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自分自身をフィクションとして語る、自伝的小説の名作選
自伝的小説とは、自分自身の生涯を綴る自伝とフィクションである小説を組み合わせた小説形式です。著者自身の思想や体験を物語に投影させることで、リアリティとともにドラマチックな展開が生まれるこの手法は、古今東西で使われてきました。ここでは自らを客観的に捉える書き手の筆捌きが光る、自伝的小説の名作を紹介します。
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くそったれ!少年時代
C・ブコウスキー(著) , 中川 五郎(訳)
著者の分身的存在として、複数の長編小説に登場するヘンリー・チナスキー。本書は少年期から青年期までの道筋をたどっていて、特に自伝的要素を色濃く出しています。家庭環境は荒み、強権的な父親からは体罰を受ける日々。それでも彼は持ち前の無頼気質で強く生きていきます。暴力的で、どこか滑稽なエピソードに引き込まれてしまうでしょう。
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武器よさらば
ヘミングウェイ(著) , 高見 浩(訳)
イタリア戦線での従軍記者の体験をもとに、戦場で芽生えた愛の行方を描き出した長編小説。アメリカ人青年のフレデリックはイタリア軍に入隊するも負傷し、病院で従軍看護師のキャサリンと恋に落ちます。戦況が悪化すると彼は脱走して、キャサリンとともに安息の地を求め・・・。現実に翻弄される男女の悲劇が胸に沁みます。
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変
莫言(著) , 長堀 祐造(訳)
文化大革命前後の中国社会を背景に、「私」の遍歴を語る中編小説です。農村社会で差別を受け、小学校を放校された波乱の少年期から始まる物語は、人民解放軍での体験と小説家に転身した時期の回想に至ります。文化大革命の終焉とともに訪れる新たな混乱が「私」の人生と重ねられて、歴史小説的な重みある表現で展開しています。
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仮面の告白 新版
三島由紀夫(著)
青年期までの自分自身の生体解剖を試み、幼少期以来の性的志向を赤裸々に語った自伝的小説。『生まれたときの光景を見たことがある』という象徴的な冒頭から始まる物語は、糞尿汲み取りの若者に惹かれた幼年期、精通を体験した少年期を経て、戦前戦後の精神的放浪の時期に至ります。三島由紀夫の耽美的&哲学的な文章が光る出世作です。
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