ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
心の底の「みずうみ」をめぐる小説
茨木のり子の「みずうみ」という詩に「人間は誰でも心の底に/しいんと静かな湖を持つべきなのだ」とあります。ひそやかに水をたたえている湖はどこか謎めいていて、さまざまなイメージをかきたてます。「みずうみ」というタイトルの本を探して読んでみる・・・意外な発見を呼びこんでくれる、こんな読書はいかがでしょうか。
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シュトルムは19世紀のドイツの作家。ある老人がうまくいかなかった初恋を回想するというストーリーに新味はないけれど、木や花、鳥や風、そして善良な人々がきらきらと光って、古典的な物語特有の美しさにあふれています。いろいろな訳者に何度も翻訳されてきましたが、ぜひ今年出たばかりの新訳で楽しんでください。
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少年ナミの住む町にある湖には生け贄を捧げなくてはならない。湖畔に立ちこめる魚の匂い。母親を捜して暴力に満ちた世界をひとり渡り歩いていくナミ。多くの命を飲みこむ暗く恐ろしい湖ですが、命の源を宿しているようでもあります。作者はチェコの人気作家。ディストピア小説とも言いきれない、暗示に満ちた作品。
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湖
フィッツジェラルド(著) , 木々 高太郎(著) , 小沼 丹(著)
3つの小説が収められているアンソロジー。フィッツジェラルドの「冬の夢」は初期の中篇ですが、「ギャツビー」と同じ切なさが凝縮されている美しい作品です。その美しさは、湖の描写で極まっています。そして木々高太郎「新月」と小沼丹の「白孔雀のいるホテル」は、どちらも湖が舞台で、地味ですが味のある小説。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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