私たちも当事者!? 「劇場型犯罪」を描いた傑作ミステリー

「おれの殺人を言葉で止めてみろ」。新聞記者のもとに連続殺人犯から挑戦状が届き、新聞紙上で犯人と記者による前代未聞の戦いが繰り広げられます。この対決がリアルに描かれるため、まるで自分が新聞の読者になったかのような錯覚に陥ってしまいます。中・終盤の展開には胸が躍り、真相には胸が震える傑作ミステリーです。

連続児童殺害事件が起き、捜査に行き詰まりを感じた警察はテレビ番組に現役捜査官を登場させ、公開捜査に踏み切ります。マスコミのスクープ合戦、警察内部からの情報漏えいに振り回されながらも真摯に立ち向かう主人公の姿が格好良く描かれた、警察ミステリーの傑作です。

連続誘拐殺人事件が発生し、警察をあざ笑うかのように犯人はマスコミに接触し翻弄していきます。犯罪被害者と加害者の家族が抱え直面する問題にも深く切れ込んだ、文庫にしてのべ5巻にも及ぶ大長編ながら飽きず読み進めることができる、著者の代表作の一つです。

子どもへの性犯罪が起きるたびに前歴者を殺害すると宣言し、性犯罪の抑止を目論む 「正義の処刑人」と、性犯罪で妹を殺された警察官の二つの軸で物語は進みます。重いテーマに問題提起を交え、逃げることなく正面から書きながらもしっかりミステリーになっていて、意外な展開と結末は見事というほかありません。

東京都内で連続殺人事件が発生。一見関係なさそうな被害者たちの共通点の謎に、SNSに一度「殺された」刑事とサイバー犯罪課の若手刑事が挑みます。バディものとしても、ネット社会の劇場型犯罪ものとしても読める社会派ミステリー。誰もが他人事で済ますことができない、時代を表した小説です。