ブックキュレーター哲学読書室
アフリカ的霊性からヒップホップを考える
魂の叫びの音楽とも形容されるヒップホップ。その背景には、ヒップホップを形成してきたアフリカ系アメリカ人の霊性や宗教伝統があるといえる。いっけん宗教とは無関係な「世俗」の音楽であるヒップホップを、新しい視点から考えてみるための本を選んでみたい。【選者:山下壮起(やました・そうき:1981-:日本基督教団阿倍野教会牧師)】
- 32
- お気に入り
- 3188
- 閲覧数
-
ぼくのイニシエーション体験 男の子の魂が育つ時
マリドマ・P・ソメ(著) , 山崎千恵子ハイネマン(訳)
ブルキナファソ出身の著者は幼少時に白人宣教師に誘拐され、西洋で教育を受けるが、その後生まれた村に戻ってくる。村に復帰するために受けたイニシエーション体験の記述はいっけん非科学的だが、西洋の「文明」がもたらした価値観を相対化し、現代において見失われた霊的な世界について考えさせてくれる。
-
黒人のたましい
W.E.B.デュボイス(著) , 木島 始(訳) , 鮫島 重俊(訳) , 黄 寅秀(訳)
20世紀を代表する黒人思想家であり運動家の古典。「二重意識」や「カラーライン」といった視点から、人間性を否定されてきた黒人は「魂を有する者」であると宣言し、その闘い、葛藤、課題を鮮やかに描き出す。原著は1903年の出版だが、アメリカの人種主義が生み出す諸問題への鋭い議論は現在も示唆に富む。
-
黒人霊歌とブルース アメリカ黒人の信仰と神学
ジェイムズ・H.コーン(著) , 梶原 寿(訳)
黒人解放の神学のパイオニアが、黒人の歴史経験に根差した神学構築を試みた画期的な著作。著者は、奴隷制を生き抜くなかで見出された神への信仰を歌う霊歌と、奴隷制廃止後も続く差別下での呻きを歌うブルースを結び付ける。その視点は世俗音楽の宗教性を明らかにし、宗教という枠組みを越えた「救い」を浮かび上がらせる。
-
ヒップホップ・レザレクション ラップ・ミュージックとキリスト教
山下 壮起(著)
反社会的な内容ゆえに黒人教会から非難されてきたヒップホップ。それでもラッパーたちは神、天国、イエスに言及する。本書はコーンの議論を援用し、既存のキリスト教会の限界から登場したヒップホップの霊性を論じる。ラッパーたちは、ゲットーの現実に救いの神が共にあることを伝えるストリートの預言者や祭司なのだ。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です