思わず惹き込まれてしまうかも!?アウトローが主人公の犯罪小説

1億円の横領事件の犯人は、銀行で契約社員として働くごく普通の主婦・梅澤梨花でした。年下の恋人ができたことにより、顧客のお金から数万円「借りた」ことがきっかけで横領犯へと転落していく梨花。彼女が陥った得体の知れない渇望感は、実は誰もが持っているものなのかもしれません。読み進めるうちに、犯人に共感してしまうサスペンスです。

天才スリ師である辻が、出所した日に電車で出会ったのは未成年のスリチーム。ひょんなことから知り合った占い師の昼間とともに未成年たちを追う辻は、やがて天性の才能をもった1人の少年とめぐり会います。自分が財布を抜かれたらたまらないと思いながらも、辻や少年のプロな仕事に思わず「カッコいい！」と叫びたくなる一冊です。

他人のウソを見抜く男に正確な体内時計をもつ女など、特殊能力をもつ天才たちで構成された銀行強盗団のはずだったのですが・・・。人を傷つけないことをモットーにロマンを大切にする彼らは、ある日手に入れたばかりの大金を他のギャングに奪われてしまいます。ギャングたちのキャラクターとハイテンポな展開にのめり込んでしまう痛快サスペンスです。

巧みな話術と小道具の使いわけで女性を誘惑するプロの結婚詐欺師・橋口。8人もの女性をほぼ同時進行でだまして金を巻き上げる、その天才的な手口とは・・・。橋口の華麗な仕事ぶりについつい魅せられてしまいながらも、彼を追う刑事目線のドラマや、詐欺師にハマってしまう女性の心理も繊細に描かれている、読み応え抜群の小説です。

17歳の青年・秀一が、家族の平穏を脅かす元義父の殺害を計画し、それを実行していくさまを描いたミステリーです。秀一の一人称で物語が進んでいくため、怒りや葛藤がダイレクトに読者に伝わってきます。絶対に許されない犯罪であるのに、だんだんとその犯行を否定できなくなっていく展開は、最後の最後まで目が離せません。