40を少し過ぎた独身の外科医です。とはいえ、病院で治療している様子が描かれることは殆どなくて、もっぱら学生たちが実際に人体解剖を行える私的解剖教室で作業している姿が印象的です。以前は兄、ロバートに協力して解剖から標本つくりまでを行っていましたが、今はダニエルがその全てを行っています。

ロバート・バートンはダニエルの兄で、社会的地位の高い内科医の資格を得て上流社会の仲間入りをしています。色々出費も多く、それを助けるのがダニエルが作る標本です。ダニエルが作業している解剖教室の経営者であることをいいことに、ロバートは弟の作った標本を自分が作ったものとして売りさばいています。独身の弟とは違い、結婚していて妻との間に三人の子供がいます。準男爵令嬢エレインの主治医でもあります。

ダニエルには大勢の弟子がいます。一人目はエドワード・ターナー、容姿端麗なダニエルの一番弟子で21歳の若者です。ナイジェル・ハートは19歳。虚弱体質といっていいかもしれませんが、細密画家として天才的な腕前を見せます。クラレンス・スプナーは通称・饒舌クラレンス、22歳です。ベンジャミン・ビーミスは通称・肥満体ベン、21歳。そしてアルバート・ウッド、通称・骨皮アル、23歳です。

他にもダニエルの関係者でいえば、ダニエル・バートン邸の門番兼下男トビーがいます。アイリッシュで通称・捻れ鼻トビー。ネリーは女中で、同じくアイリッシュです。イケメンのエドワードに思いを寄せています。そしてダニエルの飼い犬で、老いた雑種のチャーリーがいます。ディックとゴブリンはダニエルのために解剖用の死体を、墓地から掘り起こしてくる墓暴きです。

そして、もう一つの流れの話の主人公ネイサン・カレンがいます。シャーボーンからロンドンに出てきた詩人志望の少年で、17歳ですが外見は14、5歳にしか見えません。身内は母と兄夫婦で現在は母の従姉の家に宿泊しています。教区の牧師の紹介で、〈十五世紀の聖職者が書いた詩篇〉をもってティンダル書店を訪れ、エレインと知り合います。古語以外にフランス語の読み書きができるという若者です。

ティンダルはティンダル書店店主で、忙しいせいかネイサンの持ち込んだ詩篇をいつまでも放置します。その一方で若者の実力を認める人間も現れます。トマス・ハリントンがその人で、政府を弾劾する記事で評判のパブリック・ジャーナル社長です。彼はネイサンの文章力を見込んで、寄稿を依頼します。文学関連ではほかに、色々噂のある仲買人で文学や歴史の造詣も深いガイ・エヴァンズがいます。

そして最後が探偵関係者です。ジョン・フィールディングは盲目の治安判事で、異母兄ヘンリーに協力し、兄の没後、治安組織をさらに拡充強化します。若い頃に失明し、〈盲目判事〉と呼ばれていますが、視力を失ったかわり、聴覚が研ぎ澄まされ、虚言と真実を耳で聴きわけると犯罪者におそれられています。

ジョンを助けるのがアン=シャーリー・モアです。ジョン・フィールディングの姪で助手です。盲目の判事のために、見たものを正確に言葉で伝えることで目の役割を果たします。デニス・アボットは、アンの助手で通称・鉄の罠。そして最後が、ジョンの異母兄で今は亡きヘンリー・フィールディングです。ウェストミンスター地区治安判事に就任したとき、それまで公的にはなかった警察組織を整備した人です。

もっと多くの人が登場しますが、実によく描き分けられていて、外人特有の名前のわかりにくさはありますが、とても理解しやすいし、今までのようにいかにも〈美文〉といった粘着質の文章は、よりフラットになった印象でともかく読みやすい。そして今までに比べて話の展開が速いので、読書スピードもかなりの加速が可能です。ともかく、矢継ぎ早に三つの死体ですから・・・

そして18世紀ロンドンの描写があります。これがまた読者に楽しみを与えてくれます。これが80歳を超えた人が書いた小説でしょうか。こういうお話を読むと、日本の老人も捨てたものじゃあないなあ、って思います。最後はカバー後の内容案内のコピーです。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解
剖教室から、あるはずのない屍体が発
見された。四肢を切断された少年と顔
を潰された男性。増える屍体に戸惑う
ダニエルと弟子たちに、治安判事は捜
査協力を要請する。だが背後には、詩
人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる
恐るべき運命が・・・・・・解剖学が先端科
学であると同時に偏見にも晒された時
代。そんな時代の落とし子たちがときに
可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。

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紙の本

装幀の美しさもさることながら

2015/03/26 15:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る

前半は3ページ毎に登場人物表を見て、行ったり来たりをひたすら繰り返しておりました、がその分と言ったらアレですが中盤からは本当に楽しめます。装幀の美しさもさることながら、舞台となる18世紀ロンドンの表現だけでも一読の価値ありです。読後はお気に入りの人の本棚を解剖しに行きたくなるかも。

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2011/09/19 00:06

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2011/09/14 18:46

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2011/07/20 00:45

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2011/07/26 15:57

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2011/09/30 18:20

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2011/07/24 00:01

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2011/07/23 16:16

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