だんだん物語が広がってゆく！長編のような連作短編集

大学生や専門学生のみずみずしい視点で描かれる5つの物語を収録。彼らが抱える劣等感や焦り、プライドが、苦しくなるほど鮮やかに描かれています。それぞれの物語は一人称で語られますが、登場人物たちが淡く、だけど強烈につながっていて、物事や人は多面的であることを思い知らせてくれます。

時間軸も主人公もバラバラで、一見つながりのない6つの物語。いずれも日常生活にあふれる小さな出会いが描かれており、人と人とのつながりの不思議と奇跡を感じられるエピソードばかりです。最後の短編「ナハトムジーク」で、他の5つの物語の伏線が鮮やかに回収され、連作短編集ならではのカタルシスが味わえます。

北海道釧路の街に佇む「ホテルローヤル」というラブホテルを舞台に繰り広げられる7つの物語。舞台がラブホテルというだけあり、さまざまな事情を抱えた男女が集まります。廃墟と化したホテルローヤルの物語から始まり、時間が巻き戻っていくように構成され、ホテルの歴史が解き明かされていきます。

片道わずか15分のローカル線、阪急電車今津線を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた一冊です。宝塚駅から西宮北口駅までの8駅が、それぞれの小説のタイトルになっています。乗り合わせる人々の人生が静かに交錯し、ちょっとした奇跡をもたらします。読後には心がじんわり温かくなり、前に進む勇気をくれる小説です。

『何ごともつつみかくさず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合おう』というモットーを掲げる京橋家。各話の主人公は、主にこの家族を構成する人々です。毎日の食卓でなんでも共有しているように見えて、実はみんな秘密を抱えています。京橋家の意外な一面が見えるたび、家族の幸せについて考えさせられます。