吉川英治文学賞の受賞作！女性作家が描いた歴史小説

実在する女性画家・上村松園をモデルとする女性の波乱に満ちた生涯を描いた歴史小説です。京都の母子家庭で育った彼女は、男社会で中傷や蔑視に晒されつつも、母親に支えられ画業の道を邁進します。芸術家として、娘として、女として、母として・・・。近代日本画壇を気丈に生き抜いた女性の、繊細で生々しい情熱が活写されています。

著者の生家を題材に創作された、ある家族の年代記です。激動の幕末から明治維新を迎え、北海道へ移住して事業を興した一家の、3代に渡る栄枯盛衰のドラマが、釧路の街の発展とともに淡々と描かれます。厳しい環境下にあっても、真摯にひたむきに生きる。清廉で純朴な人々に対する、著者の温かな眼差しが感じられます。

忠臣蔵で有名な赤穂浪士の中心人物である大石内蔵助。その妻・りくを主人公に、赤穂事件の前後を女性目線で描いた時代小説です。忠臣の鑑とされた夫や、その名声に押し潰される息子を見守る彼女の哀しみが痛ましく胸に届きます。事件の渦中にあっても感傷的になり過ぎず、毅然と生き続けた女性のしなやかさが際立っています。

江戸時代を代表する俳諧師のひとりである小林一茶にフィーチャーした伝記小説。壮年までくすぶりつつも自負はある。我欲もあれど気取りはない。句作に没頭し、小さき生き物を慈しむ。ずぼらでも愛嬌のある風来坊の半生を、軽快な筆致で人情味豊かに綴っています。随所に織り込まれた俳句の情景が、鮮やかに浮かび上がります。

江戸は深川中島町、通称・澪通りを舞台に、下町の人生模様を描いた時代小説シリーズの短編集。ままならぬ暮らしを強いられつつも、慎ましく健気に生きる人々を、木戸番夫婦の笑兵衛とお捨の控えめなやさしさが包み込みます。単純な勧善懲悪のように事態が好転するわけではなくとも、わずかな心の救いが描かれた佳品です。