「普通」じゃないけど愛おしい家族のかたち。瀬尾まいこのオススメ小説

優子は血のつながらない親に育てられたうえ、何人かの間を「リレー」され、4回も名字が変わったという複雑な生い立ちを持ちます。にもかかわらず健やかに育った彼女は、今は義理の父・森宮さんとともに平穏な暮らしを送っています。彼女を巡って繰り広げられる大きな愛の物語を読み終えたとき、思わず涙してしまうことでしょう。

血のつながらない母子の絆がテーマの「卵の緒」と、異母姉弟の2人暮らしを描いた「7's blood」という二つの中編が収録された作品集。他人同士が「家族」として心を通わせる様子が丁寧に描かれていて、細かい場面の一つひとつに心が温かくなります。ユーモアのある語り口も魅力的です。

突然「父を辞める」と言い出した父、家出中なのにたびたび家にやってくる母、元天才児の兄と4人暮らしをする佐和子。少し歪ながらもそれなりに平和な生活を送っていた彼らですが、ある日、大きな悲劇が佐和子を襲います。切なさと温かさが詰まった小説で、読後にはどこか前向きな気分になっていることでしょう。

50歳の小説家・加賀野は、ある日突然、存在は知っていたものの会ったことのない25歳の息子・智と同居することに。孤独な父と人懐っこい息子という正反対の性格ながら、徐々に歩み寄っていく2人。血縁関係でつながっているだけだったはずの彼らが、徐々に家族のようになっていく過程に心が和みます。

結婚を目前に控えたさくらは、ある日、兄と名乗る青年と出会います。どこからどう見てもさくらより年下に見える「お兄さん」は、魅力にあふれた温かな人物で、接しているうちに誰もが彼のことを好きになってしまうはず。そんな彼の正体とは・・・？先の展開が気になってページをめくる手が止まらなくなる、ハートフルな小説です。