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  3. ミケ子さんのレビュー一覧

ミケ子さんのレビュー一覧

投稿者:ミケ子

28 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本くろねこかあさん

2004/10/04 10:47

白と黒の、この上なく愛らしい世界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 白黒で表現された、猫の親子。
シンプルながらも、切り絵ならではのアイデアで
見る者をぐーっと惹きつけます。

 黒猫かあさんのお腹から生まれた子猫は、白猫3匹と黒猫3匹。
黒猫かあさんのお腹から切り取られた黒猫3匹と
お母さんのお腹の上に抱っこされるように切り抜かれた白猫3匹は
そう、同じ形をしています。

お母さん猫のお腹にくっついて母さん猫になめてもらう白い子猫3匹と
もうさっきなめてもらって、満足そうな黒い子猫3匹。

スズメを狙う母さん猫の背中に怖々隠れ見ている白い子猫3匹と
母さん猫の横に並んで一緒に見ている黒い子猫3匹。

黒いお池に落ちて慌てる白い子猫3匹と、
急いでお母さんに知らせようと慌てる黒い子猫3匹。

とにかく、この6匹の子猫たちが次の何をするか目が離せません。

 装丁がいかにも赤ちゃんの本、といった感じなのですが
小学校3年生の息子に「読んであげようか」と言うと
一瞬だけ照れた顔をしたものの、本を開いたとたんに
パッと目が開いて、読み進めるにしたがってジリジリと
にじり寄ってきました。

 おかあさんとあかちゃん、という組み合わせは、幸せの象徴であり
まわりの人にも安心感を与えるのでしょうか。
読んでもらっている子どもたちもさることながら、読んでいる大人の方が
きっと癒される一冊だと思います。
 
 息子たちも小学校になったし、今更ねぇと、いままで買うのを
見送ってきた絵本ですが、やっぱり今更ながら買ってしまいました。

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紙の本

紙の本翻訳夜話

2004/07/23 01:06

翻訳家をめざしてなくても、村上春樹小説のファンなら満足できる一冊

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私は村上春樹の小説が好きで、実はこの本も数年前から手元にあった。
でも小説じゃないから、すぐに読む気になれず、そうこうしているうちに
存在を忘れてしまっていた。
 何か読むものないかな〜と、本棚を物色していて「あ、こんな本があったのを
忘れていたわ。」と思って読み始めたのだけれど、これが面白い。
今まで、村上春樹の小説は読んできたけれど、翻訳の方はほとんど読んでいない。
レイモンド・カーヴァーも1,2冊本棚にあるけれど読んでいない。
村上氏が翻訳した絵本『急行「北極号」』『魔法のホウキ』『西風号の遭難』や
山本容子さんの銅版画のカポーティの『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』
『おじいさんの思い出』は大好きな本たちだ。しかし、どれも子どもの本屋で
見つけて買ったもので、いわゆる大人を対象とした一般小説の翻訳物は、どうも
違和感があって今まで読めなかった。
 この「翻訳夜話」を読んでみると、う〜ん、これは彼が翻訳したものも読んでみたいゾ、
と思ってしまう。夕方、この本を読み終わって夕刊を開いたら、タイムリーにも
<「社会の手触りを」を描く 『レイモンド・カーヴァー全集』完結>
という見出しが大きく出ているではないか。村上春樹氏の写真つきで、大きく
取り上げられていて柴田元幸氏のコメントまでついている。
ますます、彼の翻訳物も読んでみようという気になってきた。
 
 この本の中に、柴田元幸氏と村上春樹氏が同じテキストを翻訳しているものが載っていて
とても興味深かった。もうこれは完全に好みの問題だと思うけれど、私はやはり村上氏の
訳のほうに惹きつけられる。本書の中で、訳者が違うことによって作品から受けるイメージが
違ってしまうということについて、それは音楽と同じで、たとえばベートーベンの曲を
いろいろな指揮者や演奏者が演奏して、その中で自分の肌に合う解釈を選ぶということが
できるといいと書いてあったけれど、なるほどそういうことかと腑に落ちた。
 実は「ライ麦畑でつかまえて」も、村上訳はまだ読んでいない。学生の頃読んだものと
イメージが違ったら、なんだかうろたえてしまいそうな気がして。でも音楽と同じだと
言われたら気が楽になった。今度「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も読んでみよう。

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紙の本

紙の本輪違屋糸里 下

2004/06/23 19:42

男はみんな、女から生まれた。女は葦のように、しなやかで強い。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 常套手段とはいえ、こんな場面で上巻が終わっていることに苛立ちを感じながら
はやる気持ちで下巻を手にした。

 糸里は「土方はんは踏み絵を踏まはったんどす。ほいで芹沢先生と仲良う
でけるのやったら、それでええのどす。」という。
どこまでも土方の為にということらしい。
惚れた弱みというか、いじらしいというか、流石というか。
国の行く末を左右するような動乱の時代に生きあったものたちは、男も女も
肝が据わっている。

 芹沢鴨に角屋の前で無礼打ちされた島原の音羽太夫も、土方歳三を想いながらも
土方と結ばれることなく、そして桜木太夫になった糸里も、我が身の内に子を
宿しながらも、その子の父親である新選組隊士・平山五郎を殺めた、島原の天神・吉栄も、
壬生で新選組の屯所となった八木邸のおまさも、同じく前川邸のお勝も、
傾きかけた老舗・菱屋を、妾でありながら建て直したにもかかわらず、太兵衛に
裏切られたお梅も、武士よりも武士らしくありたかった、近藤を始めとする
多摩の百姓たちも、水戸天狗党の看板を背負った尊皇攘夷の権化、芹沢鴨も、
時代に翻弄された人生でありながら、みな一生懸命に生きた。

 生きるために必死で生き、そして死ぬためにも必死で生きた、その生に対する
それぞれの誠実さを誰も責めることはできないだろう。

 タイトルが『輪違屋糸里』というだけあって、時代の激流を泳ぎながらも
次の世代に生を繋ぐ女たちの、腹の底からの唸るような叫びが聞こえる。
音羽太夫、糸里、お梅、おまさ、お勝、それぞれの啖呵は見もの。
糸里が天神から太夫に上がり、三本歯の高下駄を内八文字に練り歩く、
桜木太夫としての初道中の場面に、込み上げるものを抑えることはできない。

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紙の本

紙の本輪違屋糸里 上

2004/06/23 19:21

期待していたものとは違った、また別の期待

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ミーハーな新選組ファンの私は、「輪違屋」などという文字を見ただけで絶対に飛びつく。
これはもう、条件反射のようなものだ。ついでに言うと「角屋」という文字にも弱い。
数年前、まずはじめに母性本能をくすぐる沖田総司に入れあげ、『沖田総司』(大内 美予子著)、
『沖田総司恋唄』(広瀬 仁紀著)、『沖田総司・おもかげ抄』( 森 満喜子著)、
『新撰組一番隊』(童門 冬二著 )などを読み漁り、つづいて『新選組血風録』(司馬遼太郎著)の
「沖田総司の恋」の章を何度も読んでは涙し、ついでに他の章も読んで、こんどは
『燃えよ剣』(司馬遼太郎著)で土方歳三に惚れこみ北海道は五稜郭にまで
行ってしまった。
引き続き、『幕末新選組』(池波正太郎著)や『近藤勇白書』(池波正太郎著)、
『バラガキ』(中場 利一著)なども読んだが、どれをとっても沖田や土方や近藤たち
新選組が主役で、かっこよく描かれている。

 この『輪違屋糸里』も、「土方歳三にひそかに思いを寄せていた島原の芸奴の話」と聞いて
そりゃぁ、土方と糸里のロマンチックな物語を想像して、期待して読みはじめた。
ところがどっこい、これは芹沢鴨とお梅の話ですか?とでもいうような話の展開で
当然、これまでに読んできた新選組関係の小説では「悪者」の印象しかない二人の
意外な描かれ方にびっくり。
とはいえ、今年の大河ドラマ「新選組!」でも、やっぱり芹沢鴨は魅力的に描かれており
少しばかり芹沢に心許していた私なので、この物語りも、なかなかイケるかも?と
最初とはまた違った期待に胸が膨らんでしまった。

 この小説で面白いのは、色々な人物に自分の胸の内や裏事情などを、長々と
語らせていることだ。おかげで今まで謎だった、それぞれの人物の行動や出生などが
あきらかになり(どこまで史実かわからないが)、そうなると、策士・土方歳三の
言動がいちいち非情に感じて憎らしくなる。
そんな感情が芽生え始めた頃合を見計らうかのように、土方に思いを寄せる
島原の天神・糸里に、そうと知っていながらも土方は、芹沢鴨の世話係である
平間重助の女になるように言うのだ。
んっまぁーーーーっ! なんて男でしょ! と読者の私の感情を煽ったところで、
下巻へつづく、なのである。
上巻を閉じたとたん、下巻を引っつかみ表紙をバッとめくった。

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紙の本

紙の本雨はコーラがのめない

2004/06/23 14:20

思わずクィーンのCDを買ってしまった。そしてクィーンを好きになった。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を読む前、私は「雨」を自然現象の「雨」だと思っていた。
思っていたというより、当然、というかそれ(自然現象)以外のものであるなんて
思いもよらなかったという感じ。
「雨はコーラがのめない」という文の主語としては「雨」は何か生き物であるのが
普通なのだけれど江國さんの感性で擬人化された表現なのだろうと思っていたのだ。
だから、読み始めてからやっと、どうもヘンだと気づいた。
「雨」は江國さんが飼っているアメリカン・コッカースパニエルの名前だ。
「雨は、いつものように庭にでるべく走ってきてふいに止まり、そのままじっと、雨をみている。」
そんな文章を読んで、私はフフフッと笑ってしまった。

 この本は、大和書房のホームページで連載されていた江國さんのエッセーをまとめたもので
雨と江國さんと音楽のことを書いている。
村上春樹の小説とかエッセーとかを読むと、いつも沢山のミュージシャンや歌のタイトルが
出てくる。それらのほとんどを私は知らなくて、だから、余計に村上氏の文章は大人の匂いがする。
ところが江國さんのこのエッセーに出てくるミュージシャンは半分は知っているミュージシャンで
今度は、江國さんをまるでお友達のように思ってしまう。
たぶんそれは、村上氏は私より少し年上で、江國さんは私とほとんど同じ時代を生きてきたという
ただそれだけのことだと思うけれど。

 クィーンの話題になれば、昔クィーンは嫌いだと決めつけていた頃のことを、
ビートルズの話題になれば、ジョンが凶弾に倒れた時、教室で喪に服していたクラスメートが
いたことを、ロッド・ステュアートの話になれば、「セイリング」を聴きながら
レガシィ・ツーリングワゴンに乗ってみたかったことを、ビリー・ジョエルの話がでれば
私も「PIANO MAN」を聴いたら、懐かしいニューヨークに連れて行かれてしまうということを、
本当に、色々な思い出を、本に向かって喋り出してしまいそうな自分に気づく。
たぶん「雨」という文字が、薄いベールのように、私を包んでしまうからだろう。

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紙の本

紙の本月の森に、カミよ眠れ

2004/06/23 13:57

自然は理路整然と存在し、人間の情を受入れてくれない。両者は共存できるのか。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 娘は夫がおそろしい大蛇だとわかった後も愛し続け、子を産んで育てたという
九州の祖母山に伝わる『あかぎれ多弥多(たやた)伝説』に強く心ひかれて
上橋さんはこの物語を書いたそうだが、この話を読みながら、蛇ガミと娘の婚姻伝説を
昔どこかで聞いたことがあるなぁと、懐かしく感じた。
私は九州の出身なので、小学生の頃「九州の民話」とかいう本を読んだのか、
祖母が布団の中で私に語って聞かせてくれた話のひとつなのか、
はたまたテレビのアニメ番組で見たのか定かではないけれど。

 カミが守る自然とは、人間が生きるためにあるものなのか、それともカミにとって
人間は自然の中のほんの小さな一部分でしかないのか。カミとは何なのか。
朝廷への「租」のために、苦しい生活を強いられるムラの人々は、
自分達の生活のためにカミの土地を開拓していくことを望む。
そのカミの土地にしか稲が育つ場所がないからだ。
死ぬか生きるかの苦しい生活をしているムラの人々は、自然のバランスが
崩れるからという理由でカミの土地で稲作をすることを許さないカミを
信じなくなっていく。
目の前で死んでいく我々を見捨てるのがカミなのかと。
それは、カミではなくオニであると。

 人間の生死の尺度で計れるほど、自然の生死のサイクルは短くない。
いくら人間に想像力があるとはいえ、その二つを添わせるのは案外難しい。
人間に、情と欲とがあるかぎり。

この物語には、宝石の原石のような力強さがあると思う。

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紙の本

紙の本娼年

2004/05/24 10:34

「娼年」というタイトルながら、少女のように心震わせる女たちに目が吸い寄せられる

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「娼年」というタイトルが、目に飛び込んできた。
電車で居眠りをしていて、ふと目が覚めたそのときに。

 少女漫画「正しい恋愛のススメ(一条ゆかり)」を読んだことがあるので
あんな感じで美少年の男娼が出てくる話かな、と思って読み始めた。
そう、その通りでした。
美少年(美かどうかわからないけど)が、ふとした好奇心から男娼になり
普通のホストクラブなどには、たぶん来ないであろう種類の女性たちを相手にする。
 タイトルが「娼年」だから、20歳の大学生リョウが主人公の、ひと夏の成長物語であると
思うのだが、私はリョウが相手をした女性たちの方に意識が流れていった。
それは私が女性だからかもしれない。
男性作家の描いた女性なのに、これほど彼女たちの哀しみのようなものが私の心に
沁みてくるのが驚きだった。
名のある男性作家の描く女性像というのは、今までちっとも心に響かなくて
「何なの、コレ。」という感じで反発を覚えたものだ。
女性が女性を描いた時もまた、特に官能的な場面は生臭い感じがして私は好きではないのだが
この小説の中の女性の描写には生臭さを感じなかった。
女性が知っている女性というものを、生臭くなく、まるで少年のような透明さで描いていると思う。

 陽炎のような、水のなかでゆらめいているような、そんなつかみ所のない印象の中で
(つまり、そのことで登場人物すべての不安な心の揺れを感じ取れるのだが)
ひときわ実在感を持って迫ってくるのが、リョウの大学の同級生メグミだ。
あの、断定的な物言いは、「常識的」すぎて、逆に何かに取り憑かれているような狂気を感じた。
「きっとリョウくんも、いつかわたしに感謝するようになる。
わたしはすべてリョウくんのためにやるんだからね。」
とたたきつけるように言ったメグミの姿は、そのまま子どもに対する母親の姿と重なって怖かった。
リョウが男娼として売れっ子になりダブつくほどのお金を稼いでも、金銭的な感覚が
マヒしないようにとバーテンダーのバイトを辞めないのと同じで、メグミのその怖いくらいの
「常識的行動」もまたこの社会で生きているんだという実感を忘れないためにリョウには
必要かもしれない。

 石田衣良の小説は「うつくしい子ども」とこの「娼年」しか読んだことがないけれど
繊細なタッチがかなり読み心地が良いので、他の作品も読んでみたいと興味が湧いてきた。

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紙の本

紙の本きんぎょが にげた

2004/05/06 20:00

小さなお子様をお持ちの家庭にこの絵本は必需品

19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 以前、ほんの1年間でしたが自宅で絵本の家庭文庫をしていたことがありました。
そのころ息子の幼稚園で同じクラスになったとっても元気のよい男の子がいたのですが
その子のお母さん、それまで全く絵本なんて子どもに読んであげていなかったらしいのです。
日々の雑務に追われて、忙しい忙しいって、絵本を読もうなんて思ったことなかったそうです。
それが、ひょんなことから親しくなり、ちょっとしたきっかけから我が家の文庫に
遊びにきてくれるようになりました。
 どんな本を選んでよいやらわからないので、何かお勧めの本を教えて欲しいと
いうことだったのですが、この場での私の選書でこの親子のこれからの絵本との
かかわりが決まってしまうのではないかと緊張しました。
そして、私がお勧めした絵本がこの五味太郎さんの「きんぎょが にげた」でした。
ほとんど絵だけで、逃げたきんぎょを探すと言うシンプルな内容ながら、
子どもを惹きつけずにはおかない魅力のある絵本です。

 本の返却にきた時、そのお母さんが
「子どもが、こんなに笑いながら楽しそうに絵本を見るなんて、思いもよらなかったわ。
何度も何度も、読んでくれとせがまれて、『こんなのが、そんなに楽しいのかしら?』
と思いながらもゲラゲラ笑いながら楽しそうにしているので、ついつい何度も
読んでやったのよ。ホントにびっくりしちゃった。」
と仰ってくださったので、とても嬉しく思いました。
そして、五味太郎さんの絵本で他にいい本はないかしら、と言うので今度は
「きいろいのは ちょうちょ」と「ぐう ぐう ぐう」をお勧めしました。

 この男の子に限らず、この「きんぎょがにげた」はおはなし会などでも大人気で、
1、2歳の小さな子どもから小学校高学年の子どもまで一緒になって楽しめる絵本です。
もう、みんな身を乗り出してきて盛り上がるのです。

 夜寝る前に子どもと一緒にこの絵本を開いたなら、一度読むだけではすまないと
覚悟した方がよいでしょう。(笑)

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紙の本

紙の本精霊の守り人

2004/04/20 20:13

思っていたより面白かった

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 女用心棒バルサは偶然からその国の第二皇子チャグムの命を救った。
第二皇子の母は、皇子の命が狙われているからと、バルサに皇子の用心棒をしてくれるよう頼む。
この世「サグ」と、サグと重なるようにして存在する別の世界「ナユグ」。
100年に一度の干ばつ。その年に水の精は卵を産むという。
卵を抱えることになってしまった新ヨゴ皇国の第二皇子チャグム。
水の精の卵を狙う「卵喰い」。
スピード感溢れる展開に、手に汗握る。

100年に一度しか起らない出来事であるがゆえに、人々に正確にその事実が語り伝わらない。
政治に強い影響力を持つ「星読み」たちは、最初、自分達の世界しか知らなかったし
自分達の考え方を信じて疑わなかった。
しかし、石版に残された極秘の文、古代文字で書かれた文を読み解くことにより
自分達の間違いに気づく。星読みは、ちょうど同じ頃バルサと行動を共にしていた
最高の呪術師トロガイ(そのときはまだ敵対していた)から手紙をもらう。
「星読み」がその地位からくるプライドより真実を取ったというその潔さと気高さが
それまで私が持っていた「星読み」に対する「負」の感情を一気にひっくり返した。

 「サグ」と「ナユグ」の有り方が、とても日本的で私は好きだ。
この世(サグ)が「善」だけ成り立っているのではないように
別の世界(ナユグ)もまた「悪」だけで存在しているわけではない。
善と悪があってはじめてそれは「全ったきもの」であるという世界観が好きなのだ。

ある方向から見れば悪であることも、逆から見れば善である。
いろいろなものに影響され、私の中の悪の感情が善の感情へ変わっていっても
またその逆であっても私は私でしかない。悪も善も私の一部なのだ。

サグとナユグはそれぞれを必要としているし、星読みと呪術師もお互いを必要と
し始めた。善も悪を必要とし、悪も善を必要とするのだろう。
一つのものの中にある二つの、いやそれ以上の色々なもののせめぎ合いによって
この世のすべてが存在しているのだと強く感じた。

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紙の本

紙の本世界の中心で、愛をさけぶ

2004/04/12 20:16

朔太郎のおじいちゃんが好きです

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 表紙の写真がとってもいい。タイトルもロマンティック。
ちょっと読んでみたいと思った。
ん? 待て、待て。著者は男性?
ええ〜っ! 男が愛を叫んでるの〜?
と思ってちょっと引いてしまった。
その後、気になりながらもどうしても読めずにいた。
でも気になってるんだから、やっぱり読んでみようと
今になって手にとって読みました。

 少女漫画のよう。
そんなに悪くはないけど、なぜこれがそれほど話題になっているのか?
中・高生の恋愛って、こんなに上手じゃない。
気持ちは確かに朔太郎やアキと同じかもしれないけれど
こんなに上手に相手に自分を伝えられないよ。
100%皆がそうだとは言えないけど。
こういうの、純愛っていうのかな? なんか大人臭い。

もっともっと不器用で、情けなくて、上手くいかなくて。
上手くコミュニケーションが取れなかった分、
いつまでもいつまでも後悔して。
それでも私は、そんな不器用な恋愛をしたことを後悔していない。
朔太郎の祖父が言った言葉に納得する。
「人生の美しさというものは、実現しなかったことにたいする思いによって
担われているんじゃないだろうか。実現しなかったことは、ただ虚しく
実現しなかったわけではない。美しさとして、本当はすでに実現しているんだよ。」


 朔太郎とアキの関係は「好き」とか「愛」だけがクローズアップされすぎて
青春時代にどっぷり浸かっている人たちの特権である「可能性」が
描かれていないところにも閉塞感がある。もうちょっと趣味の話とか
友達のこととか、将来の夢の話もして欲しかった。
下校後だけならまだしも、授業中先生に注意されるくらいに
イチャついている二人って、世界が狭すぎる気がする。


「死」は辛くて哀しいもの。
残された者は、その悲しみを乗り越えるために「死」を美しく
浄化させる必要があるのかもしれない。でも、「死」をロマンティックにして
羨ましがらせてはいけない。
医学が進歩した現在、恋人が徴兵されて前線に送られることのない現在
(イラクの自衛隊派遣はあるものの)、ロマンティックな純愛を
実感するのは、なかなか難しいのだろうか。
恋人が「そこにいる」という事だけで満足できる、そしてそのことに
感謝できる世の中ではないよね、今は。
だから、小説の中だけでも「きゅーん」となりたい人が多いのかもしれない。

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紙の本

紙の本いちねんせいのいちにち

2004/04/06 22:42

ピッカピッカの一年生

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 今日は次男坊の入学式だった。
ピッカピッカの一年生だ。
明日からさっそくランドセルを背負って学校へ行く。
明日のランドセルの中身は筆箱と連絡帳のみ。
最初はみんなで挨拶をして、トイレの場所や職員室や保健室など
学校中を歩いてまわって、学校探検をするのだろう。
数日してからやっと授業と給食が始まる。

学校ってどんなことをするのだろう?
ボク、まだあんまり字も書けないし、お兄ちゃんみたいに計算もできない。
先生から怒られるかな?
でもやっぱり、明日学校へ行くのは楽しみだ。

 そんな次男にこの絵本を読んでやった。
読む前は、あんまり面白くなさそう…と乗り気でなかった次男も
国語の時間に自分の名前を書く練習をする場面で、「ねもと たくや」君が
「おれ、この じ きらいだよ。だって、ぐにゅぐにゅ まがってるんだもん。」と言ったり
「すずき ゆう」君が「ゆ」の字を書く時目が回りそうになると言ったり
「さかのうえ りょうたろう」君が11コも字があってイヤだと言うのを見て
なんだか嬉しそうにニヤニヤ笑っていた。

休み時間には、女の子たちが誘い合ってトイレに行く場面を見て
「なんで、トイレにみんなで一緒に行くんだよー。」と可笑しそうに言い
ボール蹴りをしていたしゅんちゃんが、転んで膝小僧をすりむいて血が出たので
保健室に行く場面では、心配そうな顔になったりしていた。

 他にも、体育の時間、図工の時間、算数の時間、給食の時間、掃除の時間など
学校生活の一日が描かれてある。
一年生の教室を描いているので、次男もきっとこの本を読んでもらいながら
その教室の中に自分がいるような気持ちになっていたのだろう。

 読み終わってからも、何度も何度も、「もう一回読んで」とこの本を持ってくる。
新生活の不安と希望とが混ざり合って、不安定なこの時期の一年生にぴったりの一冊。
まだ、ほっぺたがぷっくりと可愛い、そんな一年生が生き生きと描かれている。

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紙の本

「アグリー」が日本語になってるなんてブッ飛びました

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 インターネットの『ほぼ日刊イトイ新聞』で連載された人気コーナが
本になったものである。私もこのコーナーが好きで、いつも新しいネタを
楽しみにしていた。

それにしてもこのコピー!
「オレ的には アグリーできかねるんだよね」

 この「アグリー(agree)」という単語には思い出がある。
約20年ほど前、短大生だった頃。私の仲間内で「ワンス・アポン・ア・タイム・
イン・アメリカ」というアメリカのギャング映画が話題になったことがある。
(今でもこの映画は私のベスト1の映画であるが)
その映画の少年たちの会話の中に“agree?”と同意を求めたセリフがあった。
その言葉を発した少年が私好みであったことと、その言い方がカッコよかったことで
私たちも真似して、何か同意を求めたい時は「agree?」と聞くようになった。
(因みに私たちは普段日本語しか話さない日本人です。)
その後、アメリカに“agree”という商品名のシャンプーがあることを知った。
香りなども気に入ったので、夏休みを利用してアメリカへ旅行に行った時
友人へのお土産は、リクエストにお答えして“agree”のシャンプーだった。

その“agree”が日本語の「アグリー」になるなんて! 「テレビ」とか「ケーキ」
なんていう名詞ならわかる。でも「アグリー」を日本語として使うのは
どうなのよーーーー?
でもオトナはさらりと使いこなすんですね、この「アグリー」を。

 この本の中に出てくる様々なオトナ語は、ほとんど会社人語だ。
会社人以外の大人はあまり使わないんじゃないかなぁ? 専業主婦の私も
OL時代を思い出しながら読むと、「そう、そう、こんな言い方してた」と
思いあたるものがあるけれど、さすがに専業主婦歴が長くなると
最新オトナ語事情に疎くなってしまい、このコピーの
「オレ的には アグリーできかねるんだよね」
のようなものは「ウソでしょ? こんな言い方。」と思ってしまう。
でも投稿があるんだから、きっと普通に使われているんでしょう。

 それにしても、面白い。面白いけど日本語乱れすぎ。
とはいえ、このオトナ語を使いこなせなきゃ仕事にならぬ。
学生諸君も社会人になる前にちょっとこの本に目を通しておくと
少しは役に立つかもしれない。
それと同時に、新潮新書の『口のきき方』(梶原しげる・著)にも目を
通すことをお勧めする。

 この『口のきき方』の第4章「若者言葉の味わい方」を読むと、
どうも若者言葉の延長線上にオトナ語があるような気がする。
若者は、他者と深く関わることで自分が傷つくことを恐れるあまり
あいまい表現にすがり付き、そのあいまい表現を武器にすることを
覚えた大人は、オトナ語を駆使して相手を煙に巻く。

 人間は切羽詰ったら泣くのではなく笑うものだと誰かが言ったけど
(OL時代の先輩だったかな?)会社で使うオトナ語をネタに
これほど盛り上がって笑うって、大人も相当切羽詰ってる?
笑うといえば、同じく「ほぼ日」から出版された『言いまつがい』も
人の揚げ足をとったような内容だが、愛情を込めて相当笑える。

笑う門には福来るってことで、御一読下さい。

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紙の本

紙の本こんにちは、長くつ下のピッピ

2004/03/16 10:32

ようこそ、ピッピワールドへ

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 岩波書店から出版されている小学校中高学年向きの児童文学
「長くつ下のピッピ」の絵本版である。
 小学生の頃、大好きで何度も読んだ「長くつ下のピッピ」。
当時TVでもピッピの番組が放送されていて、いつも楽しみに見ていた。
岩波の本の挿絵のピッピと、TVのピッピ(アニメではなく実写)が
とてもイメージが似ていたので、その挿絵がオリジナルだと思っていた。
独特の画風で、私も子どもながらとても気に入っていたし。

ところが、その挿絵はオリジナルじゃなかったんですね。
今回、徳間書店から出版されたこの「こんにちは、長くつ下のピッピ」の絵が
オリジナルだったのだ。
イングリッド・ニイマンという人が描いているが、ピッピの生まれ故郷
スウェーデンでは、このニイマンの描くピッピこそが「ピッピ」だそう。
東欧・北欧の絵本の絵でお馴染みの、くっきり・はっきりした絵で
とても愛らしい。

 内容はといえば、岩波の小学校中高学年向きの本の美味しいとこだけを
詰め込んだ絵本になっているので飽きない。
私が子どもの頃から大好きで忘れられなかった場面ばかりが
ページをめくる度に、次々とあらわれて楽しい、楽しい。

何でも一人で出来ちゃう、たくましいピッピ。
想像力が豊かで、小さなことは気にしない、愉快なピッピ。

「えっ?」と驚くような、人が振り返るような奇抜なことを平気で
人目も気にせずやるのだが、それが決して「あくたれ」ではなく
一本筋が通っているからピッピは子どもたちから尊敬されるのだろう。

 この絵本が日本で出版されたことで、小さな子どもたちとも
この愉快なピッピワールドを共有することができると思うととても嬉しい。

 それから、この絵本の最後に着せ替え人形が付いていてこれまた嬉しい。
そのまま切り取ったらもったいないから、カラーコピーして使おうかな。
でも、コピー紙だとペラペラで遊びにくいなぁ。
そんなことあれこれ思い巡らしていて、ふと気づいた。
我が家の子どもは小学生(低学年)の男の子二人なのだ。
着せ替え人形なんかしないよね。
……。
実は、私がやってみたいだけなのである。

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紙の本

紙の本ぼくの・稲荷山戦記

2004/03/15 10:48

イマドキの子も、たまにはこんな本を読んで欲しい

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 先祖代々、裏山の稲荷神社の巫女をつとめるマモルの家に、
不思議な下宿人・守山さんがやってきた。
守山さんはM大学の院生で、専攻は考古学、専門は古墳だ。
中学校で地歴部に入っているマモルは、次第に守山さんの魅力にひかれていく。
そんな時、裏山にレジャーランド開発の計画があることを知る。
海や山や森を太古の昔から見守ってきた“存在”との出会いにより
“信じる”ということがどのようなものであるかを知るマモル。
そして、自然破壊から裏山を守ろうとする守山さんと行動を共にする。
守山さんの正体とは…?
そしてレジャーランド開発の行方は…?


 この物語を読み始めてすぐ「あれ? こんな話、前にも読んだことある。」と思った。
佐藤さとるが書いた幼年童話『ふしぎな あの子』とそっくりだ。
『ふしぎな あの子』は小学校低学年向けの本だが、その内容をもっと
深く詳しく描いたのがこの『ぼくの・稲荷山戦記』という感じ。

 主人公のマモルが中学生なので、この本の対象読者はたぶん
小学校5,6年生〜中学生なのだろう。内容的にはやはりこのくらいの
年齢の子どもが読んだ方がいいと思うが、描写があまりにも素朴なので
小学校中学年向けの読み物のような印象を受ける。
約20年前に出版された本なので、当時の中学生だったら読んだのかも
しれないが、果たしてイマドキの中学生がこの本を手にするだろうか?
ハリーポッターのようなスピード感溢れる物語は、ほうっておいても
子どもたち自ら本を手に取るだろうが、この「稲荷山戦記」は
ほうっておいたら、本当にほうっておかれそう。
とてもいい本なだけに、残念だ。
ぜひ、小学校の図書館の「今月のおすすめ本」などのコーナーで
紹介して欲しい本である。

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紙の本

紙の本ジャズ・カントリー ベスト版

2004/03/05 19:05

人との出会いで得る人生の糧

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 この小説は、ジャズに魅せられた白人の高校生トムが、大学に進学すべきか
大好きなジャズの道に進むべきか悩みながらも、出会った人たちに
影響を受けながら一歩一歩前に進んでいくという少年の成長物語である。
と同時に、ジャズの入門書としても若い人たちに受入れられるかもしれない。

 自分のトランペットの実力が世の中でどの程度通用するのかという不安と
大好きな音楽が黒人音楽であり、自分は白人ゆえにジャズの道で
やっていけるのかという不安から、トム少年はあれこれと思い悩む。

 前者の不安は、私たち誰もが抱く不安なので自分を重ねながら読むことができたが
後者の不安は、生まれた時から今の日本で暮らしている私にはちょっと理解するのが難しい。
いや、頭では理解できる。でも肌で感じたことがない事柄に対して、それでも相手の力に
なりたいと思うとき、その悩みと私の間には高い壁があり自分の無力を感じる。
所詮どんなアドバイスも想像の域を超えることはなく、トムのような少年に対して
自分が何も力になれないだろうことにショックを受ける。
キレイ事だけでは生きてゆけない現実を前に、黒人のミュージシャンや
黒人の同年代の友人との出会いでトム少年は何を学び、何を自分の糧にしていくのだろう。

 人生の中で人との出会いというのは他のどんなものよりも一番の宝物なのだ。

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