綺麗な花には棘がある！したたかで魅力的な女性が登場する桜庭一樹の小説

二人の男女がふとしたことから始めた不倫から、お互いの歯車を狂わせていく物語です。主人公の1人である沙漠は、どこか冷めているような、何に対しても無感動な印象がある女性。お金が関わると態度がガラッと変わる彼女のことをどうしようもないと思う反面、ふとした部分に愛嬌があり、その行末を見守りたくなってきます。

酒癖の悪い養父と愚痴ばかりの母を持ち、家庭で息苦しさを覚えていた女子中学生・葵が、養父の殺害計画を立てるところから始まる物語です。家庭環境の歪みがいかに子どもに影響を与えるのか、ということを考えさせられます。中学生の少女には大きすぎる決断をくださなければいけない場面が次々に訪れるため、一気に読み切ってしまうでしょう。

逃亡生活を送る母・マコとその娘・コマコ。彼女の5歳から34歳までを描いた成長物語。母と子の呪いのような関係と、母と一心同体の存在であった少女がひとりの女性になっていく過程が描かれています。独り立ちをしていく時に誰もが感じる寂しさや孤独を、鮮やかに思い出させてくれる小説です。

「キング・オブ・ポップ」と呼ばれた偉大なスターが51歳で突然亡くなり、色んな人が翻弄されていくさまを描いた群像劇です。スターを愛する人がいれば嫉妬する人もいて、「スター」という存在の多様性があぶり出されています。その中でも「傷痕」という名前のスターの娘らしき11歳の少女から見たカリスマの姿が強く印象に残ります。

中世ドイツ、近未来シンガポール、現代日本、異なる三つの時代と場所を行き来する少女を描いたSF小説です。桜庭一樹の作品郡でSFものは珍しいですが、少女特有の不安定さや、少女の成長はここでもしっかりと提示されています。少女を描き続けている桜庭一樹の、初期を代表するような傑作長編です。