陸上生活に飽きてしまった人へ。幻想的で美しい水の世界に惹き込まれる小説

主人公がある夜出会った見知らぬ男は、主人公のアパートで奇妙な魚に生まれ変わって外へ飛び出していきます。この夜をきっかけに、主人公の住む街は水中に沈みはじめます。重力はなくなり、魚の群れが空を泳ぎ、建物は水中にそびえるのです。予想もつかない展開に、じわじわと水底に引きずり込まれていく気分になれる物語です。

未来の地球を舞台に、湖底のガラス部屋に住むことになった主人公。水族館の監視係という仕事をしながら、水に囲まれた世界で数々の奇妙な体験をしていきます。たった1人の生活のなか、主人公は徐々に水と一体になっていく錯覚に陥ります。想像をかき立てる展開と静かで美しい水中世界の描写が魅力です。

心の傷が原因で話せなくなった主人公・里緒は、治療のためオーストラリアに移住します。美しい海と野生のイルカ、やさしい隣人たちとの交流を通じて、里緒の心は徐々に癒されていきます。見どころはやはり海のシーン。体を包む波や深い青、イルカと泳ぐ情景がみずみずしく描写され、映画を見るかのように海中世界を堪能できます。

海をテーマにした物語を集めた短編集です。南国の海で出会った黒魔術師、海辺の町で拾った不思議な石など、海にまつわる幻想的な物語がそろっています。果てしなく続く美しい海が舞台ですが、物語の不思議さゆえどこか底の知れない怖さも感じさせます。水中に引き込まれるような感覚を味わいたいときにオススメです。

騎士が出会った美しい娘、ウンディーネの物語。ウンディーネは水の精で、2人は恋をし結婚します。しかし、ウンディーネが水辺に近づくと水がうねり水中生物が集まってくるので、騎士は恐れを抱きます。2人の前に現れる水の精や、生き物のごとくうごめく水の描写が秀逸で、妖艶な水の世界に誘われる気分を味わえます。