ブックキュレーター哲学読書室
P4CからC4Pへ
子ども、患者、女性、動物、異文化、等々――哲学は前世紀以降、みずからの歴史が見落としてきた存在を考えなおし、救い上げることでどうにか命脈を保ってきた。哲学者が子どもに教えを授けるのでない。子どもが哲学者に発想を授けてくれるのである。P4C (philosophy for children)からC4P (children for philosophy) へ。【選者:澤田哲生(さわだ・てつお:1979-:富山大学人文学部准教授)】
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1949年秋、ソルボンヌ大学に着任したメルロ=ポンティは、子どもの現象学ともいうべき講義を開始した。ピアジェ、ワロン、リュケ、クライン、ラカンなど関連分野を広範に渉猟したその講義は、子どもという存在を哲学史上初めて主題としたきわめて貴重な試みであると同時に、人間科学をより豊かにする可能性を秘めたものであった。メルロ=ポンティの後期思想にも繋がる重要講義を仔細に読み解く。
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ローマ・カトリック世界の聖人が、聖人となる以前の、みずからの異端的な幼年期と対峙する。現象学者は第11巻の時間論に注目しがちだが、幼年期から青年時代のエピソード(ナシ盗みの話、マニ教、占星術、等々)を回想した、第1巻から第4巻にも多くの教訓と発想が伏在している。
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初期の三部作が品切れなので、こちらを選出。過去、現在、未来の身体経験、名詞に先立つ代名詞を、作家は説明も予告もせず、長大な一文にちりばめる。生々しいリアルを追求した結果、作家が構築したスタイルは、大人が忘却してしまった子どもの経験構造に合流する。
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幼年期の消失――フィリップ・アリエスの『〈子供〉の誕生』以降、とりわけ1980年代に世界的に議論されたテーマである。岡本は幼年期の消失をひとつの危機として引き受けるが、喧しい議論とは距離を置き、子どもの成長を注意深く見つめつづける。幼年期を考えるうえで、指標となる日本語文献の一冊である。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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