抜群の想像力！幻想ホラーだけじゃない、はじめての恒川光太郎

日本ホラー小説大賞を受賞し、直木賞候補にもなった表題作と他1本を収録した作品集。私たちのすぐそばにあるかもしれない「ちょっと不思議な異世界」が、端正な文章で描かれています。どこか懐かしく、仄暗い世界観に怖さと切なさを感じつつ、そこから生じる静かな余韻も楽しんでください。

著者が得意とする幻想小説をまとめた中編集。秋の1日をひたすら繰り返す、時に囚われた女子大生の物語「秋の牢獄」、定期的に日本全国を移動する家が舞台の「神家没落」、想像を具現化させる能力を持った教団が登場する「幻は夜に成長する」の3編が楽しめます。恒川ワールドの真骨頂が堪能できる一冊です。

江戸時代が舞台のファンタジー小説。神様のような存在である「金色様」と、その周辺で起きる出来事を綴った200年に渡る壮大な物語です。複数名の男女と金色様が織りなす人間模様はリアルでありながらどこか幻想的で、作品の中へとぐいぐい引き込まれていきます。物語を読む楽しさにあふれた著者の代表作の一つです。

くじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた女性。そこで10個の願いを叶えてもらえると言われた彼女の冒険を描くファンタジーです。これまでの著者の作風とは趣が異なり、主人公は明るく前向きな性格。ストーリーにも陰鬱な要素は少なく、ゲームをプレイするような感覚で読み進められるのも本書ならではの魅力です。

楽園のような異世界に転送され、そこで幸せな生活を送る男性。一方、地球には人類を襲う謎の生物が出現して増殖し続け、世界は滅亡の道を歩み始めます。本書は、善悪や幸不幸、人間の強さ弱さについて考えさせられるSFファンタジーの傑作です。二つの世界がリンクするとき、読み手の意識も作品世界へと誘われるはずです。