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予言者か?スキャンダルメーカーか?小説家M・ウエルベックの危険な世界
挑発的な作風で新作発表のたびに抗議運動や論争を巻き起こす、現代フランスを代表する小説家ミシェル・ウエルベック。9・11の同時多発テロ以前からイスラムによるテロを取り上げるなど、その予言的な内容にも注目が集まっています。現代社会で孤立や絶望に沈む人間たちを描くその作品世界は、決して私たち日本人とも無縁ではありません。
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舞台は、政治・経済ともに行き詰まり、極右政党とイスラム政党が勢力を伸ばすフランス。やがて迎えた2022年の選挙で、ついにイスラム政権が誕生します。処世のために改宗し、女性のヴェールや一夫多妻制を受け入れる人々。新しい神に易々と「服従」していくさまが、不気味なほど静かな筆致で描かれています。
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容姿のせいで女性に相手にされず、やり場のない孤独と性的欲望にもだえ苦しむ同僚。口を開けば、自分の肩書か金や投資の話ばかりする取引相手。経済と恋愛が自由化された高度資本主義社会で出口なしの闘争に明け暮れる人間たちの姿が、自らを観察者と呼ぶ主人公「僕」の目を通して、冷徹に描き出されています。
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経済的に恵まれていながらセックスにしか生きがいを見出せない「僕」は、旅行会社に勤める女性と恋に落ち、性的に満たされない男性向けのタイへの買春ツアーを企画します。全編にわたるおびただしい性描写と、イスラムやアジアに対する差別的罵倒。西洋人の絶望と堕落を一切の政治的配慮を排して描いたような問題作です。
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凡庸な国語教師である兄ブリュノと、天才分子生物学者の弟ミシェル。この対照的な異父兄弟の人生をたどりつつ、『エロチック=広告社会』があおり立てる欲望にさいなまれ、人生を狂わされていく人間たちの姿が描かれます。やがて社会に絶望したミシェルは、人間を超える新しい種族を生み出すための研究に没頭していきます。
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作者本人が登場する小説は数あれど、ここまで自分を残酷な目にあわせる作品は少ないでしょう。金にまみれた現代アートシーンで、孤独に作品を制作する芸術家・ジェド。彼が自身の個展のカタログに載せる文章を依頼するのが、なんと作者のウエルベックです。その後、物語はまるでジャンルが変わったかのように急展開していきます。
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