不安でぞわぞわが止まらない！はじめての今村夏子

町で噂の「むらさきのスカートの女」と友だちになりたい私。声をかけるタイミングをうかがって彼女の様子を見守りますが、その方法はまるでストーカーのよう。私がむらさきのスカートの女に肩入れすればするほど、何かが少しずつずれていき、何か悪いことが起こるような予感にぞわぞわが止まらなくなります。

あひるを飼い始めたわが家。あひるを見にやって来る子どもたちをもてなすことが両親の生きがいになりますが、ある時、そのあひるが体調を崩してしまって・・・。両親があひるのいる日常を取り戻した方法がなんとも不気味。何かがおかしいことを暗黙のうちに了解して、世の中はまわっているのかもしれません。

あみ子の行動は破天荒。悪気はないけれど、学校でも家でも浮いてしまう。家族や同級生はそんな彼女を温かく見守っていましたが、次第に孤立してしまい・・・。小さな子どものころの常識のまま大きくなってしまったようなあみ子。あみ子とあみ子のまわりの世界が少しずつすれ違っていく様子に、不安が高まります。

パン屋を営む父と私は商店街のつまはじき者。しかしある日、ある女性にサンドイッチをあげたことをきっかけに、店は繁盛し始めます。その女性と仲良くなりたい、商店街で居場所を見つけたいと奮闘する私。けれど、がんばる私のがんばり方はやはりどこかずれていて、危うさや悪い予感を感じずにいられません。

体の弱い私のために、新興宗教にのめり込む両親。しかし、その宗教活動をめぐって家族に溝が生まれ・・・。信仰と現実の生活、違う世界にそれぞれ生きる親子。この親子はやがて決定的な決別にいたるかもしれない、けれど、今はまだ何も起こっていない・・・。そんな何かに決着がつく一歩手前の不安が丁寧に描かれています。