時代小説の世界へようこそ！懸命に生きる主人公を応援したくなる本

高田郁のデビュー作です。妻敵討ちのため娘を連れて旅をする源九郎が行き倒れて亡くなり、9歳のお艶は青泉寺で暮らすようになります。やがて湯灌場で働きだし、丁寧に心を込めて死者を弔うことで遺された人々の心も癒します。思いがけない母との再会に心を乱されながらも、ひたむきに生きる姿が清々しい余韻を残す物語です。

学者の父を早くに亡くし、9歳で呉服商に奉公に出た幸。女衆として骨身を惜しまず働く日々のなか商いの才を番頭に見いだされ、大きく運命が変わっていきます。読むうちにまっすぐで美しい心を持った幸の人生を見守り、応援したい気持ちになります。シリーズものですが、波乱万丈の展開に目が離せなくなるでしょう。

だらしのない母親のせいで嫁ぎ先を追い出され借金を抱えるお咲は、女中よりも実入りのいい老人介護の仕事に就きます。さまざまな事情を抱える家庭で親身になって年寄りの世話をし、感謝されて過ごすうちに母親の生き方も少しずつ受け入れられるように・・・。お咲の、相手の気持ちを察して寄り添う姿勢が胸を打ちます。

廻船問屋の若だんな・一太郎は、頭の回転は速いがめっぽう体が弱くて寝込んでばかりです。祖母は大妖で、その血を引く若だんなの周りはユニークで魅力的な妖怪だらけ。彼らと一緒に出入りの岡っ引きが持ち込む事件の謎を解いていきます。ファンタジー＋ミステリー＋ユーモア。新しいタイプの時代小説、ここに誕生！

許嫁が殺された事件で心に大きな傷を負ったおちかは、生家を離れ三島屋の主人である叔父のもとで暮らしています。やがて「百物語」の聞き手となり数々の不思議な話を聞き、時にはその世界を体験するうちに、自分の身に起きた事件を客観的に見られるようになっていきます。主人公が少しずつ元気を取り戻していく再生の物語です。