ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
南の島を読む。
南の島には、幻の楽園を夢見るような気持ちと、懐かしいような気持ちと、両方がかき立てられるような魅力があります。孤立しているようでいて、ゆるやかに世界につながっている。隔絶されているからこそ、果てしなく奥へと入っていくことができる。奥深い自然と文化をとらえ、波の音と熱い潮風を感じさせてくれるような本を紹介します。
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マダガスカルへ写真を撮りに行く
堀内 孝(著)
アフリカ大陸の東に浮かぶ島、マダガスカル。著者は写真家で、古本屋で見つけた一冊の雑誌をきっかけにカメラだけを携えて島へと飛び込み、以来通い続けるようになる。まっさらな目と心で見る島の暮らしのそこここに、南の島の貴重な文化の奥行きが感じられる。バオバブの木の壮大な立ち姿が胸に灼きつけられるエッセイ集。
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「山月記」などで知られる作家、中島敦は南洋庁の役人としてパラオに滞在したことがある。中島敦の作品をたどり、島を訪れる著者は、日本の軍国主義にさらされたこの島に住む人々の複雑な思いを知るようになる。植民地、そして移民。南の島の横顔が、余韻を残す筆致で描かれる。
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海辺の生と死 改版
島尾 ミホ(著)
作家・島尾ミホの誕生となった伝説的な作品。方言の響き、鳥の鳴く声、草いきれ、島の暗闇、そして特攻隊長、島尾敏雄との出会い・・・。故郷加計呂麻島、そして奄美大島の濃密な空気に、まずは浸ってしまいたくなる。
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南島紀行
斎藤 たま(作) , 杉田 徹(写真)
斉藤たまは、日本中を訪ね歩いて、各地に伝わる風習や伝承などを聞き取り調査した人。この本は70年代に種子島、屋久島、奄美大島などを訪れ、民家に泊まり、人々の姿やその語りをスケッチしたもの。島に生きる人々の体温と息づかいが行間から伝わってくる時、今の私たちが失ったものを思わずにはいられない。
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「秘島」は著者の造語。公共交通機関では行けない、住民がいないなど、いくつかの定義がある。写真と島の概要が簡潔にまとめられていて、まさに「図鑑」。このようにコレクションされることによって、資源、軍事、歴史、自然環境など、多様な視点から「島国日本」を実感できておもしろい。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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