心をじんわりほぐし、そっと背中を押してくれる。宮下奈都のオススメ小説

行助はたい焼き屋をしているこよみと恋人同士になりますが、ある日、こよみは事故に遭い、新しい記憶を1日しか留めておくことができなくなります。そんなこよみと時間を重ねていくことでもたらされるものとは？2人の間で育ちゆくもの、そして「誰かと生きる」ということの根本を問う、静かでやさしい物語です。

結婚式目前で婚約が破談となり、絶望のなかにいた明日羽（あすわ）は、叔母からの提案で「やりたいことリスト」を作成します。自分の本当にやりたいことは何か？これまでどれくらい自分の気持ちを大切にしてきたか？自分自身を見つめ直し、明日羽はまた少しずつ前を向いて歩き始めます。その過程から勇気をもらえる一冊です。

ピアノが調律されるさまに魅了され、調律師を志すことにした青年・外村が夢を追う姿を描いた物語。理想通りにいかないなか、音楽を愛する人たちと関わり合い、ひたむきに調律という仕事に向き合う外村を静謐かつ美しい文章で綴り、読者を物語の中へと引き込みます。さまざまな問題に真摯に取り組む外村を応援したくなる感動作です。

自由奔放な妹・七葉と比べ、自分はいたって平凡だと感じている麻子。そんな彼女が中学、高校、大学、就職という4つのスコーレ（学校）をくぐり抜けていくなかで、傷つき、悩み、成長し、「いちばん大切なもの」を獲得するまでの過程が美しく的確に描かれています。読後には多幸感に包まれること必至の名著です。

有名なヴァイオリニストの母を持つ玲は、音大附属高校の声楽科の受験に失敗し、代わりに新設された普通科に進学します。同級生とは距離を置きつつ学校生活を送っていた玲でしたが、合唱コンクールの準備をきっかけに事態が変わっていき・・・。随所に盛り込まれる玲以外（同級生）の視点の話も特徴的な、読み応えのある傑作です。