怪奇と幻想の世界へようこそ。残酷だけど癖になるダーク・ファンタジー小説

妖怪たちが不可思議な品物を売る秘密の市場「夜市」。同級生の裕司に誘われて、いずみは夜市を訪れます。そこで売られているのは、抜けない剣や人間の首など奇怪で不気味なものばかり。夜市で品物を買ったら、どうなってしまうのか？常識が通用しない異界での出来事に、おののきながらも奇妙に好奇心をくすぐられます。

魔導師のアンジストにより、育ての親と幼馴染みを殺されたカリュドウ。世界一の魔導師であるアンジストに対抗するためにカリュドウが選んだ道は、書き記したものに魔法が宿る夜の写本師でした。アンジストの邪悪な所業やカリュドウの数奇な運命など、残酷な物語が静かに淡々と語られるところも魅力です。

舞台は奈良時代。水の音とともに闇の中で目覚めた死者は、自分が謀反の罪で殺された皇子であったことを思い出します。同じころ、藤原南家豊成の娘・郎女は、老婆から皇子と彼が慕った耳面刀自の物語を聞いていました。死者の執念と生者の憐憫の情が交錯するさまに、おどろおどろしさだけでなく切なさが混じります。

時々悪さをしながらも、平凡な日常を送っていたグラブス。しかしある日、彼の家族が突然悪魔に惨殺され、グラブス自身も命からがら逃げ出します。自分の家系に秘められたおぞましい謎と、悪魔が持ちかける命がけの危険なゲーム。グロテスクで残酷な場面も多々ありますが、ページをめくる手が止まらなくなるスリリングな物語です。

異形のものが跳梁し、魔法や呪いが存在する魔都「パラディス」。その街の共同墓地に眠る死者を主人公とした物語が8編収録された短編集です。恋愛物語、ミステリー、冒険小説とバラエティ豊かですが、どの話にも薄暗い謎や得体の知れない狂気が潜んでいます。パリをモチーフとしたパラディスの情景描写にも見惚れます。