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koo±さんのレビュー一覧

投稿者:koo±

71 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本万能鑑定士Qの事件簿 1

2011/03/08 15:34

意外な掘り出し物に感激。鑑定結果は?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ふとラノベなミステリに手を出したくなり購読。装丁がちょっと恥ずかしい。作者は「催眠」や「千里眼」の松岡 圭祐。ちなみに「千里眼」という言葉は氏によって商標登録されているそうだ。昔「催眠」の1巻を読んでピンとこなかったので密かに敬遠していた。さて今回は如何に。

結論からいえば予想以上にGood。良くも悪くも漫画チックなのだが、とりあえず前者として捉えよう。キャラクター小説としては申し分のない面白さ。

主人公の凛田莉子が魅力的。博識の女性探偵というのも案外珍しい。劣等生だった過去とのギャップが功を奏してか、薀蓄も不思議と嫌味に感じない。「学校の勉強は苦手だが読書は大好き」そんなペダンティックでアウトローな少年少女に是非オススメしたい。きっと勇気と希望を与えてくれる筈。

リサイクルショップ「チープグッズ」の瀬戸内社長という存在も実にいい。上京間もない彼女を暖かくバックアップ。眠れる頭脳を呼び覚まし才能を開眼させる。ん、このパターンって・・・そうアレだ、大平 光代の「だから、あなたも生きぬいて」!

1・2巻セットで1エピソードになっているので、ストーリーやミステリ面としては現時点ではなんともいえない。一応、古典的なイカサマトリックや、とある事件の謎解きシーンもあるのだが、ウンチク重視で少々キレ味に欠ける。そこは悪い意味で漫画チック。鮮やかなトリックを求める類ではないかも。

今後、突拍子でもない方向に展開していくみたいだが、さてどうなることやら。シリーズ物なので回を追う毎に過去のエピソードが薄れて行くのは必至。「現在と過去とのギャップ」という飛び道具をなくして、ヒロインの魅力をどうキープできるかが明暗の分かれ目か。肝心の助手がイマイチ魅力薄なのも懸念材料。

ともあれ意外な掘り出し物に感激。☆マークは後編読後まで鑑定結果を保留としよう。さて、今宵はリサイクル書店に急がねば。

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紙の本なるほどの対話

2012/03/21 14:38

無理して書かんでええんとちゃう?

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

友人の紹介本。こういう場合、レビュー書くのに果てしなく神経使います。密かにあんなことやこんなこともありましたし。人が感銘を受けた本について述べるのは、その人の人生観について意見するのと同じこと。迂闊なことは書けません。悩みすぎてもどしそう。

だから今回はあまり持論は述べず、あっさりと「なるほど」程度に留めておきます。よって☆マークもなし。ご了承くださいませ。

では本題。ユング心理学(分析心理学)や箱庭療法を日本にもたらした心理学の第一人者、河合隼雄さんと吉本 ばななさんの対談集です。

河合:ぼくは、だいたい「はあ」とか「なるほど」ばっかり言うてるんです。それでいつも家内に言われる。「あなたは『なるほど』言うて、だいぶ金儲けしている」って(笑) (P258)

河合さんの著書「こころの処方箋」。若い頃に読んで感銘を受けた記憶があります。再読しようかな? ほのぼの温かい空気の中、「なるほど、なるほど」とばななさんを優しく包み込むように導く河合さん。そんなカウンセリング的で巧みな話術が印象的でした。

最後に一つだけ(右京さん調)。

河合:だから、ぼくらはときどき「なにも、そんなに無理して働かんでええんとちゃう」と言うときがありますよ。「あなたが生きているということが、すごいことなんだから」って。

~中略~

いま現代人は、みんな「社会」病にかかっているんです。なにも、社会の役になんて立たんでもええわけですよ。もっと傑作なのは、ただ外に出て働いているだけなのに社会に貢献していると思っている人がいる。貢献なんてしてないですよね、金儲けに行ってるだけでしょ。「そんなん、別に」とぼくは思ってます。社会へ出て行くとか、だいたい社会というものが、あるのか、ないのか。それから、なんで貢献せないかんのか、とか。全部、不明でしょ、ほんとのとこは」 (P110)

「働」を「書」に変換。「なにも、そんなに無理して書かんでええんとちゃう」・・・か。まさに、なるほどな処方箋。染み渡ります。

※「です・ます調」レビュー100本ノック。25本目。

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紙の本犯人に告ぐ 1

2011/10/25 09:52

ヒロイズム全開の決め球

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今回から期間限定で、文章力強化を目的とした「です・ます調」レビューにチャレンジします。では「です・ます調」レビュー100本ノック。1本目。

風邪ひきました。

ゲホゲホ。バッドコンディションのなか読了。そんな状態でレビュー書くのは作者さんにもみなさんにも心苦しいのですが、思ったことを少しばかり。

警察小説。連続児童殺害事件の犯人「バッドマン」からマスコミに犯行声明文が。そんな「劇場型犯罪」に対抗すべく、神奈川県警上層部は捜査責任者をTV出演させ犯人にメッセージを送るという前人未到の「劇場型捜査」を画策します。

その捜査責任者として白羽の矢が立ったのが「ヤングマン」巻島警視。6年前のある誘拐事件の捜査に失敗し、記者会見でマスコミに暴言を吐く大失態を犯した張本人です。警察内部の軋轢や犯人寄りの姿勢に批判の声を浴びせかけられながら孤軍奮闘する彼。はたしてその声は犯人に届くのでしょうか? 第7回大藪春彦賞。2004年「週刊文春ミステリーベストテン」第1位。

「火の粉」がよかったので購読。面白い設定です。どこぞのハリウッド映画でありそうな気もしますけど。

雫井さんは毎回作風が異なりますね。クセがなく読みやすい文体。同じ警察小説ながら横山秀夫さんをタール1mgにした吸い口。さしずめ横山さんはショートホープかな? シナリオチックな器用さが、ちょっと野沢尚さんっぽいのかも。

前半のハイライト。6年前の記者会見のシーンは真に迫るものがありました。他人にそこまで感情移入できないと逆ギレする巻島。人間の本質を突いています。全編最大の見せ場でしょう。私見ですが。

特異な設定。読者を飽きさせない展開。巻島のヒロイズム。葛藤や上司たちの卑劣さ。遺族の感情。噂に違わぬ完成度です。ただ期待が大きすぎたのが裏目に出たのでしょうか、コンディションの悪さも合間見えてイマイチ感情移入できませんでした。

本格ミステリにおける事件の残虐さはゲームと割り切っているので許容範囲。しかしこういった社会派サスペンスしかも児童殺害という重いテーマを扱いながら、遊戯性の高い設定を持ってくる辺りが生理的にどうも。

犯人側の心情がまるで書かれていないのも要因でしょう。皆が絶賛する「犯人よ今夜は・・・」のヒロイズム全開の決め球も、僕のミットには響いてくれませんでした。

良くも悪くも映画の原作向きですね。勧善懲悪じゃないと2時間には収まらないでしょう。ちょっと読む順番を間違えたかな? しかしなにぶんこの体調ですから。ベストな状態で読んだら幾分印象も変わったかと。そういうわけで今回☆マークは保留とします。

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紙の本頭がいい人、悪い人の話し方

2011/11/16 11:52

頭が悪い人の話し方はよくわかりました。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「です・ます調」レビュー100本ノック。8本目。

「です・ます調」はお上品ですね。なんだか自分がおりこうさんになったような気がします。

まあ言葉尻を変えたぐらいで知性が向上するのであれば、誰も苦労はしませんが。そのうちボロも出るでしょう。もしかしたら既に笑いのタネかも。「ああ、コイツまたアホなこと言ってるな」と。

使い方ひとつで剣にも盾にもなる言葉使い。それはブログの世界でも同じこと。見直す必要、重々ありです。

本著は「あなたの周りのダメ上司」「絶対に人望が得られない話し方」など悪例のサンプルを項目別に掲載。その傾向と対処法をライトな文体で分析・解説しています。人の振り見て我が振り直そう。反面教師ですね。

なるほど。頭が悪い人の話し方はよくわかりました。で、いい人は? 人の揚げ足取りばかりですね。肝心の一番知りたいこと、まるで書かれていません。

「賢者は口を閉ざす」という言葉があります。つまり何もしゃべるな、書評も書くなということでしょうか?

以前、ネットで発言ができなくなった時期がありました。「自分の軽はずみな言動が、知らずのうちに誰かを傷つけているのでは?」と。そう思うと怖くて何も書けません。せっかくノリノリで運営していた書評ブログも閉鎖しました。

あの頃の僕の選択は賢明だったのでしょう。何もしゃべらなければ自分が傷つくことはない。人を傷つけることも、もちろんありません。

だけど結局、帰ってきました。やはり寂しさには勝てませんね。がんばって「賢い話し方」を会得すれば、以前のような不安もきっと解消される筈。そんな思いで期待して読んだのですが。とても残念です。

「知ったかぶり」「他人の権威を笠に着る」「自慢話」「具体例がない」「説教癖」など。一般的に人に嫌われるしゃべり方が網羅されています。こういう人って実際多いですよね。特に会社の社長・上司など。いわゆる「お偉いさん」って人の中に。

人にどう伝わっているかなど深く考えず、いっぱいおしゃべりして奔放に自分をアピールする。逆説的にいえば、そんなタイプの方が結局は出世してお偉いさんになれるのかもしれません。現実社会でもネットの世界でもね。変な意味で反面教師になりました。

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紙の本サヨナライツカ

2011/05/30 15:08

ソノウチイツカ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ソノウチイツカ読もうと思ってた。やっとその時が来たみたい。著者のツイッター小説「つぶやく人々」にインスパイアされて購読。

「好青年」と呼ばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そんな2人の時間と空間を越えた灼熱の恋愛ストーリー。タイでの夢のようなアバンチュール「第一部 好青年」と、数十年後の日本に舞台を移した「第二部 サヨナライツカ」との二部構成。

タイ編は好印象。サマーセットモームスイートを主軸とした現実離れな設定と、執拗なまでのエロティックな描写。東南アジアのじっとりねっとりとした空気感や燃えるような陽射しと合間見えて、独特の世界を醸し出している。まあ行ったことはないんだけどね(汗) あくまでイメージとして。こういった映像的な表現や肌で感じる空気感を描かせたらピカイチだわ。「好青年」豊の青臭さも功を奏している。

日本編はタイでの若き日の想い出を忘れられない主人公2人の再会と別れをせつなく綴ってます。うーん、こちらはイマイチかも。時間と空間を超えた壮大な恋愛ロマンに仕立てるには主役の男女共、人間的魅力が薄いのか難。豊がペラいままで成長がなかったですな。

自分勝手な男のエゴはよく描かれていたとは思うけど。貸し金庫に奥さんと沓子の思い出を同居させるところなんて特にね。沓子の過去との生活の落差も、もっとドラスティックに責め立てて描写したほうがよかったかも。ヒロイン可愛さゆえに手加減の程が垣間見える。作者が感情移入しすぎるのも考えものだ。

総じて作者の気概が空回りしている典型的なパターン。「是が非でも美しい作品に仕上げねば」と相当リキ入っているのはひしと伝わるだけに残念。

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紙の本アマルフィ

2011/09/09 15:11

脚本家ノークレジットの真相は?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヨメがレンタルしてきた「アマルフィ」のDVDを見た。織田雄二の黒田外交官かっこよかったな。彼のファンにはたまんないだろう。しかし内容がひどすぎる。特にクライマックスというか真相がなんか突拍子もなくて残念。そう持って行くには伏線が甘すぎつうか無さ過ぎ。何より海外で犯行する意味ないじゃん。

原作真保裕一ということで期待していたのだが、あまりにも残念なシナリオに憤慨。気になってググってみたら、なんと前代未聞の脚本家ノークレジット。ネットの情報によると、製作側が弄りすぎて作者が「小説家仲間にこれが自分の脚本だとは思われたくない」と辞退したのだとか。胡散臭すぎる。

翌日、たまたま書店で本著を発見。これは原作もチェックせねばと思わず購読。久々に真保さん読みたかったし。

とりあえずは疑惑を晴らすべく、あとがきから読むことに。どうやら小説の映画化ではなく映画の企画が先行した所謂ノベライズ本といった趣。真保氏は映画のプロットに参加するという形で絡むことに。主人公の黒田も最初から「織田雄二をイメージして」と注文があったそうだ。ふーむ。

で原作感想。大筋は映画と同じだが展開が丁寧に描かれている分、違和感は少なかった。真相・真犯人に関しては映画と異なる。こっちのほうが断然いいな。あとがきにもあったがボツ案もといパラレルストーリーといった所存か。チェチェンの民族紛争問題なども絡み、国際スケールの社会派ドラマとしてなかなか読ませた。日本人誘拐に絡めるのはやや無理があったが、映画ほどの強引さはない。テロの意味や舞台がアマルフィであることにも、なるほど納得。

ただ全体的に上滑りというか、いまひとつ魅力に乏しいのが残念。シリアスなテーマのわりに作者の気概がまるで見えてこない。名作「奪取」や「ホワイトアウト」の熱っぽさは何処へ? あと黒田は映画の方がよかったな。本物には勝てないということか。

本著が執筆されたのが脚本クレジット問題の前か後かが気になる所。もし後者であるのなら、逆にシナリオを滅茶苦茶にされた映画サイドへの怒りを情熱に変えて原稿にぶつけてほしかった。せっかく魅力的なプロットだっただけにもったいない。

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紙の本ビッグ4

2012/03/09 15:30

愛があれば楽しめる・・・はず?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

引き続きクリスティ。「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? 」がよかったので。

これも読みやすかったです。活字の大きいクリスティー文庫。しかも新訳。おいおい「難解な古典に挑む」という趣旨はどこへ行った? 

●国際犯罪組織との戦い
盟友ヘイスティングスとの再会も束の間、突然ポアロの家に訪れた英国情報部員。取り付かれたように空に書くのは数字の4。こうして国際犯罪組織ビッグ4との戦いが幕を開けます。

国際犯罪組織ですか。コナンくんの黒の組織みたいですね。いやショッカーかな? 良く言えば古典的な冒険小説の風合。悪く言えば大昔の子供だましな漫画のノリ。ビッグ4の仰々しいイメージが先行するわりに、存在意義やリアリティが希薄でした。

●レトロな漫画を読む感覚で
どうやら短編を無理やりつなぎ合わせて長編に仕立てたのだとか。ネットでも「駄作」「黒歴史」とやたら酷評。

たしかに、いつものポアロシリーズっぽくないです。でも、ヘイスティングスの奥さんの存在が垣間見えたり、ポアロの●●の●が活躍(?)したり、そして2人の友情が、いつになくやたらアツかったり。サイドストーリーとしてはけっこう楽しめます。ちなみにエルキュールはヘラクレスの仏語読みなのだそうです。尊大な彼のイメージにピッタリですね。

レトロな漫画を読むような感覚で慈しめば、きっと腹も立たない・・・はず?

※「です・ます調」レビュー100本ノック。20本目。

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紙の本11文字の殺人

2011/03/07 11:14

ヨイショな解説は苦肉の策?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

初期の作品。タイトルからして暗号モノかと思いきや、最近私的に好みのサスペンス系。どうやら出版社が改題したそうだ。確か当時は新本格ブームだったっけ? 連載時は「無人島より殺意をこめて」。こちらのほうがしっくりくる。

流石に無駄がなく読みやすい。バランスよくまとまっている。アリバイトリックはオーソドックスながら唸らされた。氷解の手がかりも含め扱い方が上手い。

しかし、どうも訴えるものがない。探偵、犯人、黒幕、真相・・・各々の動機がまるで心に響かない。特に黒幕。大仕掛けなトリックありきの本格ならそれもありだがサスペンスでこれは致命傷。

探偵である「あたし」。名前が明らかにされないのは何か仕掛けが・・・と思いきや、別にそういった趣向でもなく残念。単に投げやりな印象。総じて各々魅力に乏しい登場人物。東野さんといえば無味乾燥な文体や人物の奥に秘められたスピリットが売り。もちろん本編の世界観も例に違わない。しかし今回は少々上滑り。裏目に出たのかも。

ちなみに解説は宮部みゆき。歯の浮くようなヨイショ連発のワリに肝心の本編に対する評価は皆無。「好きなこと書いていい」と言われたそうだが、もしや苦肉の策?

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ポリシーはあるか?

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昔からシビックが好きだった。そんなおじさん世代のクルマニアって、きっと僕だけじゃない筈。現在はフィット&ミニバン帝国として君臨するホンダ。どういった経緯と戦略で、愛しの屋台骨シビックを国内販売中止に追い込んだのか? 興味深々。

一読して、実にプロダクトアウトな思想に基づいたストイックなメーカーであることがよくわかる。トヨタの思想と真逆だな。P18「需要がそこにあるのではない。われわれがそこに需要を作り出す~本田宗一郎」 この言葉にホンダの業界での立ち位置が集約されている。技術系の仕事を生業にしているユーザーに、共感する面が大きいのも頷ける。

Hマークはデザインよりも思想ありきで作られたそうだ。枠が三味線の胴のところの形をしているというのは、日本文化にこだわっている証拠。日本文化を背負って世界に打って出ていくといった気概に満ち溢れている。

オデッセイの誕生秘話が興味深い。ミニバンといえば今や日本社会の縮図ともいえるファミリーカー。開発当初は意外なことに海外戦略車だったそうだ。主要車種をシビックからフィットに切り替えた経緯もバッチリ書かれてます。そう、それらの真相とは・・・みなさん読んでのお楽しみ。

P36「二輪では世界のトップメーカー。マーケットインに弊害はありません。しかし四輪はいけない。四輪にはまずホンダ独自のコンセプトがなければ駄目だ。ある程度のプロダクトアウトの意識がはいってなくてはいけない」 常に時代を先取りし革新的な視点でユーザーに提供するホンダ。そのおいしいとこだけを後追いでかっさらって行くトヨタ。「ポリシーはあるか?」 トヨタがウィッシュを出した時、ホンダがストリームのCMで使ったこの言葉。今でも鮮明に耳の奥に焼きついている。

最近のホンダ四輪事情を探る入門書としてはよくまとまっている。しかし新書としては、いまひとつ論点がぶれているような感。思うに表題がミスマッチ。「強い会社」「連邦共和国の秘密 」と謳うならば、もっとホンダグループの組織的な話題に重点を置いたほうがよかったのではなかろうか。自動車産業や二輪の話題目当てで手にする人も多いだろうに。表題って大事だなと再認識。

最後の章はホンダの創始者たちの熱いメッセージが記されてある。中でも名言と思われるものをピックアップ。

P228「社会に出ればカンニングは自由なんだ。知らないことを人から教えてもらう。謙虚に聞く。そういう姿勢の方が大切だと思う。~本田宗一郎」

P236「ホンダは松明(たいまつ)を自分の手でかかげてゆく企業である。たとえ小さな松明であろうと自分で作って自分達で持って、みんなの方向と違ったところが何か所かありながら進んでいく、これがホンダである。~藤沢武夫」

たとえ小さな松明であろうと・・・か。ふと思う。なんか最近プライドを持って仕事してないな。惰性の塊。社内のしがらみにうんざりしながら。そんな自分に尚うんざり。作り手の気概を感じるクルマは求めるくせに、オマエが作ってるものはどうなんだ? 「強い会社」の前に「強い自分」。モノ作りサラリーマンとして迷走する自分自身に今、問いたい。

ポリシーはあるか?

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紙の本2週間で小説を書く!

2011/10/17 17:10

書き続けることが才能

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

誰にそうしろと言われたわけでもないのに、小説の感想をせっせと書いてるネット書評家たち。程度は様々だろうけど、きっと誰もが一度は思い描いたことがあるんじゃなかろうか。「自分で小説を書いてみたい」と。

小説作法本。著者は小説家と思いきや文芸評論家。説得力あるのだろうか?

あとがきより。「私の肩書きは文芸評論家であり小説家ではない」と信憑性を自ら懸念しながらも「私はたぶん誰よりも小説を読むのが好きで、また読んだ小説のどこが面白くてどこが足りないのかを考えるのが好きである。書かれたものを読んで感想を述べるプロとして二十年間生活してきた」それを特技とも言い切る。趣向が書評系ブロガーとして得るべきものも多いのかなと購読。

「すぐれた選手がすぐれたコーチになれるとは限らない。ちょっとしつこいぐらいに実践的なトレーニングを積み上げることを目標に書かれている」と同じくあとがきより。

読書感想文や小論文のおかげで文章力を鍛えられてきた日本人。しかし「そこからすっぽりと落ちぬけているものがある。これらの力は、全て考えや意見(オピニオン)を書くことばかりなのである。しかし小説を書くのに最も大切な書く力とは具体的な人物や行動や風景を、目の前にあるかのように再現する力、すなわち<描写>力である」

なるほど斬新なアイディアやプロットやトリックを考えることではないのか。SFや本格ミステリなどはこの限りではないとは思うけど。卓越した頭脳も知識も閃きも持たない僕みたいな凡人が、純文学的な小説力を確実に会得するには賢明な方法論かも。これなら努力次第でなんとかなりそうだ。

ワープロの登場によって現代人の文章がごてごてと複雑に長文化していることを指摘。「更に問題なのは書いている当人がそういう表現を『文学』的だと思い込んでいることである」。ギクリ。文書のダイエットと推敲の重要性はどの文章作法本でも共通項。肝に銘じます。

描写力のトレーニングを主体に色々と肥しになることは書かれている。が、ちょっと純文チックな表層に傾倒しすぎかも。文章をそれっぽく形にすることに要点をおいているので、カルチャースクールで開催してもクレームは少ないだろう。先ずは小説の体裁を整え「疑惑の一次予選」を突破せよということか。え、疑惑って? その新人賞選考会の驚愕の実態とカラクリは、みなさんが直接手にとって確かめてほしい。

最後はやはり「才能とは書き続けることである」と締めくくる。それはもちろん書評も同じ。僕の投函に価値があるのか否か? その答えは数年、数十年後の書評投稿履歴の件数に自ずと現れることだろう。

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紙の本阪急電車

2011/05/20 10:19

臙脂色の懐かしさに揺られて

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大学時代は京都。卒業後は2年程大阪に住んでいた。そんな理由で阪急電車には思い入れが深い。JRより安く利便性も良。風情のある臙脂色のクラシカルな外観も好み。

特に社会人になってから頻繁に利用したっけ。大好きな京都と大嫌いな大阪を結ぶ、ちょっぴりレトロなタイムマシン。この車内に揺られているときだけは、灰色の現実を抜け出して楽しかった学生時代に戻れるような気がしていた。

この本の存在を知って「何時かは読まねば」と密かに思っていた。残念ながら舞台は馴染みの京都線ではなく、縁遠い今津線なんだけどね。文庫解説は、つい先日亡くなられた児玉清さん。感慨深い。ご冥福をお祈りします。

様々な人間模様が交錯するリレー形式の連作短編集。ライトで取っ付き易い文体。登場人物に感情移入し易くサラサラ読める。ほっこり系。ちょい女流作家特有のウエットさも。阪急電車の温かみのある車内空間はよく表現されています。

恋愛小説としてはベタのベタベタ。おもわず赤面する箇所もちらほらと。掘り下げは浅いかも。登場人物が多い割には各自の志向(思考)が被っている。もう少し人物造形にバリエーションがほしかった。特に男性視点は乙女チックで現実感が希薄。言い換えれば、この青臭さが本編の最大の魅力かな。きっと僕と同年代以上の方は頬を赤らめながら青春時代を慈しめます。こっちが気恥ずかしいぐらいノリノリで書かれている児玉清さんの解説も必読。

臙脂色の懐かしさに揺られて。たまにはこんな旅もいいな。

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紙の本そして誰もいなくなる 改版

2011/05/30 13:22

どんでん返しがちとくどい

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

積読本が溜まってるのに、ついつい先に読んでしまう今邑さん。読みやすいからね。随分以前にドラマ化されてるみたい。

言わずと知れたクリスティの名作「そして誰もいなくなった」のオマージュ。所謂見立て殺人の見立て殺人か!? ネタバレになるので詳しく書けないが、「なぜ犯人は被害者の自宅付近の公園に死体を遺棄しなければならなかったのか?」ここから氷解する連続殺人のホワイダニットには感服。「金雀枝荘の殺人」然り、この人は見立ての扱いが本当に上手い。

キャストの配置にも無駄がない。名門女子高を舞台に美人女教師・美少女・怪しげな男性教師・人知れぬ過去を秘めた敏腕刑事らが織り成す展開もスリリング。なるほどドラマの原作として取り上げられるのも肯ける。

難を言えば、どんでん返しがちとくどい。特に最後のは無理矢理こじつけたっぽい印象。「ルームメイト」や「少女Aの殺人」でも感じたが、長編はどうも欲張りすぎる癖がある。もっと氷解するタイミングを後ろにスライドして真相をソリッドにしたほうが、カタルシスが高まり全体に締まると思うのだが。その点、前述のクリスティは構成がタイトで凄い。未読の方は是非一読を。

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紙の本ガーディアン 本格推理小説

2011/12/07 11:54

本格とSF。このミスマッチをどう料理するのか?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

背表紙のあらすじに目が止まりました。設定がおいっきりSFです。著者は現代本格の旗手、石持 浅海さん。「月の扉」は名作でしたね。本格とSF。このミスマッチをどう料理するのか?

●守り神は亡き父親
「ガーディアン」。それは勅使河原 冴(てしがわら さえ)を護衛するバリアのような超常現象。幼い頃に他界した父が守護神となり、彼女を傍で見届けているのでしょうか? しだいにエスカレートする能力に困惑する冴。そんな中、信頼していた仕事仲間が彼女の背後を……。

●本格ミステリ作家が描くSF
SFというガジェットを大前提に、あくまで論理で謎を解き明かす。最近ではドラマ「SPEC」が果敢にチャレンジしていました。アイザック・アシモフの「鋼鉄都市」や J・P・ホーガンの「星を継ぐもの」など。海外の名作SFはミステリとしても秀逸なものが多いですね。

本格ミステリ作家が描くSF。西澤 保彦さんの「七回死んだ男」のような感じかな? と期待したのですが。どちらかというとSFサスペンス。宮部みゆきさんの「クロスファイア」っぽい。海外で言うとスティーブン・キング。超意外です。

●サスペンスには不向き?
本著は2部構成になっています。まず前編。仲間内のディベートで懇々と推論を展開するロジックスタイル。そんなシブさがウリの石持作品。今回はそれが裏目に出ましたね。理屈っぽい主要人物たち。サスペンスには向きません。キャラが魅力薄なのでしんどかったです。そこが前述の宮部作品と決定的に異なる所。

後編の主役は……。内緒にしておいた方がいいかな? 前編とずいぶん趣が異なります。こちらの方が展開としては動的。ですが残念ながらもうひとつでした。キャラの薄さと展開の意外性のなさが致命的ですね。

少々肩透かしを食らってしまいました。また楽しませてくださいね石持さん。今度はいつもの冴えたロジックで。


※「です・ます調」レビュー100本ノック。13本目。

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素直に読んだら素直に泣けます

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

変化球投手の鯨さんらしからぬ、ど真ん中の直球。泣けます。

●親子愛を描いた涙のサスペンス
ベテランプロ野球選手の新島隆二。引き際を考える中、野球が苦手な息子の隼(ジュン)にやきもきする毎日。そんな時、隼が「原発性心機能不全症」という不知の病であることが発覚しました。途方もない悲しみと莫大な手術代が隆二の肩に重くのしかかります。そこにある男からの誘惑が。「一億円の手術費用。私が肩代わりいたしましょう。その代わり・・・」。親子の深い絆を描いた涙のサスペンス。

こういう「父と息子」を描いた作品。無条件に弱いんですよ僕。ああもう、思い出しただけでウルウル。まさか鯨さんがこんな球を投げてくるとは。驚きです。

え? 「じゃあ、なんで☆4~5つじゃないんだ」って? たしかにそうですよね。

●作り物っぽさが否めない
では、心を鬼にして苦言を少々。こういったヒューマンドラマを描き慣れてないせいでしょうか。全体的に作り物くさいです。ご都合主義な展開やベタベタの設定。そんなのフィクションなんだから重々承知。そこをとやかく言うつもりはありません。

思うに描写のバランスが悪いのでは? 前半の野球に関するウンチクが冗長すぎですね。僕が野球に疎いというのもあるのでしょうが。主題は親子愛。つまり、ターゲットは野球マニアではなく一般層。肉付け程度に留めておいたほうが良かったかも。

反対に心臓病の描写が薄っぺらすぎ。実際の病例を取り扱う場合、色々デリケートな問題もあるので言及が難しいと思います。しかし今回は「原発性心機能不全症」という架空の病気。ならば、そのフィクションに命を吹き込む作業は必至の筈。そこをおろそかにしてはリアリティは望めません。

参考文献。ほとんど野球に関するものですね。せめて半数は、心臓病や小児の病やその家族に関するものにするべきだったのではないでしょうか?

●人の心を揺さぶる何か
ごめんなさい。ちょっと辛口すぎましたね。どうしても思い入れのある作家さんだと、レビューもアツくなってしまいます。これも本著が「人の心を揺さぶる何か」を持っている証拠だと思って勘弁してください。

素直に読んだら素直に泣ける良作ですから。ご心配なく。



※「です・ます調」レビュー100本ノック。11本目。

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紙の本文章のみがき方

2011/10/17 17:02

楽しいからこそダイエット

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「作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにもわかる文章で書くということだけなんですね」~井上ひさし

最近、書評を書くのが楽しい。まあそれはいいんだけど、そういう時って実は意外と落とし穴。いいこと書こうと気負いすぎて、やたら難解な言葉でこねくり回してみたり、あれもこれもと詰め込んでダラダラ長くなりがちなのが世の常って奴。ほら、こんなところでせっせと書いてるおまえさん。たまには鏡を見てみなよ。そろそろダイエットが必要なんじゃない? ギクリ。そんな理由で購読。

文章作法本。著者は朝日新聞の元編集局顧問。まえがきで早々に「技巧も大切だが、より大切なのは『心のままの誠』」だと唱える。やはり気持ちに勝るものはないということか。では、どのようにその心の誠を形にすればいいのか? その作法が幅広い作家・文筆家の実例を交えながら、とても分かりやすくて簡潔な文体で書かれている。流石は「天声人語」を10年以上担当していただけあって、ツルツルとのど越しがいい。「文章の書き方」という姉妹本もあるそうなので、是非そちらも読んでみたいと思う。

前半は「基本的なことを、いくつか~さあ書こう」。要約すれば「とにかく毎日書く。乱読をたのしみ、正直に飾り気なく。書きたいことをわかりやすく、単純簡素に」 外に出て歩き、五感を磨くことが大切とも。「歩くことは、大地という書物を読むことです(著者)」この言葉シビれました。名言です。

「自慢話は書かない」。うんうん。人の書評を読んでて、これほど不快なものはないと自戒。そして「自慢話をしたようでいて、実はピエロになっている(姫野カオルコ)」という粋なハイテクニックに唸らされる。うぬ、これは是非ともモノにせねば。

後半は「推敲する~文章修行のために」について。十分推敲し、削りとる作業が大切。瀬戸内寂聴の仏像の件が印象的。動詞を用いて脈同感を。そして最後は「思いの深さを大切にし、渾身の力で取り組む」と、やはり気持ちで締めくくる。

おっと、いいこといっぱい書いているからといって調子に乗ってはいけないな。あまりダラダラ説明しすぎると、みなさんが本著を読む価値を損ねてしまうのでこの辺で。小説のあらすじと同じだな。新書のレビューも難しい。

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