紙の本
沖縄県民以外の人間こそ、読むべき
2020/05/04 10:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンブルは749ページまで。
普通の新書本なら3冊分ほどの分厚さ。
これが数十冊那覇のジュンク堂の店頭に並ぶ様は、壮観であった。
発売のタイミングに沖縄に行っていて、すぐに購入した。
地元に戻ったら、すぐにコロナ騒ぎで大きな書店にも行きづらくなった。
東京や大阪の書店でも、この本は売られたのだろうか。
沖縄県民以外の人間こそ、読むべき本である。
最初の、分厚い新書1冊分は、沖縄の少年ゲリラ兵の証言。
2冊目にあたるのは、本土に目を向けて、その上官たちにも迫る部分。
それだけでもすごい熱量であり、膨大な情報量である。
最後に、資料を基にした考察がある。
短いが、この部分が、この本の要である。
沖縄戦を掘り下げるにとどまらず、戦争の姿に迫る。
いつも言われることだが、
沖縄を考えることはこの国の平和を考えることになる。
反日だとか、パヨクだとか、安易なレッテル貼りで思考停止している人に読んで貰いたい。(彼らに、この本を最後まで読み通す根気があることを強く望む)
そして、人の役に立ちたいと熱い思いを持って、自衛官に任官している人たちにも読んでもらいたい。
そのよき思いを、よき形に正しく発揮するためには、どんな思考が大切かを考えてもらうために。
紙の本
語られない記憶
2022/06/22 17:48
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず辞書のような厚みに、腰が引けてしまう。
しかし大部分は、元少年兵たちの整序されない生の証言であり、内容はつらいが、一つ一つ読んでいく分には苦にならない。
断片を少しずつ読むうちに、知らなかった沖縄戦の一断面が見えてくる。
映画は観たが、そこからだけでは、監督の意図や思いまではくみ取れなかった。本書は映画に収められなかった証言のみならず、考察も加えられており、頭の整理を助けてくれる。
何と言っても、取材の熱量が伝わる労作である。
紙の本
映画を見た人も是非、戦争の本質を知りたい人も是非
2021/08/30 08:58
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投稿者:flowerofzabon - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平洋戦争下沖縄では米軍との戦闘以外で多くの人が亡くなった。集団自決、マラリア、スパイ容疑による粛清が主なもの。これらについてはヤマトンチュによるウチナンチュ差別に原因が求められることが多いが、ことはそんなに単純ではない。
沖縄でいわば「裏部隊」に従事することになった多くの人の証言を通じて、沖縄で引き起こされた悲劇は戦争のある種の必然であることを浮き上がらせるのが本書である。
沖縄で起こした悲劇から学ぼう、ではなく、今も世界で起こっていること、日本全体で起きていることと直結している現在進行形のドキュメントに読めてしまうとろこが本書の優れた点だ。
城山三郎賞(角川文化振興財団)・JCJ賞(日本ジャーナリスト会議)・早稲田ジャーナリズム大賞草の根民主主義部門大賞(早稲田大学)
紙の本
貴重な証言の数々・・・
2020/10/21 22:08
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投稿者:楽しい家庭菜園♪ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生々しい証言の数々・・・
正直読んでいるとかなり落ち込んだ気分になります。
しかしこれは絶対に忘れてはいけない歴史。
よくぞこれだけの証言を集めて出版してくれたと感謝したいです。
これだけの内容にまとめ上げるにはかなりの熱意と労力が必要だったでしょう。
自分の子と同年代の少年たちが、沖縄で経験した戦争。
沖縄にアメリカ軍が上陸したことは知っていても、そこでどんなことが行われていたかはあまり知りませんでした。
これは、私たち親世代はもちろんですが、ぜひ十代の人たちに読んでもらいたい本です。
紙の本
過去と今が繋がる
2020/11/29 18:43
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本土から派遣されたエリート将校が、諜報活動に手を染めていく様子は映画顔負けです。戦時中の負の遺産を、現在の基地移転問題に重ねてしまいました。
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島民の4人に1人が亡くなったと言う沖縄戦。その死者は全て米軍との戦いと、自発的な集団自決によるものだとばかり思ってた。
しかしそうではなかった。それだけではなかった。沖縄戦の本当の闇はそこにある。苦しいけれど、知ることができて良かった。
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2018年、私は映画館で97作を鑑賞し、年末にベスト10を選んだ。その第一位に選んだのが、三上智恵・大矢英代共同監督ドキュメンタリー作品の『沖縄スパイ戦史』だった。陸軍中野学校出身の工作員が、沖縄北部で15-6才の少年を集めてゲリラ部隊をつくった。1人百人を殺した少年兵もいる。その他スパイリストが作られて、住民同士の監視が行われて殺し合いがなされたことも語られた。関係者が少なくなった現在になって、ようやく口を開き始めた人たちがいた。
映画作品も大ショックだったが、本書もかなり貴重な証言があり、しかもいつでも参照できうるように記録されたことは重要である。日本人が日本人を殺す。この745頁にも渡る新書は、映画で語られた証言を補い、新たな証言者を加えている。ドキュメンタリーとこの新書、あい補い合うものだと思う。唯一の地上戦・沖縄で何が起きたのか、を知ることは、日本国民が「いまここにある危険」を知ることでもあるだろう。
どう紹介していいのかわからない。要約などできない。沖縄南部まぶいの丘の沖縄戦争祈念館には、異例ともいえる「証言だけが展示された部屋」がある。戦後の国民は一家全滅や集団自決の証言を読んで「戦争がやってくると、こんなことになるのか」と知るはずだ。かつて私はそうだった。けれども、沖縄県民でさえ知らされていなかったもう一つの沖縄の悲劇が、ギリギリのところで、その証言が間に合った。
三上智恵は「はじめに」で、「軍隊が来れば必ず情報機関が入り込み、住民を巻き込んだ「秘密戦」が始まる」と警笛を鳴らす。「2015年から与那国島・宮古島・石垣島などに新たな陸上自衛隊基地が作られる一連の流れの中で、あたかもこの黒いピースがあちこちでよみがえり、繋がりはじめているように感じている」とも書いた。なるほど!と思ったが、そのことを展開するのが、この本の仕事ではない。スパイ養成学校だった陸軍中野学校がつくった少年兵は、敗戦で中断されたけれども本土でも組織されていた。そのことの「意味」を、私たちは咀嚼しなくてはならない。圧倒的で膨大な事実の前に、私は消化不良を起こしながら、我慢して噛み締めた。
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750ページ。新書らしからぬ分厚さは、手軽に読めるという感覚ではない。手軽でなくても手をつけた。思ったより速く読めた。2018年に公開された映画の原作というものではなく、その後に加筆されたもので追加の取材も入っている。戦争が行われるその場所で起き得ること。住民は軍事物資の一部となり、また信じられない対象となる。軍隊による住民の殺害、住民同士の殺害。守る対象であるそのものを犠牲にする戦争に大儀はあるのか。尖閣・竹島・北方領土・拉致・ミサイル。現代にも存在する紛争の種。力による力への対抗が何を招くか。大事なのは我々国民の感情。短絡的にならず、冷静に対処を見極るようにしたい。
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●は引用、その他は感想
●「今日只今の事に死力を尽くせ」これが隊員らが今日まで、すべて暗記するほどに徹底された村上隊長の訓示だった。死ぬ気でやれ、と言ってはいるが村上隊長は少年兵に繰り返し「絶対死ぬな」とも言っている。(中略)兵士の命など鴻毛より軽いと叩き込まれた当時の軍隊教育と、中野式の教育はこの点でかなり異なっていた。スパイも、生きて帰らなければ任務は達成できない。捕虜になっても敵情を視察して戻って来いというのが大前提であり、決して「死んで来い」という部隊ではなかった。しかし場面によっては戦車爆破隊など自爆も辞さないテロ作戦もあったのは事実である。
●辺野古問題。敵は陣地にしか撃たないから、僕は恩納岳にいたが、基地があるからアメリカがあっちこっちから攻撃した。その辺が一番頭にあるね。だから基地というものは作らせてはいけないなと。今でも(日本にある米軍施設の面積の)74%の基地が(沖縄に)あることわかってるわけだから。基地がある所のしか弾は来ないから。
●民間人が住む地域では住民を使っての遊撃戦をせよ、と中野学校のマニュアルは簡単にいうものの、作戦途上にある軍隊にとって敗残兵と住民は足かせでしかない。(中略)上陸地点にいる住民というのはこれを利用しなければ戦えないし、同時に邪魔されないように「始末のつく」状態にしなければならないという、全く矛盾した存在になってしまうことが理屈抜きで理解できるようになる。軍隊は住民を守らなかったという残酷な事実が沖縄戦最大の教訓であるが、住民を守るための作戦と、軍隊が勝つための作戦は全く一致しない。まずは勝たないことには住民を守れない、という大前提のもとに軍隊は動くものであるが、すでに戦場になった地域にいる住民は、これを守ることはほぼ不可能であり、作戦上にある兵士にそれを求めても殺生だ、ということでしかない。(中略)住民のいる地域で戦争をしたら住民は当然守れない。だから戦争をしていい場所は、少なくとも人が生活している土地のどこにもないということだ。→ロシア軍のウクライナ侵攻作戦
●もし半年でも終戦が遅れてこの教令のもとに「本土決戦」が始まっていたら、敵の攻撃による被害とは別に地域社会の中に不逞分子の処置が横行し、しかも軍人すら介入しない処刑も起きうる状況にあった。沖縄戦以上の悲劇が各地で起きていたことは明らかである。
●戦争になれば、兵隊と兵器をどう動かして勝つのかが優先であって、住民も労働力や兵器にしか見えたこないのが軍人だということ。玉砕する場所で住民を救うという発想は出てこないこと。戦争に勝つという大義の中で、個々の戦場に残された住民などは始末の対象でしかないこと。つまり、軍中枢部がその方針なのに、現場で「私たちを守ってくれないのですか?」と問われても現地部隊に何もできなかったのも道理だ。「国を守る」ことと「そこに住む人を守る」ことは決して同義語ではないということを私たちは肝に銘じておかなくてはならない。この軍隊の発想を私たちの側が理解しない限り、軍隊は私たちを守ってくれるという都合のいい解釈で軍事費増大を許し、軍事政権に力を吹き込んで、自らの手で悲劇を引き寄せていく愚かな民に逆戻りしてしまうからだ。
●つまり専守防衛の自衛隊はそもそも国土戦を想定せざるを得ず、その場合敵を内陸に引き込んで戦うわけだから国民の自発的な協力は不可欠であると捉えていて、沖縄戦のような状況が再び実現する纐纈さんは言っているのだ。自衛隊が国土戦に備えるなら、当然過去に国内で実践された遊撃戦とそんも時の住民の動向が最大の参考事例になる。ということであれば、なおさら私たちはこの本でつぶさに見てきたような沖縄戦の中のゲリラ戦と、その時に住民の置かれた状況をよく理解しておく必要がある。自衛隊が国民に自発的に協力してもらうためには、平時から構造的にも国民を統制しやすい体制を作っておくことが肝要である。そして軍事作戦に協力させる一方で、軍事機密を漏らされては困るので軍の機密を守る法整備を完了させておく必要がある。これは、まさに今、日本で進行中のことではないか。国民を「始末のつく」状態にしておくことこそ、戦争に勝てる国の必須条件だという考えが戦前から一貫して変わっていないことは、歴史的証拠を積み上げて論理的に理解しておくべきだろう。なんとなく戦前のような空気になってきた、という言葉をよく聞くようになったが、国の管理が進み、表現が不自由になり、軍機保護法の再来である特定秘密保護法が報道や市民活動を規制し、共謀罪(テロ等準備罪)が監視社会を作る。私たちは始末の悪い国民から、今まさに始末のつく状態に変えられつつある。もはや戦争をするまであと一歩なのだ
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生まれも育ちも沖縄県。戦争のことは幼い頃からTVや新聞、学校や図書館など、耳にし目にして来ました。当時の写真を見た時は子供ながらにショックが大きかった。夜になると当時の過酷な状況を想像し切なく悲しくなることも。
内容に出てくる地域を知っている為 とても衝撃的でした。戦争体験者の方々の貴重な証言。辛い経験を話す事は大変だと思います。話すことによって影響を受ける人もいますし、小さな集落ではみんな知り合いなので本当に勇気のいる事だと思います。
気丈な祖母から 一度だけ、少しですが戦争の話を聞いたことがあります。「捕虜になったら大変だと言われアメリカの兵隊が来たらみんな山に逃げた」と。