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H2Aさんのレビュー一覧

投稿者:H2A

467 件中 31 件~ 45 件を表示

鹿島茂最高傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

怪帝とは誰か。2月革命の果実を奪い第2帝政を引いたナポレオンの甥、ナポレオン三世。時代遅れの帝政でさぞや不便な時代かと思いたくなるが、実際にはフランスの産業界、経済界が勃興しはじめた時代だった。パリ大改造を成し遂げ、国内の鉄道網を整備し、後のベルエポックを準備した男。サンシモン主義者でユートピアを夢見た最後の皇帝。その最盛期はプロイセンのビスマルクの術中にはまって始めてしまった普仏戦争によりあっけなく終わる。この人の生涯を辿ると「なぜ?」という言葉を連発したくなる。掴みがたいが、凡庸な人物とは程遠い人物である。この本は鹿島茂の最高傑作だと思っている。

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『鳥』他を収録

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『さんしょうっ子』『きつねの窓』、それに何といっても『鳥』を収録。『鳥』は中学校の教科書に載っていて、作者名も作品名も忘れてしまいネットで偶然発見したものだったので、とてもうれしい買い物だった。海辺で繰り広げられる少年少女の恋愛物語で、中学生には強い印象を与えた。カーテンが風になびく擬態語が「しゃらっと」だったり感覚が瑞々しく大人が読むと身につまされる。ほかの短編も日本古来の素朴な文化に乗っていて、どれも良い内容で、作者のエッセイも収録された本格的な本づくりで評価できる。

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紙の本門 改版

2024/04/21 23:23

『それから』の後?

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『それから』の代助のその後が宗助とは思わない。物語的起伏もなくわびしい生活感、孤独感、閉塞感にずっと浸されていて、前作の息苦しさは諦念と化している。しかしお見事。漱石のこの地味な小説は素晴らしい。

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紙の本ルバイヤート トゥーサン版

2024/03/30 23:27

名作の新訳版

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『ルバイヤート』には多くの訳があるようで、フィッツジェラルド英語訳からの重訳であったり、原典訳も岩波文庫のものが古くからあってこちらは長年愛読していた。収録数は170篇と岩波文庫版より多いが、散文訳なので各篇で長さが大きくちがう。そればかり酒姫(サーキー)という存在がこちらには女性になっている。仮名遣いも多少気になる。でもこの版も読みやすく、退嬰的に見えて警句も鏤めた独自の作風はよく伝わっている。装幀も綺麗なので良い本だと思う。

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紙の本伝道の書に捧げる薔薇

2024/03/22 20:22

傑作!

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『十二月の鍵』『この死すべき山』『伝道の書に捧げる薔薇』『超緩慢な国王たち』『聖なる狂気』、それ意外にもどれもゼラズニイ初期にして最盛期の中編、短編がぎっしり収録された珠玉の一冊。非科学的・感情的だなどと言うのはたやすいが、それでもこれらの作品のいわばノンシャランな輝きには比較するものがない。この時期のゼラズニイはそうした唯一無二の作家だった。くれぐれも
品切になる前に読むことを勧める。

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紙の本コーマルタン界隈

2024/02/23 16:20

都会の隅の市井たち

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パリのデパートが並ぶ目抜き通りに近いコーマルタンコーマルタン通りに住まう日本人教師の連作短篇集。既読の2篇を抜かせば『エヴァ』『犬を連れた女』は特に良かった。かっこよくない細々した生活感が横溢した、冴えない滞在生活。そのアパートメントを引越しで去る時にもさようならを言ったのは近隣映画館のスタッフ一人だけというのもいかにも寂しいが、その打ち解けなさもわ背伸びしていない好感も持った。華やかなイメージのパリだが、ここに出てくるのは平凡で都会の中でひっそりと自分の道を歩んでいるような地味な人々であった。

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紙の本夜鳥

2024/02/18 17:15

残酷な切れ味ある短篇集

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江戸川乱歩、夢野久作はじめ昭和初期の作家たちのルヴェル評が後書きとして多数収められている。が、そこでたびたび指摘されるヒューマンタッチという形容には賛成できない。ペーソスとか残酷という形容ならまあなるほどと思うが、この作者の独自性は読者を突き落とす残酷さにこそあるように思った。好き嫌いで言うとかなり好きな作風。どの作品も簡潔で凝縮されて無二の切れ味。各篇はせいぜい10ページ程度の長さしかないので、300ページ程度のこの本に31作も収録されている。これはおすすめ。

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紙の本白鯨 中

2024/01/11 08:14

マッコウクジラの蘊蓄

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物語は中盤でようやく航海も落ち着いて、マッコウクジラの生態的な蘊蓄が語られ、当時の捕鯨の模様が読者の前で描かれる。ここまで来ればもはや退屈と感じないのが不思議。スターバスタッブスタッブは航海士、狩人として描かれ、フェダラーという謎めいた存在も現われてかなり不気味。他の捕鯨船とも何度か遭遇し、モビー・ディックという伝説の白い鯨の存在がしだいに明らかになり、エイハブ船長の狂気は冷たく燃えさかる。

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電子書籍白鯨 上

2023/12/24 19:10

新訳だとこんなにも読みやすいのか

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かつて新潮文庫版で挫折したのを新訳で再挑戦。最初のクジラについての文献拾遺からして読みやすく、丁寧な解説にくだけた訳文まで加われば面白くないはずがない。エイハブの狂気の片鱗とモビー・ディックの神秘的な獰猛さにぞくぞくする。

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紙の本花を運ぶ妹

2023/11/30 02:49

パリ、そしてバリ

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画家として暮らす兄のテッチと妹のカヲルが交互に語る小説。軽いところも残す文体は完璧とも言えないが、この小説はおもしろい。テッチがヘロイン中毒に茫洋としていたことで川で溺れた子供を救えず、その自責の念で「幼い悲しみの天使」に憑かれてヘロイン中毒にますます溺れ、その禁断症状の描写が生々しい。テッチがタイで出会う戦争未亡人のアンとその子供タインとの交流や、彼にヘロインを教える欧米の欺瞞を体現したようなインゲボルグの誘い。高校の頃に妹を描いた「花を運ぶ妹」という絵がその後のテッチの道を道を決め、彼の語りは過去へ過去へ辿る。
 カヲルは罠に嵌って逮捕された兄のために、懸命に伝手を探し援助を取り付けて、最後は大変な幸運も手伝って兄を救い出すことに成功する。そして兄が囚われたバリという土地を、はじめは忌み嫌い次第にバリという土地の比類ない魅力に惹かれて行く。
 魅力的な小説。

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紙の本HHhH プラハ、1942年

2023/11/23 16:01

ヒムラーの脳はハインリヒと言う

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このドイツ語の単語の頭文字を並べた題名からして人を食っている。この著者はくせ者で小説の題材を「歴史」に求めながらもその創作過程そのものを書いてしまう。その歴史の場面を再現しながらいきなり冷静な観察も述べてしまう。非常に個性的でおもしろい作品。

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紙の本放蕩の果て 自叙伝的批評集

2023/10/14 17:02

「放蕩」の意味は

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福田和也の最新巻。コロナ禍を挟んで最近の批評、雑記文が選ばれている。私的な内容が多く、それは以前の過剰なアナーキーな先鋭さを失くして甘美さに寄り添うような内容。自身の父や仕事や「放蕩」の盟友たちの多くを亡くしている。師匠格であった江藤淳や彼の先達であった人物たちへの臆面もない賛辞もここには見える。
 この人の言う「放蕩」がいったい何なのか、と考えてみる。『ジル』をまた読みたくなるだろう。

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紙の本母なる夜

2023/09/29 12:30

何という世界で彼らは生きようとしているのか

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アメリカ側の工作員としてアメリカ人でありながらナチスに迎合し、その広報官として要人にまで登りつめ、戦後に戦犯としてイスラエルで裁判を待つ身になったハワード・キャンベル・ジュニア。ナチスに対しては共感はなく、しかし様々な思想、主張がごった煮になっているアメリカの欺瞞も強烈なカリカチャーとして描いている。「まったくーこれが人間の生き方なのだ。/まったくー何という世界で彼らは生きようとしているのか!」という一節もあるように、何が何に優越しているということを彼は認めることができない。死を望んでいても、彼を諜報員に仕立てたワークネンが亡霊のように現われて彼の命を救い出す。ほんとうに彼が「スパイ」だったのかどちらも同じようなものと思えてくるような、どこでもないような境地に達してしまう。後年のヴォネガットの萌芽もここに間違いなく見える隠れた名作。

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紙の本ギリシャの誘惑 増補新版

2023/09/23 06:55

ギリシャは幸福のトラウマ

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著者は70年代の後半にギリシャに住んだ。アテネだけでなくて無数にある島々、クレタ島、サントリニ島・・・を気ままにたずねた時の記憶を辿る。地中海という世界を巡った思考もおもしろいが、これはいい意味で池澤の「ギリシャ」を伝えてくれる。内容は全然系統立ってはいないしたぶん偏っていて、ガイドブックとして良いものとは言えないがこれは好著。ギリシャが著者にもたらしたという幸福のトラウマを味わってほしい。

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紙の本神曲 天国篇

2023/09/10 00:27

語るに余る天界を静かに見せる天国篇

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天国篇は正直に視覚的にはイメージしづらいところが多い。それでも天界に上がって浄罪されているはずなのに堕落した俗世間への批判、フィレンツェへの怒りが最後まで語られずにいられない。天界ではヴェルギリウスにかわってベアトリーチェが、ここではもうダンテの母のように彼を導き励ます。無数の天使に出会い、フランチェスコ、ペテロたち、昇天した歴史上の聖人たちに議論さえする。至高天にいたる十の天をベアトリーチェに誘われて生きた身のままに上昇していく。至高天ではマリアに出会い、とうとう神を垣間見る。その調節的な存在が世界全体を動かしていることを語って壮麗な言葉の旅を静かに終える。当時想像し得る最高の世界像を描いたのだと思う。

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