紙の本
細かく史料を紹介しながら
2022/03/12 11:46
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投稿者:柏木ゆげひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
気晴らしのつもりで読んだ本ですが、面白かった。この新書から2019年に映画『決算!忠臣蔵』が作られており、先にそちらを見ているのですが、当然ながら映画と異なり、細かく史料を紹介しながら述べられています。
紙の本
一つの事象を、別の角度から見るのは面白い
2019/12/24 12:19
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
「決算!忠臣蔵」という映画は、
関西弁のネイティブスピーカーが多く出ていたので安心して観られました。
変な関西弁聞くのっていやですよね。
刃傷沙汰や仇討ちは暴力的で決して肯定できないんだけど、
一つの事象を、別の角度から見るのは面白い。
題名通り、お金の面から忠臣蔵を見た話です。
討ち入りの場面はありませんでした。
この映画のエンドロールにでてきたのが『「忠臣蔵」の決算書』。
これがネタ本かと思って読みました。
真面目な話を、分かりやすく、平明に書いてあって、いいですね。
こんな本に目をつけて映画化したところがえらい!
まじめな社会科学の本ですが、なかなか面白いです。
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昨年末にちょっと話題になってた本。赤穂藩の取り潰しから討ち入りまで、忠臣蔵に関しておは費用明細が記録された史料が存在する。歴史の解説本は数多くあれど、会計的な観点で歴史を捉え直してみるという異色の1冊であり、評判どおり面白い1冊である。いろいろな価値基準で歴史を見つめてみることで、新たな発見が得られることを再認識できた。
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討ち入り費用総額「700両」
一級史料で読み解く、歴史的大事件の深層
経済的側面から見た討ち入り計画の実像
大石内蔵助は軍資金をいかに使ったか
またまた忠臣蔵かと思わないでもなかったですが購入。
あとがきを読むと本書のエッセンスは2008年から
温めていたそうです。
「預置候金銀請払帳」は以前から知られていた史料だ
そうですがまだまだ研究の余地があるそうです。
まず、藩の取り潰しの過程が経済的側面からわかった
のが面白かったです。
藩札をどの様に精算するのか。
藩の財産処分はどうするのか。
よくドラマでは、城付きの武具を引き渡すシーンが
出てくるが、城付きの武具の数はさほど多くは無く、
藩所有の武具は売り払われ処分されたことがわかる。
藩所有の船も売り払われる。作事方の材木や納戸、
台所道具なども売れ払われる。
家中の藩士たちも武具や馬具、馬などを売り払う。
また、城付きの兵糧米は、城受取りを担当した大名に
手当として支給されることが慣例であったようだ。
新しい領主が決まれば、幕府の蔵から改めて城付きの
米が支給されることになるという。
赤穂浪士が吉良邸に討ち入りし本懐を遂げるまでが
経済的側面から描かれるがわかりやすく面白い。
大石のスタンスとしては藩の再興のみならず、吉良
側の処罰を求めていたという。反対に、堀部安兵衛
などの下級武士は、主家のためと言うよりは自分の
武士の一分が立たないという立場であり、上士と下
士の意識の違いがわかり面白い。
討ち入りにより、四十七士は称賛される。
事件発生から討ち入りまで足掛け2年の間には脱落
者が続出するが、討ち入り成功後の逃亡者達の末路
を考えるとなんとも苦いものが心に残る感じがした。
これが本当の「忠臣蔵」 (小学館101新書―江戸検新
書)と併せて読むのがおススメである。
なお、山本先生、来春刊行される「敗者の日本史」
でも忠臣蔵を取り上げるようですが内容に差別化でき
るのか気になるところである。
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127両 (18.4%) 仏事費
65両 ( 9.4%) 御家再興工作費
70両 (10/1%) 江戸屋敷購入費
248両 (35.6%) 旅費・江戸逗留費
11両 ( 1.6%) 通信・会議費
132両 (19.0%) 生活補助費
12両 ( 1.7%) 装備費
30両 ( 4.2%) その他
695両 (100%) 総額
さて上記の金額、約700百両(現在の金に換算して約83百万円)を使った一大プロジェクトとは何であろうか?そう、あの有名な吉良邸討入に掛った費用の総額と内訳なのである。松の廊下の刃傷沙汰が元禄14年(1701年)3月14日で、赤穂城の引渡が4月中旬。ここから浪人生活、雌伏生活が始まり討入を行ったのが翌元禄15年12月14日であるから城引渡から約一年半強の日数を要しており、その間に掛った費用の総額が700両余。討入に最終的に参加したのは四十七士だから一人当たりにすれば僅かに176万円だ。そして700両の出所であるが、これは赤穂城の引渡のときの余剰金が約400両そして亡君浅野内匠頭の正室の運用金から預かった300両である
赤穂浪士と言えば年末の風物詩。そして演劇を始めとして沢山の関連書物も出ており今更の感もないのだが、その背景には主君の仇打ちという当時の武士の義侠心を刺激する内容もさることながら意外や豊富な関係資料が存在することから元禄の時代の研究対象としても貴重な出来事だとも言われているが、関連書類の中でも実は討入に臨むに当り掛った費用の決算書が存在しているというのだからこれはまた驚きだ。しかもあの大石内蔵助が自ら作成していたというのだから全くもってビックリだ。
そもそも何故にして大石内蔵助はこうした決算書を作成していたのであろうか?赤穂藩の筆頭家老である大石内蔵助は藩の財産は浅野内匠頭のお金と認識していたようであり、その藩財産の処分から生じた残余金であろうと、御家再興の為に使って良いという話があったのかもしれない正室の運用金の一部もまた浅野家の金と認識していたようだ。それゆえに、それらの金を仇打ちに使うに際しても私的に流用しては居ないということを証明するべく使途目録を作成し正室に報告していたようだ。
良く、大石が京都潜伏中に先斗町で遊蕩に耽っていたとの話もあるし、事実あちこちにそうし行動を非難する文書いもあるようだが、実はそうした事実はあったにせよこの決算書にはそうした支出は記載されてはいない。同時に京都から江戸までの旅費も大石の分は記載されていないところから、これらは私的懐から出した、即ち自腹であったようだ。また討入が最終的に12月14日とすることを決めた後に、四十七士が其々に住んでいた長屋の店賃も踏み倒すことなく事前に全て清算させているのだから律儀としか言いようが無い。また討入の為の刀や槍の購入費用も余りにも少なく、これも大石の私的費用だったのかもしれない。
こうした決算書を眺めていると大石内蔵助の亡君に対するあくまでも忠義を尽くし、尚且つ仇打ちに際して後を濁さないように全てを綺麗に処理していくという倫理観の強さが表れていると言える。なんか赤穂浪士の話も、そして大石内蔵助にますます惹かれてくる思いだ。
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以前、エコノミストの伊藤洋一氏がpodcastで紹介されていたので手に取ってみた本です。
材料となった史料は、大石内蔵助が浅野内匠頭の正室瑤泉院に向けて残した「預置候金銀請払帳」、現在は箱根神社に所蔵されています。
その討入プロジェクトの決算書とも言うべき「預置候金銀請払帳」に記された支出項目は113項目、亡き主君に対する仏事費から御家再興工作費、旅費・江戸逗留費・潜伏中の住居費・飲食費そして討ち入りのための武器購入費等々、その使途は様々、その記述は詳細にわたります。
忠臣蔵関係の研究はそれこそ山のようにあるのでしょうが、討入りの生々しい実態を「金銭面」から明らかにするというアプローチはとてもユニークですね。
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改易後討ち入りまでに大石内蔵助が公用で使った700両は、瑤泉院から借りた「化粧代」。その用途が記載され、討ち入り後瑤泉院に報告された史料「預置候金銀請払帳」を紐解き、討ち入り「プロジェクト」を説明。丁寧に記述されているし、興味深い内容。
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大変面白く読む事が出来た、当時の貨幣を現在の貨幣価値
に変更が出来、現実味を帯びて読み進める事が出来た。
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元禄武士は江戸時代初期の武士に特有の「かぶき者」的な猛々しい心性をまだ色濃く残していた、こうして見ると赤穂事件は元禄期にしか起こり得ない稀有な物語だったと言える。
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表題や帯などから、凡そ内容が知れる。
“忠義だけでは「首」は取れない”
“討ち入り費用総額「700両」(約8400万円)”
それを今流の決算書の形で、貸借のバランスや予実分析を交えて考察を加えていくものだろうと興味を持って手に取ってみた。
面白かったのは途中までか。決算書というほどのこともなく、参考にした資料名『金銀請払帳』のごとく、ある金と出ていく金程度で(まさに請け・払い)、大した資金計画を資料から浮かび上がらせることもなく、出金した相手、日付や金額から、「おそらく・・・の目的だろう」くらいの推測に終始。
例えば、初期の出金が当主浅野内匠頭の供養とお家再興のための出資であったことから、
「こうしたお金の使い方から、内蔵助がこの時点では、この金を討ち入りに使うことなどまだまったく考えていなかったことが察せられる。」
で終わり。まあ、実際そうだったのかもしれないけど、小説であればこの出金さえも世間を欺くため・・・と尾鰭がついて面白おかしく展開するのだろう。
また、この軍資金(上記700両)以外にも、出費があったとされる費目も、内蔵助のポケットマネーとサラリとスルー。例えば、世間を油断させるために放蕩暮らしをしていたという有名な京での遊興費も、
“「毛頭自分用事に仕り候儀御座無く候」と書いているので、このような出資は、当然、自分のお金でしたのである。”
と、内蔵助が落合与左衛門に宛てた書状を引いたり、いよいよ決行迫り、内蔵助一行が江戸下りする費用は『金銀請払帳』に記載ないことから、全て自分(=内蔵助)のお金で賄ったとし、討ち入り直前、藩士たちの店賃やつけの代金などの支払いは、すでに会計を〆た後(=『金銀請払帳』を瑤泉院に提出した後)だからと、
「内蔵助が持参したお金の中から渡したものだろう。討ち入りにあたって、身の廻りをきれいにしておこうという意識が見える。」
とまぁ、なんだかなあの推論。
要は、討ち入りの決算書は、内蔵助の手持ち資金も含めて考えないと、その成否は考察できなかったということだ(最低でも)。討ち入り資金が底を尽きかけても、折に触れて出てくる内蔵助のポケットマネーが、本書の緊張感を削いでいたのは、いただけない。
それでも、忠臣蔵を資金の面からとらえようとした試みは面白かった。
赤穂藩も、一地方行政区というより、会社組織という面持ちで捉えることができた。 お取り潰しのご沙汰の後、「藩札」の処理に追われるくだりなどは、倒産しそうな会社に債権者が取り立てに押しかけるようだ。藩士への給金の支払いも、
「総計が、1年で米17,836石余、金にして13,720両、現代の価値で役16億5千万円でである。」
と、本書で採用している換算レート「1両=12万円」で計算し、妙に生々しい数字が出て来きて面白かった。
こうした前半の金勘定はそれなりに、であったけど、いざ、討ち入りまでの金の出入りから、内蔵助や藩士たいの行動が読み解けるのかと期待したが、そこは肩透かし。赤穂浪士たちの忠義だけではなく、この義挙を支援するパトロンの存在、あるいは反吉良派による政争のため、思わぬ資金が討ち入りを支えていたとか、もう少し面白おかしく金の流れから追及できなかったものかと惜しい気がした(金に困れば、内蔵助のポケットマネーじゃあね~・・・)。
そのあたり、補完できるかどうなのか、どうやら映画化が進行中らしい。
https://eiga.com/movie/90445/
かなりコメディ路線とみたが、本書の後半の盛り上がりの無さを、フィクションででも補ってくれればと思うところ。期待してます(観ないだろうけど)。
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赤穂事件は同時代の人々にとってもセンセーショナルな事件だったため一次資料も多く存在し、モノガタリ化され続けたために普通なら散逸する様な資料も現在まで残っていることにまず瞠目。原型が多少歪められたとしても、出来事がモノガタリ化されポピュラーになる事には大きな意義がある。
散逸せずに残った資料に、赤穂藩改易から討ち入りまでの精密な出納帳が残っており、本書はそれに基づいて書かれた、討ち入りまでの金の流れと、赤穂藩士の生活の様子と、心の動きを描かれた一級の読み物である。
討ち入りまでのモチベーションの根本には「武士である」という倫理的な要素は強いが、武士として忠義を尽くす相手が立場によって「藩」「浅野家」であったり、「内匠頭長矩」であったり別れているのが面白い(中には大石内蔵助に惹かれて、という人もいた様だが)。結果として前者は浅野家再興運動にまず走り、後者は討ち入り強硬派となった。最初から一枚岩ではなかったチームをまとめ上げるためには優れたリーダーと「先立つもの」が必要だ。特に討ち入り強硬派は江戸詰の人間が多かったため、意思確認やコントロールの為に都度都度江戸に使者を派遣する必要があり、実は残った「決算書」を見るとこの交通費が占める割合が非常に大きかった事実も面白い。
そして、おそらく討ち入り決行に至ったのは、決算書を見る限り残金に余裕がなくなって決行に至らざるを得なかったという面も否定できない。微禄だった者は討ち入り前にはまさしく「食い詰め浪人」になっており、ことを起こすには後がなかった事も読み取れる。一番最後の出納は、高禄だった大石内蔵助自身のポケットマネーによって賄われていた(つまり、改易から藩務整理ののち残った金を綺麗に使い切って討ち入りに向かった訳だ)。
欲を言えば、大石内蔵助自身の「決算書」も見たかった。様々な用途で消えていった赤穂藩の残金だが、微禄だった者への生活援助に充当されてはいたが大石個人は受け取っていない。妻子を離別後遊蕩に走った時の金も、全て個人の金で賄われている。千五百石という高禄を食んでいた大石内蔵助の貯蓄はいかほどだったのか。
藩の残金の出納帳を最後には幕府に提出することによって、改易から討ち入りに至るまでの行動に一片の私心のない事、公の金を公の行為のために使用した事が分かり、それによって討ち入りの「正しさ」はより凄みを増すことになる。赤穂事件が「忠臣蔵」となって人口に膾炙した理由の一つにはこういう部分があったことは否定できまい。
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映画「決算!忠臣蔵」はまだ観てないけど、
その原作としての本書を読んでみた。
小説のような面白味はなかったけど、
細かな資料が現存していることに驚いた。
討ち入り直前には、お金がなくなっていたこと。
赤穂浪士の切腹の意味。
吉良上野介をなぜ卑怯者とするかなどがよくわかった。
また、討ち入り浪士の子孫たちが、
それぞれに取り立てられていることも興味深かった。
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幕藩体制下の藩政や武士階級の階層別身分制度、流通貨幣の現在相場換算などが分かりやすかった。
史料に基づいた研究書となれば、専門用語が多くて苦慮するが噛み砕いた内容解説と金銀請払帳の史料批判が大変面白かった。
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はじめに
序章 赤穂事件と「決算書」
第一章 お取り潰しと清算処理
第二章 軍資金と浪人生活
第三章 討ち入り計画の支出項目
第四章 討ち入りの収支決算
終章 一級資料が語るもの
おわりに
主要参考史料一覧
史料 『預置候金銀請払帳』
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史料『金銀請払帳』に記された予算支出額と使途内容から、赤穂浪士の動きを分析した一冊。現代人の価値観では武士の倫理観は難解。討ち入りを美談と言われても腑に落ちませんが、浅野家全体に対する元家老・大石内蔵助の忠誠心から辿り着いた結末としては納得できます。美学だけで予算管理はできません。周りから色々言われても、内蔵助に標準以上の統率力と管理能力が備わっていたから成功したのだと思いました。