不思議な世界を追体験！寝ているときに見る夢をテーマにした物語

『こんな夢を見た。』という書き出しで始まる第一夜。『100年後にまた会いに来る』と言い残して死んでいった女との約束を守っている「自分」は、暁の星が輝いたときに『百年はもう来ていたんだな』と気がつきます。主人公の夢を一緒に見ているように映像が目の前に浮かんでくる、小気味よい文章を堪能してください。

表題作はつげ義春が漫画で自身の夢の世界を表現し、著者の代表作となった短編です。メメクラゲに腕を噛まれてしまい、出血を抑えながら医者を探す「ぼく」。だけど見つかるのは目医者ばかりで・・・。夢の不合理さを体現したような絵によって、摩訶不思議な世界が表現されています。

腐りかけの飢えた小象が泥から現れ、見ていた群衆が『いるはずのないものが、いたって、いないも同然でしょう』と哀れみつつ餌を投げ入れる・・・という話を描いた「公然の秘密」など、著者が見た夢を題材にした短編集です。『夢は意識されない補助エンジンなのかもしれない』と綴っているように、安部公房の「創作ノート」を覗き見ることができます。

作中に「小説」や「詩」、「論文」などが挿入されており、メタ・フィクションとも呼べる複雑怪奇な構造をしている小説です。物語は、主人公の「私」が精神病棟の部屋で記憶喪失の状態で目覚めるところから始まります。「私」とは一体誰なのか？を探るミステリーであると同時に、精神と夢の無限回廊に読者を迷い込ませる物語でもあるのです。

「パプリカ」という少女に変装して、他人と夢を共有しサイコセラピーをおこなう精神医学博士の千葉敦子。そして、夢を共有する新たな装置をめぐって争いが起こり、物語は夢と現実が入り混じった混沌とした状態に陥っていきます。疾走感のある展開で読み始めたら止まらなくなる、そんな一冊です。