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une femmeさんのレビュー一覧

投稿者:une femme

114 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本貝に続く場所にて

2021/11/05 03:54

卓越し、凝縮された表現

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

卓越した表現力や、凝縮され、的確に表される文章に、目を見張りながら読み始めた。

過去と現在ー現在暮らすドイツと生まれ育った日本の東北ー、生者と死者の間を見つめながら、二重に引き裂かれる中を生きるかのような主人公の眼差しを通して、ノスタルジーに浸り切ることのできない記憶を描写しているのではないかと思った。
 直情的な表現ではないが、気持ちが静かに揺さぶられ、心情が浮かび、淡い切なさを呼ぶ。

 不可避な断絶に対して目を逸らすことなく見つめる現実感と、記憶から浮かび上がる像の幻想性のバランスが絶妙であり、上質で濃厚な描写となっている。著者の絵画についての見識も、堅固な下地になっているように思う。

こういう小説作品をずっと読みたかったと、上質な時間をいただいたように思った。

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紙の本

紙の本マチネの終わりに

2019/09/30 03:20

知的な世界観

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ある程度年齢を重ねると、未来だけを見ていきていけなくなる。過去を振り返る時間が、未来だけを見つめていられたまっすぐだった若い頃より、多くなる。そんなことを考えるようになって、この小説を読み、読むことができ、良かったと思った。
主人公の 芸術や音楽の解釈も、面白い。時々、音楽の演奏を、自分なりに解釈してみても、それを言葉にして、表現する機会がない自分にとっては、主人公の言葉を読むことが、面白いのである。ただ、主人公が、恋をする相手が、完璧過ぎて、こんなに完璧な女性は存在するのだろうかという思いに駆られながら、読んだ。そこには、少し違和感があった。
芥川賞受賞時、三島由紀夫の再来と謂われた、作者の文体は、変化しているようにも思われますが、やはり、今や日本の他の作家にはない、知的な世界観があり、また乱れた言葉がなく、素晴らしいと思います。

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紙の本

紙の本わたしたちのすべての昨日

2016/04/12 18:04

おススメしたくなる一冊

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

イタリアのある家族の物語。隣人や友人との交流や迫り来る戦争のなかで、一家族とその子供たちの成長が描かれている。読んでいると、端的な言葉を綴っているのに、情景や人物の人となりが、広がるように想像できる。イタリアの雰囲気も伝わるのはもちろんのこと、単に、本を読むことの面白ささえ、思い起こさせてくれる、そんな素朴さもある。

 物語に流れる時を追うように、読み進むうちに、「これは小説なのか、作者の物語なのか」という疑問が、何度も浮かんだ。解説によると、自らの人生を投影した人物(主人公のアンナとその夫)なのは明らかだが、そのほかの設定は、作者が創ったという。解説には、本書の後に書かれた『ある家族の会話』についても書かれている。どちらの作品も、飾り気がないのに、品があり、(『ある家族の会話』は、ユーモアもあり)とても、素敵な作家だと思う。

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紙の本

紙の本階段を下りる女

2017/10/29 07:02

一枚の絵にまつわる物語

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み進むうちに、 一枚の絵画に、これほどの物語が、人間関係や時間が絡まっていることに驚いた。考えてみれば、一人の人間にも、人生にも、物語はある。それを物語にすることが、小説だとすれば、一枚の絵は、何を示しているのか。その背後には、いろいろな物語が存在し得るのだと、生々しく気がついて唖然としたような感じだ。

絵画の不変性と老いゆく人、変えられない過去(の失敗)とそこから遠く離れてしまった現在(老境)という対比が、絶妙に混ざり合い、主人公を含む四人の人生が語られていく。

この小説の、一枚の絵にまつわる物語は、主人公が、過去を思い出すことで、語られるため、どこか、浄化されたように、澄んでいる。反面、若々しき頃の自分の姿とともに、苦々しい思いも思い起こすことになる。年を取った主人公の前に、偶然、再び姿を見せた絵画のなかの女は、若いままである。

  絵画や過去、孤島などの設定もあり、時の流れが、日常と異なるような感覚になった。そのような感覚が、老境という現実と奇妙に巧く溶け込むように描かれている。最後には、<無償の愛>について考えさせられた。死を受け入れる覚悟をした人を、主人公は、ただひたすら、愛を持って、介護する。そこには、無償の愛しかないだろう。

苦い過去ー目を伏せて、記憶のどこかに片付けたいが、そこには、大切な大きな思い出、その時を経てこその、今の自分といえるようなものがあることも、心のどこかで、気付いているーに、いまひとたび、目を向けて、直視してみる力をもらえる小説かもしれない。老年の主人公は、大切な人や身近な人の死を経験し、遠い過去と現実と対峙することを経て、これからもう一つの人生を歩んでゆくのだろう。おそらく自分のための人生を。

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紙の本

紙の本月の三相

2023/01/19 16:16

重層的で知的な物語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言葉の選び方が知的で、美しく、イメージの描写がとても繊細。ゆっくり、味わいながら、読み進めたくなるような作品。

 西洋絵画の知識があることで、小説をより楽しめる。

 時間と空間を意識させ、不変と可変、形あるもの(身体、面)と形なきもの(想いや言葉)などが、ある秩序を保って織り込まれ、物語を成していく。一方で、時間の歪みと隙間が、見え隠れする。また、芸術作品(面)と現実の境界の歪みから零れ落ちるように現れる世界を辿ることになり、面と身体の在り方を考えさせる。
 ひとつひとつの手触りを確かめるように、また、隠された意味を探るように、丁寧に読むことができる。

 前作と同様に、現実と非現実の織り交ぜ方が巧みで、また、前作以上に、非現実を成立させる仕掛けや描写が精巧だと思わされた。素晴らしい作品。

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紙の本

第一部の裏側の物語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第 一部において描かれた時間を、主人公が別の視点から見直して、描いているのだが、第一部では、美しさやロマンスの雰囲気を醸し出していた物語の、いわば、裏側を垣間見るようである。
アレクサンドリアという都市が、ヨーロッパ化された、中途半端さを持ち、また、ジュスティーヌの策略のような罠を、主人公は、知ることになる。それでも尚、ジュスティーヌが、この土地が生み出した独特の女神のように描かれているのが、面白い。
また、最終部で、時間や記憶について、芸術作品と作家の現実的な生活についての言及が、登場人物らの意見や引用を用いて、主人公の探求として、曖昧に記されるところにも、巧みさがあると思う。
人生の、もっとも濃密な時間を、振り返り眺め描くことでらこのような幾重にも重なる物語となることに、興味深さと、力強さのような魅力を感じる。
最終的に、記憶とは、過去とは、芸術とは、芸術家の生とはというところに、辿り着くのだが、それらの問題に対する答えのなさが、この小説の面白く、素晴らしいところだと思った。

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紙の本

紙の本二都物語 下

2017/06/24 03:23

不朽の名作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フランス革命時という舞台で、その時代の様子と、個人的な苦悩や葛藤の物語が、どちらかに偏ることなく、巧く描かれ、飽くことなく読み進められる。その一時代の、個人と社会の問題に物語性を持たせて、面白く読むことのできる作品。

それぞれの個人の出自や家族のストーリーを軸にしながら、反面、客観的な視点で、世の不条理が、示される。ダイナミックな舞台設定と、個人的な情が、巧妙にバランス良く織り交ざることで、ごく自然に、しかし、映画のように、読むことができる。

読んでいる中で、何度も、ユーゴの『レ・ミゼラブル』を思い出した。しかし、舞台がロンドンとパリを行き来する二都であることと、革命によって弾劾される側に関しても、平等ともいえるまなざしを当て、人間味ある描き方している。

 とにもかくにも、練りに練られた構成のもと、物語が絡まり合いながら、次第に繋がり収束していく様は、見事としか言いようがない。

(格調を損なわないが、理解しやすい翻訳が、物語の面白さを伝えてくれたことで、読書がすすんだように思う。また、解説が、興味深く、ディケンズの生い立ちなども書かれ、作品との関連性なども、解りやすかった。)

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紙の本

紙の本聖火

2017/05/15 05:42

時代を感じさせないテーマ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

無駄のないストーリーが、わずか三日の出来事を、一日に一幕を当てて、展開される。推理小説仕立てであることも手伝い、一気に読んでしまった。ただ、犯人を探して落着するのではなく、最後の場面は、感動を呼ぶ。

また、短い時間のなかに詰め込まれたテーマは、この時代の作品だとは思えない。今もって、ここに描かれているテーマを考えることは、まったく、時代錯誤ではないことに、驚く。

これまでに読んだモームの作品の中で、これほど、自由な、女性像や男女の関係が、描かれているのを読んだことがなく、その思想に、意外さと驚きと、興味と敬意を抱いた。

(解説にもあるが、戯曲として、舞台で演じるのを見るよりも、もしかしたら、文字を目で追う形で、読む方が、楽しめるのかもしれない。)

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紙の本

紙の本虹いくたび 改版

2016/05/13 05:21

美しい日本語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

以前にも、一度読んだことがあったが、やはり、日本語の美しさと、その世界観の綺麗さには、溜息が出る。改めて読んでみると、他者との距離感が、現代とは異なるように感じた。

なかでも、女性のしぐさや振る舞いが現代とは異なり、一見すると、しおらしさだけが、目につくようだが、凛とした強さが見え隠れする。登場する女性、それぞれが、底にある強さやしなやかさ、したたかさ、プライド、そのようなものを、心に抱え、支えられ、突き動かされているようだ。その様子が、日本人らしく慎ましやかで、美しい。
 
 このような美しい日本語と、日本人にしかないような<間>が、美しく存在した世界が、眩しいような、羨ましいような、切ないような、また、懐かしいような気持ちになる。

 折につけて、何度も読み直したいと思った。

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紙の本

紙の本容疑者の夜行列車

2016/04/28 17:47

孤独のなかの遊び

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

主人公「あなた」は、独りで、旅をしている。というより、事が予定通りに運ばず、旅をすることになる。

 社会や他者に感じるちょっとしたずれ(違和感)というのは、日々のなかで、誰しもが少なからず感じると思うが、それを特化したような物語だと思う。それは、独特だが、密やかに愉しい。孤独で詩的な遊びのようだ。主人公が「あなた」というのも、なんとも面白い。

 多和田葉子の作品は、いつも、、決まりきったことから、なにかしら、ずれている世界が描かれている気がする。それが、主人公の意図によるものだったり、意図に反してだったりするが、私は、後者の方が好きなので、本書を面白く読んだ。

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紙の本

紙の本いつも彼らはどこかに

2016/01/07 17:37

独特の世界と存在感

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ひとつひとつの物語の世界が、独特で、短い物語なのに、そのひとつひとつに存在感がある。作者の思いや信念のようなものさえ、伝わってくるようだった。特に、動物が主役というわけではなく、主人公は人である。
それにしても、作家という仕事に手抜きをしない著者を、素晴らしいと思った。

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紙の本

紙の本軍帽

2015/07/28 05:15

フランスの空気

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

少し、世界観に入りづらいときもありましたが、波長が合えば、一息に読むことができました。 

時代的なものを含め、「いかにもフランス!」、と思わせる作品だと思います。

 男女の関係や、物の見方の相違、 年齢の違う女性同士の心模様など、当世風なところはあるとはいえ、とてもフランス人らしく思われ、それでも、どこかで、共感し、理解できる面白みもあります…

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紙の本

紙の本森のバルコニー

2023/11/20 16:23

詩的な世界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

〈自然〉のなかで行われる戦争(準備、待機、敗北)を描いた物語ともいえるだろうか。
 戦禍の悲惨さや暗さ、虚しさよりも、人の営みや自然の移ろいに目を向け、途切れることなく流れる時間を描写しているように思う。決して非現実的ではなく、こういった側面から見た現実もあるだろう。
 自然の無関心さと泰然さ、人の生の行き着くところを、丁寧に見つめることを通して、詩と共に、詩の美しさと共に在ることを知らされるように思った。

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紙の本

紙の本百年の散歩

2020/03/17 03:18

現代詩のような短編集

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言葉遊びが、ところどころに散りばめられた現代詩のようであり、しかし、エッセイのような、一つずつの物語になっていて、とても面白い。

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紙の本

紙の本不時着する流星たち

2019/06/30 06:16

はみ出した者らの物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

片隅に居るようなひとや、片隅にあるような物語が、ひっそりとだが、強く存在していることを、想像させてくれるような短編集だと思った。
ささやかに生きることを、あるいは、片隅に目を向けることを肯定することで、世界は、肯定的な広がりや、やさしさ、面白みを持つのかもしれない。

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