身近にありそうな人間模様がジワリと怖い。「人の怖さ」を鋭く描いた小説

6歳になる双子の娘の1人を事故で亡くしてしまい悲しみに打ちひしがれていたある家族が、環境を変えて再出発しようとします。しかしそんなとき、残されたもう１人の娘の口から衝撃的な言葉が・・・。異様な状況下でむき出しにされる「普通の人間」の醜さと、濃密に描かれた救いようのない猜疑に強い戦慄を覚える一冊です。

海辺の田舎町を舞台に、それぞれ立場の違う3人の女性が追い求めた理想郷が、わずかな軋みから無残にも崩壊してしまうさまを描いたサスペンス小説です。ちょっとした誤解や隠しきれないエゴ、そしてささやかな隠し事。それらによって女性たちが心理的に圧迫されていく様子が非常にリアルで、思わず鳥肌が立ってしまいます。

あるとき忽然と姿を消してしまった11歳の少女。必死に行方を求めながら、周囲から疑いの目を向けられてしまう少女の両親。そして複雑にからみ合う人間模様のはてにたどり着く、失踪事件の真相とは？悲しみの心が生み出す負の連鎖を鋭く描いた本書は、先の展開を知るのが怖いけれど読み進めずにはいられない、そんな魅力を持っています。

結婚直後に謎の失踪をとげた夫の行方を求めて、1人の女性が探索の旅へと向かいます。しかしそれは、いつしか彼女の知らない夫の裏の姿を知らされる旅となり、さらには先々で謎の殺人事件が起こります。トリックや推理よりもリアルな人間模様が奥深く描かれていて、まるで現実の出来事を目の当たりにしているような錯覚に陥ります。

友人同士となった直後、取り返しのつかない罪を犯してしまう2人の少女。そして25年後、ある事件を機に二度と会うはずではなかった2人が再び出会い、彼女たちの抱える闇が徐々に明らかになっていきます。ささやかな過ちから「邪悪」とみなされてしまった者の悲痛が痛いほど感じられ、誤解が生み出す恐怖にゾクゾクさせられるでしょう。