紙の本
からっぽの器
2016/01/24 21:43
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投稿者:端ノ上ぬりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の多崎つくるは、実家の名古屋で高校卒業まで暮らし、大学から36歳の現在まで東京で生活している。アカ、アオ、シロ、クロ、そしてつくるの友達五人組は、すべてに調和し完成されたユニットというべき存在だった。つくる以外の4人はそれぞれ苗字に色彩が入っており色とは無縁のつくるは、最初から微妙な疎外感があった。二十歳の頃突然4人から拒絶され、自殺することばかりを考えて暮らすが、あるきっかけで徐々に立ち直る。しかし別人のような容姿に変貌する。つくるは駅を作る仕事が夢でその夢を実現する。シロがいつも弾いていたピアノの曲でリストのル・マル・デュ・ペイがずっと心に残っている。2歳年上の恋人沙羅に、4人から拒絶された原因、理由を確認するように勧められ、16年ぶりに仲間に会うこととなる。つくるのからっぽの器に、ある人が入っては出ていくだけの中身がない人間なのだとクロに言い、違うよと励まされる。
何が人気作家の魅力なのか、やはり今回もわからないまま。人それぞれに面白いとか、感動したとか、好みとかが分かれるのは当たり前で、人気があってもそれが必ずしもすべての人に共通ではない。今度はどうかなと読んではみるけど、変わらずよくわからなかった。
紙の本
春樹ワールド
2017/02/20 15:59
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投稿者:ymzw - この投稿者のレビュー一覧を見る
長年の積読本を漸く読了。初期春樹作品にあった学生時代の雰囲気と近作に顕著なアナザーワールドを融合させた作品である気がした。おそらく実験作かな?と思うけど、少し初期設定が窮屈だし、中年期以降がご都合良過ぎる印象もあり、そして相変わらずの結論ブン投げパターンで、何度も読み返すことはないかなとは思うものの、読み始めると一気に読まされてしまうのは流石。このガス抜きが新作に活かされることを期待したい。
紙の本
ハマりそうでハマらない小説でした
2016/06/18 22:49
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
評価が分かれる小説というか、人を選ぶ雰囲気が溢れだしています。
確かに、色彩に人の個性を重ねて主人公をあえて希薄な個性にするコンセプトは面白いと思いました。
しかし描写と会話があまりにもオシャレすぎて、違和感を覚えました。孤独な人はこんなにオシャレな感情を抱かないのでは…?と終始不思議な感覚で読み進めました。
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
2000年代以降の村上春樹の作品は初期からのファンほど賛否は分かれるだろうが、個人的に一番厳しかったのがこの作品であった。やりたいことはわからなくはないが、空回りしたという印象は否めない。
紙の本
何が言いたいのかよくわからない。。。
2017/05/27 23:34
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投稿者:こねこママ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人が購入しましたが、村上ワールドにひたりたいだけなのでこれでよし、と言っていました。
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結構良かった。読みやすかったのもあるけど、物語がとてもいい。
突然の仲間との絶縁。その謎を抱えたまま年を重ね、16年経った今、つくるは過去をたどる旅に出る。
読み終わっても謎が残る作品だけど、なぜか心のどこかでこうやって終わることがわかってた気がする。なので物足りなさはない。
物語の中にフィンランドの描写が出てくる。とても綺麗な情景。村上春樹の世界にはとてもフィンランドが合ってる(行ったことないけど)。
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村上さんの本はだいたい読む前の印象を裏切られるところが好き。
ミスターグレイと年上の彼女との決着、オチが付かなかったのだけが心残りかなぁ。
主人公の幸せを祈りたい。
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な…泣いてしまった……。
村上春樹先生ってすごい……
エリとつくるの再会シーンが大好き…というか、心に残ります。
もう失ってしまった何か、でもかつてはあったはずの完璧な何かを想うと切なくて、気付いたら泣いてました。
つくると沙羅がどういった答えを出すのか。
できたら幸せでいてほしいと思うけど、私の中では別れのフラグが立ちまくってます……。
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2015/12/11? 読了
つくるって名前素敵だなーとまず思った。
色彩を持たないって言ってたけど、色んな色の人たちを調和するつくるは、光の三原色が混じったみたいに白のようになって、色彩を欠いたように見えたのかな、とか思ったり。
帯にもあった、
自分が見たいものを見るのではなく、見なくてはならないものを見るのよ。
ってセリフが素敵だった。
そして沙羅の気がわからない、、
でも、沙羅とどうなるかわからない結末だけど、かつてあった五人の調和体と同じように、つくるにとっていい出会いだったんだろうなー
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明確な解を用いない作風は相変わらずともいえるし個性とも捉え得る。が、真に少なくとも色彩を持たない者は何れかという皮肉さよ
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続きが気になってさくさく読み進められる。
おもしろかったけど、あれ?ここで終わり?と思ってしまった。
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以前、単行本を読みました。
この作品では、主要な登場人物には色の付いた名前が多く付けられています。
けれど、うまいなぁと思うのは、色彩の入っていない登場人物の名前。
まず多崎つくる。
彼は特定の色彩を持っていないけれど、「多い」という字を付けられている。
つくる自身は最初から最後まで一貫して、自分のことを個性も何もない空虚な存在だと思っているにもかかわらず。
それから彼に順礼を勧めた女性である、木元沙羅。
彼女の名前である沙羅からは、「まっさら」という言葉を連想しました。
色の付いた名前の登場人物のことを取り上げている場合が多いけれど、この二人の人物の名前の付け方に、著者の多崎つくるという人物についての思いと二人のその先の関係がどうなっていくかの予測が含まれているような気がします。
謎が謎のまま残されているというのも印象的でした。
つくると沙羅の関係がどうなるかということも作品の中では触れられていないし、灰田くんはどうしちゃったのかな、とか、白根さんはどうしちゃったのかな、とかその辺りのことは作品の中に記述がありません。
小説を読むときにどうしても、謎が全て解決してそうだったのかすっきりした!!
というのを求めてしまいがちだけど、現実には、わからないままになっていることの方が多い。
だから、謎のままにされている方が自然なのかもしれない。
そうしてある方が空想する隙間も多いので、それが作品の魅力の一つだろうと思いました。
哲学的な部分も多く、示唆に富んだ作品でした。
色彩の描写が多いので、それを追うだけでも面白かったです。
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氏の数ある作品の中でも、安定した起承転結のある内容。
親友だった仲間たちに裏切られ、死のうと思い始め、やがてその辛い日々を乗り越えた主人公つくるは、別人のように生きていく。だが、彼は忘れたくても時たま過去を思い出す。どうして自分だけこんな辛い思いをしなくてはいけなかったのか。その不安を晴らすために、つくるにある提案をするガールフレンドの沙羅。
氏の作品は、短い方が面白いままの姿で終わりを迎えられると思うのが個人的な見解だ。「ノルウェイの森」「1Q84」を例にしている。この「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、一冊の中にかなりゆっくりと場面を描いていて、主人公であるつくるに愛着を持たざるを得ない構成になっている。約400ページあるが、中盤あたりから彼がどうしてこんな仕打ちを受けたのか、読者も気になってしまうことだろう。
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たぶん、表面のストーリーだけではない、深いものがあるのだろう。記憶と意識とか、社会的な関係とか、人生にとって時の経過が持つ意味、とか。
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本書を読んでいて一貫して感じたのは、なんというか、等身大とでもいうのか、「ねじまき鳥」とか「カフカ」とか「1Q84」とは違って、いつ自分の身の上に起こってもおかしくないような話だということだ。高校生のときの友人グループ5人がまず最初の登場人物。シロ、クロ、アカ、アオ、そしてつくる。女2人と男3人。僕自身印象に残るのは高1のときの6人。Oo、Y、K、Ok、U、そして自分。6人一緒にいたことが多かったような気がする。その後、仲たがいがあったとかではないけれど、僕は1年休学をしたため、学年が1つ遅れて卒業。しかも、大学附属高校出身で他の5人は内部進学だったが、僕は他大学へ進学。自然と関係が切れてしまった。次に1つ下の後輩Iと仲良くなった。Iも他大学に進学したため、結構気が合った。数年後、フリーターをしていたIに声をかけ、僕が就職した会社に来てもらった。けれど、うまく合わずしばらく来て辞めてしまった。それ以来会っていない。気になっているけれど音信不通のまま。これは、灰田との関係を思わせる。沙羅と同じように、僕が好きになった女性(いまのパートナー)には当時好きな男性がいた。聞きたくはないけれど、聞かざるを得ない、そういう気持ちに僕もなった覚えがある。多分、つくると違う点は、僕には学生時代に寮生活で出会った、いまも関係が続く親友Sがいるということだ。1人でもそういう人物がいると、会社や近所付き合いの中でそれほど深い付き合いを必要と感じなくてすむ。僕は人付き合いが得意ではない。誰とでも気軽に話ができる方ではない。人に話が合わせられない。自分の興味と重なる人が身近には少ない。そういえば、会社の中で60人ほどの人の前で話す機会があり、自分の読書遍歴を披露した。村上春樹を続けて読んでいる人とたずねたら、1人しかいなかった。めったにそういう人とは出会わない、貴重な人物だった。さて、沙羅とはうまくいくのだろうか。何度も夜中に電話なんかするんじゃないよ、もう36歳にもなるんだし、相手の重荷になるようなことはするなよ、とつくるに言いたくなった。(でもよく考えると、僕も毎晩のようにいまのパートナーに電話をしていた時期がある。30歳の頃のこと。)それから、文体がいままでとは違う気がして、気をつけていたのだけれど、結局「やれやれ」は沙羅が発した1回だけだった思う。その一瞬、村上春樹を読んでいるという感覚になった。登場人物は限られているが、実は最も印象深かったのは、クロの家を案内してくれた老人だった。もし映画化するとしたら、誰が似合うだろうか。リスト「巡礼の年」ベルマン演奏のCDを購入した。クロとの会話を読みながら聴いた。ヤナーチェクと違って、BGMとしてフィットしていた。僕は第3年のエステ総の噴水という名の曲が気に入った。