ブックキュレーターOWNDAYS 田中修治
経営者だったら絶対に全身の血が沸騰するビジネス小説たち
僕は会社を経営している中で様々な問題にぶつかった時、ビジネス指南書や専門書を読み漁って何かしら解決の糸口を手繰り寄せようとするのですが、同時に、経済小説もよく読んでいます。良質な経済小説は、生身のビジネスパーソンの苦悩や成長の過程がリアリティを持って描かれているので、自分を重ね合わせて感情移入することができるからです。さしずめビジネス書が問題解決の参考書だとすると、経済小説は問題解決に立ち向かうエネルギーを充填する為のエナジードリンクみたいなものでしょうか。ここでは、僕が主人公に自分を投影することで、今まで勇気や希望をもらい、道に迷っているときに、何かしらの指針を見つけることができたヒューマンドラマ、経済小説をご紹介します。
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経済小説では無いですが、BOOWYという伝説のバンドが結成されるまでの実話がフィクション小説として描かれており、夢中になれる素晴らしいストーリー。二十数年前、少年時代に読んだ本。ろくに学校もいかず漫画しか読んだことがなかった僕が、ちゃんとした小説を読んだのはこれが最初の一冊だったと思います。 「世間の空気」という謎の怪物に皆が支配され世間体を気にしていることが滑稽に見え「自分は自分らしく生きて良いんだ」という人生にとって一番大切なことを、BOOWYとこの本をシンクロさせて学べたことが、今の自分を形作っている全ての原点かもしれません。そんな一冊。
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なぜスターバックスが、短期間で世界的なブランドとして成長することができたかが物語を通じてよく解る本。とにかく何度も資金繰りに悩み、投資家達から断られ続けそれでも諦めずに自分の夢に向かって突き進んでいきます。そこには、特別なテクニックなどなく、ただひたすら企業を成長させる為の王道が描かれていたと感じます。スターバックスというブランドに対するこだわりと、サードプレイスという自分たちの存在意義をぶらすことなく、ただ真面目に取り組んできたことが、今日の大成功への道であったことが良く解ります。
自分の会社を大きく成長させる上で、いかに多くの人から共感されるような目的や理念、志をしっかりと中心に据えないといけないか。その重要性がよく学べる一冊でした。 -
言わずと知れたサイバーエージェント藤田社長の手記。ただ、この手記の秀逸なところは世に溢れている中途半端な経営者の自尊心を満たす為だけのくだらない成功本ではありません。起業に至る経緯からその後、分不相応な成功を手にしてしまったが故に味わう多くの挫折や困難、逆境、そしてそれに負けずに立ち向かうことで本当の成長を手にしていく様がリアリティを持って伝わってきます。サイバーエージェントという会社は藤田社長の出したこの一冊の本で、多くのファンを社内外に獲得しただろうし、世間からの「なんだかわからない若い奴がやってる会社」という評価を一蹴させ、今日の成長を手にするキッカケを作った一冊だったように思います。僕もこの本の藤田社長に憧れたのと、一冊の本で企業ブランディングの力強い起点を作り出す手法に着想を得て『破天荒フェニックス』を出版しました。
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ジョブズの性格は様々なメディアで語られているので、なんとなく見聞きした人も多いとは思いますが、本誌を読むと「まさかここまでとは」と呆れるというか驚愕するというか。常識的な感覚からかけ離れた生活スタイルや、病的ともいえる性格と行動。しかしそれらも「しかたない」と思わせてしまうような閃き、そして美的感覚。さらには「現実歪曲フィールド」と周囲に表現されるような、平気で嘘をつき物事を全て歪曲してしまうところ。とにかく色んな意味で魅力に溢れた「スティーブ・ジョブス」という偉人の人生を描いた物語。きっと、こんな変人に付いて行ける人たちもまた変人で、ほんの僅かでしょうが、でもそのほんの僅かな人たちが、その時代では思いつかない様な製品を創造した事で世界中から注目を集めることに成功し、今のAppleというブランドが確立されたのだろうと思います。カリスマがカリスマであり続けられた理由が伝わってきます。これを読んで自分も経営者ならば誰に遠慮することもなく、もっと我儘に自分の描く理想を徹底的に周囲に押し付けて良いんだと気付かされた一冊。
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主人公の国岡は出光興産の創業者の出光佐三(いでみつさぞう)をモデルにしていて、他の登場人物も実在した人物なんだとか。日章丸事件など、戦前戦後の日本で出光が世界を相手に石油を獲得し日本の国家繁栄に大きく寄与した大偉業がエキサイティングに描かれています。
フィクションとしても出来すぎなくらいだが、実話をもとにしていると聞き「現代に生きる僕たちは何と生ぬるいことか」と己を恥じ「こんな人が本当にいたのか・・・」と畏敬の念を感じつつ、自分もできればこんな動乱の時代に生きて、文字通り命を賭して志にあたるような人生を歩んでみたかったと嫉妬してしまいます。この本に描かれている出光の社員たちは、今でいう「ブラック労働」が子供のおつかいに思える程、命がけの苦しい仕事を課せられるのだが、それでも皆んな活き活きとしていました。仕事がない時代、それが普通だったのかもしれないが、それにしても今の時代との「働く」という言葉が持つ意味合いの違いには様々な感情が芽生えます。登場人物たちの「この会社を、そして日本を復興していくのだ」という意思の強さにも。物語のなかでも、そういう人って、そんなに出会わないものですが、この小説には、そう感じさせる「店主」がいます。「ガソリンなんて、どこの会社も同じ」と思っていたけれど、これを読んだあとは、出光以外のスタンドで給油する気がなくなるくらい。企業が持っているストーリーを紡ぐことで人々がその企業のファンになる事が解りやすく体験できる一冊。
ブックキュレーター
OWNDAYS 田中修治株式会社オンデーズ代表取締役社長。10代の頃から起業家として、企業再生案件を中心に事業を拡大。2008年に巨額の債務超過に陥り破綻していたメガネの製造販売を手がける小売チェーンの株式会社オンデーズに対して個人で70%の第三者割当増資を引き受け、同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。2013年には同社初となる海外進出を果たし、オンデーズシンガポール法人(OWNDAYS SINGAPORE PTE LTD.)を設立。翌年、オンデーズ台湾法人を設立。2018年10月末現在、アイウェアブランド「OWNDAYS」を11か国260店舗展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続け実業家として活躍している。趣味は読書。休日は1日中サウナに入りながら読書をするのが日課。著書に『破天荒フェニックス』がある。
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