ブックキュレーターhonto編集員
先が読めない時代に読みたい、先が読めない小説
「ウィズ・コロナの〇〇は××だ!」「これからの時代を生き抜くためには△△が必要だ!」と、何かと騒がしい現在。けれども人間がどれだけ予測を立てようと、時代なんて突然変わるものです。こんな時は大きな声に右往左往するよりも、現実と同じく、あるいはそれ以上に先が読めない小説に浸ったほうが心が軽くなるかもしれません。
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柔らかい土をふんで、
金井 美恵子(著)
『柔らかい土をふんで、』と始まり、同じ文章で終わる小説です。 男女の官能的な愛と裏切りを描きながらも、その構成は複雑。先を読むどころか、目の前の文章の話者や時系列を把握することさえ困難です。しかし、流れるような言葉が織りなす繊細極まりない描写が、そんな軽いめまいにも似た感覚を次第に恍惚感へと変えてゆきます。
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コップとコッペパンとペン
福永 信(著)
タイトル通り、人を食ったような作品が並ぶ短編集です。大胆な飛躍と省略である一家の3代記を描いた表題作。デパートでカップルがおかしな男性にピント外れにからまれる「座長と道化の登場」。無色透明なようで時々存在感を出す語り手に驚かされる「人情の帯」と「2」。すべての文章がどこか変。1行先すら読めません。
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人生使用法 新装版
ジョルジュ・ペレック(著) , 酒詰 治男(訳)
登場人物1500人以上、総ページ数700ページ以上。にもかかわらず舞台はパリの一棟の集合住宅という型破りな小説です。描かれているのは住人一人ひとりのエピソードや詳細過ぎる室内の描写。机の上の本に書かれた数式、レシピ、クロスワードパズル・・・。先どころか、今、何を読んでいるのかさえわからなくなります。
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埋れ木
吉田 健一(著)
ドラマチックな出来事は皆無。東京の古い家に暮らす文筆家・唐松の日々の思索と、酒を飲みながら交わす友人たちとの会話を中心に描いた小説です。作品内を流れる静かで優雅な時間、そして何かと騒がしい時代に『ただ生きていれば良いのさ』とつぶやく唐松の言葉に触れれば、先を読むという行為がケチ臭いことに思えてきます。
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