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そこにどんな意味があるのか?「お父さん」について考えさせられる英米文学
「お父さん」は文学において重要な役割を担っています。物語の理論において父親の試練は主人公に課される代表的なものであり、父親を乗り越えることは大きな意味を持ちます。また、作者の実父の特徴が反映されていたり、自身の子どもとの関係から作中の父親像が作られることも。ここでは「お父さん」について考えさせられる英米文学を紹介します。
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リア王は自分の遺産を娘たちに与えることにしますが、末娘コーディーリアの物言いに立腹して彼女を勘当し、口先だけの姉たちに国を与えてしまいます。ですが姉たちは裏切り、リアは財産も居場所も正気すらも失うことに。『リア王』は娘たちの真価を見抜けず、父として、そして王として、失墜してしまうひとりの男の悲劇の物語です。
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主人公デイヴィッドは幼くして孤児となり、厳しい社会のなかで苦労して成長します。著者のディケンズも中流階級の出身だけど社会的能力が乏しい父親を持ったために労働せざるを得ず、自分自身をデイヴィッドに投影しているとのだそうです。作中に登場するミコーバーは実の父、ウィックフィールドは理想の父親を描いていると見られています。
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永遠に年を取らない少年ピーター・パンに連れられたウェンディは、海賊や人魚たちのいるネバーランドへと冒険に出ます。著者のバリーは子どもたちと遊ぶ時にはいつもフック船長役でした。そして舞台化の際にはフック船長とウェンディのお父さん役を同じにするよう要請も出しています。フック船長は「お父さん」の別の側面なのかもしれません。
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ファーザー・クリスマス サンタ・クロースからの手紙
J.R.R.トールキン(文) , ベイリー・トールキン(編) , 瀬田 貞二(訳) , 田中 明子(訳)
『指輪物語』で有名なトールキンは、毎年サンタクロースに扮して自分の子どもたちへ手紙を書き続けていました。これらの手紙は彼の死後、義理の娘ベイリーが出版されました。それが本書です。また三男のクリストファは父が生前出版したその倍の数の彼の作品を編集、出版しました。作家とその子どもたちの間の深い愛情が感じられます。
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荒廃した近未来の世界を父と息子が旅をする物語。暗く荒んだ場面が延々と続くなか、親子が互いにかける無償の愛情に胸を打たれます。会話文に鍵括弧をつけない独特な文体が詩的で、名が明かされない父子はまるで神話や寓話の登場人物のよう。この匿名性こそが、彼らの美しい愛情の普遍性を象徴しているのかもしれません。
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