仮想空間で殺人事件が発生!?VR空間を舞台にしたミステリー小説

処女作、第2作ともに、マニアを唸らせる特殊設定の本格ミステリーを書いた著者。第3作となる本書も「VRのゲーム空間」という設定をはじめ、クローズドサークルにデスゲーム、さらには緻密で上質なミステリーと、要素増し増しの仕上がりは見事。今まで以上にパワーアップした「竜泉家の一族シリーズ」の第3弾、傑作です。

人型で翼を持つアバター・バタフライがいるVR空間。ログアウトしない謎めいた人たちが集う館、非暴力が徹底されているはずのVR空間内で発生した殺人事件など、複数の魅力的な謎が物語を牽引していきます。主人公の成長譚でもあり、ロジカルな解決編が鮮やかな特殊設定ミステリーです。

実際にあった自殺教唆「青い鯨」事件をモチーフにした小説。自殺対策NPO法人の代表VS自殺へと誘導するVRゲーム「銀色の国」という構図が秀逸なサスペンスミステリーです。VR世界のファンタジックな描写に、テンポよく進むストーリーがマッチしていて、最後までハラハラドキドキと楽しませてくれます。

VR空間に閉じ込められ、ログアウトできなくなった主人公たちがその世界からの脱出を目指すサバイバルミステリーです。SF、ファンタジー、クローズドサークル、デスゲームとさまざまな要素が盛り込まれています。謎が謎を呼ぶ展開に、あなたも引き込まれてしまうでしょう。

「VRミステリー」や「SFミステリー」というキーワードで検索すると必ず出てくるのが本作。まだVRやバーチャルリアリティという言葉が一般的ではなかった1989年に刊行されていますが、その先見性は評価が高く、今読んでも色あせない、おもしろさと怖さが入り混じった秀作です。ラストの余韻もあとを引きます。