一度ドン底まで落ちてみる!?自分の悩みがちっぽけに思えてくる本

児童養護施設で育った1人の少女と2人の少年が、霧の霊峰で起きた事件で共通の秘密を抱えたまま、17年後に再会します。その3人はみな親から虐待を受け、身体的にも精神的にも傷を負っていたのですが・・・。リアルな描写に圧倒されつつ、読み進めるうちに深く引き込まれます。発表当時に文学界を揺るがせた、とてつもなく重い小説です。

結婚を控えた花と、花の義父の淳悟、そして花の婚約者。花の結婚式から過去に遡っていく形式で進んでいく、練りに練られた構成が素晴らしい小説です。花と義父・淳悟の近親相姦に殺人までからんできて、物語は終始ドロドロしています。さらに毒がある淳悟の独特な存在感が、本書に静かな狂気を醸し出しています。

「ドッグフードの刑」や「母の痛みを知りましょうの刑」など、カエルに扮した連続殺人者が独特な裁きを行っていくサスペンスホラーです。そして、主人公はその事件の担当になった警察官なのですが、スピード感のある展開でラストまで一気に読めてしまうでしょう。読者に考えさせるラストも秀逸です。

「わたし」と美し過ぎる妹・ユリコ、さらにユリコの同級生である和恵をメインにして、物語は進んでいきます。名門お嬢様学校出身であるにも関わらず、売春に染まっていくユリコたち。彼女たちの行動の理由や動機が、桐野夏生の圧倒的な筆致によって「グロテスク」に描かれた小説です。

失踪した娘の加奈子を追う、元刑事にして父親の藤島。彼がその失踪の謎に近づいていくにつれ、娘の闇がどんどんと明らかになっていき・・・。ドラッグに売春など、アンダーグラウンドの要素がてんこ盛りになっています。読者の心をふるわせ続ける、最後の最後まで目が離せない問題作です。