オリエンタルな耽美感に満ちた和製吸血鬼小説

「金田一耕助シリーズ」で有名な横溝正史による怪奇小説で、その類似性からブラム・ストーカーの『ドラキュラ』の翻案作品とも呼ばれています。登場人物や物語の流れは『ドラキュラ』とかなり似ていますが、著者特有のおどろおどろしい筆致がもたらす妖しい世界観は、同作よりも強烈に感じるはずです。

ポーランドの片田舎を舞台に、狂信的な土着文化に振り回される人々と、教養を持つ者の対立を描いた歴史小説。実際に人外の怪物は登場しませんが、その内容はかなり怪奇的な色合いに満ちています。日本人が書いたとは思えないほど舞台背景が緻密に作り込まれていて、その世界観に違和感を感じることなく深く惹き込まれてしまうはずです。

江戸川乱歩の代表作の一つで、吸血鬼の如く残忍な殺人鬼の恐怖を描いた探偵小説です。1人の美しい女性を巡る2人の男の確執が、やがて恐ろしい連続殺人へと発展し、探偵の明智小五郎が事件の謎に迫ります。実際に吸血鬼という存在は登場しませんが、妖艶な女性を中心にした陰鬱な物語は、幻想的な吸血鬼小説の世界観を見事に踏襲しています。

吸血鬼のみならず、人狼伝説、アトランティス文明など、さまざまなオカルト要素を詰め込んでいますが、先の読めないわくわくするようなプロットが煩雑さを感じさせません。怪奇小説につき物のエログロ色もふんだんに盛り込まれていて、匂い立つような妖しい世界観を楽しめる一冊です。

忌まわしい幼女惨殺事件の容疑者が語る、信じられないような妖しい過去。少年のころに美しい兄妹に魅入られてしまった彼は、恐ろしくも幻想的な人生を歩むことに。日本の女流ミステリーの先駆け的な存在で、翻訳家としても知られている小泉喜美子の、幻の名作とも評されている美しい吸血鬼小説です。