オシャレでハイカラな港町！神戸に心惹かれ行きたくなる小説

場所は神戸・北野町。異国文化のもっとも濃密な地域で、亡き夫から継いだフランス料理店「アヴィニョン」を切り盛りする女店主。画家と恋愛する裏では、店の乗っ取り計画が進行します。神戸出自の宮本輝が描く本書は、街の空気感の再現度が高く、やわらかな関西弁もあって、リアリティのある神戸が堪能できます。

1970年、時代的な郷愁が漂う海辺の町に帰省した男。夏の18日間を鮮明に切り取ったほろ苦い青春劇で、デビュー作に特有の猛々しい迫力が感じられる物語です。「ジェイズ・バー」「六甲教会」「芦屋の高級住宅地」など、実在の場所をモチーフにした描写が多く、読後の聖地巡礼まで楽しめる小説です。

神戸でフレンチレストランを営む料理人を軸に展開されるグルメ・ミステリー小説です。港町としての象徴である神戸ポートタワーで男性が刺殺されるなど、現実では到底考えられない事件が現実にある場所で起こるため、神戸を知る人なら思わずニンマリ。なまりになまった関西弁で描写されているため、神戸の香りがより引き立っています。

神戸といえば欠かせないのが、スイーツです。神戸にあるフランス菓子店での、洋菓子職人とシェフの人間関係が描かれた小説です。ミステリアスな雰囲気を感じさせつつ、夫婦、親子、そして恋人との人間関係や、新米職人の成長を描いたパティシエ小説。甘味成分多め、女性作家特有のオシャレな視線で描かれた一冊です。

少し昔の神戸を味わいたい方には、こちら。神戸に実在した洋糖輸入商「鈴木よね」なる人物が切り盛りする鈴木商店。小さな輸入商が、大正から昭和初期にかけて、日本一の貿易商に成長する姿を描いた大河小説です。港町の風情、欧風文化を先取りするさまは、今の神戸の街の原点を見せてくれるようです。