就職前の学生必見！ビジネス書が教えてくれない働き方・生き方を描いた小説

アメリカ国内を転々としながら酒と競馬とセックスに明け暮れ、何度働いても即クビか嫌気がさして辞めるの繰り返し。そんな世間から見れば間違いなくダメ男の主人公チナスキーですが、読み進むうち、自己に忠実なその姿には清々しささえ感じます。ノウハウやハックという言葉を一瞬でセコく見せてしまう危険な小説です。

語り手の「わたし」が営む法律事務所に書記として採用された青年バートルビー。物静かで礼儀正しく、仕事にも熱心でしたが、一つだけ問題がありました。それは、担当の筆写以外は誰が何を頼んでも「しないほうがいいと思います」と言って平然と断ること。彼の静かな抵抗の目的は何か、語り手と一緒に考えてみてください。

舞台は太平洋戦争中の兵営。理不尽な規律や差別がはびこる軍隊で、新入りの東堂太郎はすべて暗記した軍規を武器に上官に抵抗していきます。現代の一般企業に置き換えれば、新卒社員が労働関係法規を丸暗記して上司に楯突くようなもの。組織の一員である前にひとりの人間として真摯に生きたい、と考える方に勇気を与えてくれるでしょう。

主人公は著者と同名の男。生活のために電信会社で主任を務める一方で、所詮世の中のあやつり人形でしかない自分から逃れるように放埒な生活を送ります。全編にあふれるのは汚水溜めのような社会への痛罵と真に人間的な生き方をめぐる言葉。自分の思考や感情を企業社会の枠にはめて生きることの愚かさを教えてくれる小説です。

著者の半自伝的作品を集めた中短編集です。妻子のために文学もロックも捨てて広告代理店に勤める主人公。とはいえ働くことも広告も大嫌い。一見華やかな業界の裏にうずまく欺瞞。接待旅行で買春するオヤジ連中。そしてそれらを軽蔑しつつも否応なく巻き込まれてゆく自分。社会に出ることイコール汚れること、と感じている方にオススメです。