暴走する動物たち！はじめてのアニマルパニック小説

大正時代に実際に起きた日本獣害史上最大の惨事と言われる、ヒグマが人間を襲い多数の死者を出した「三毛別羆事件」をモチーフにした小説です。圧倒的な臨場感と緊迫感にあふれる無駄のない筆致で、人間とヒグマとの死闘を描きます。心理描写も秀逸なリーダビリティの高い金字塔的な傑作です。

人里離れた限界集落で、研究者の大学生や集落に住む老婆、猟をしにやってきた親子らが、ボス猿に率いられた凶暴な人喰い猿たちに襲われてしまいます。襲ってくる850頭のサルと対峙し、戦うさまを描いたスピーディでスリリングなパニック小説です。著者・増田俊也のデビュー作『シャトゥーン～ヒグマの森～』はヒグマが登場する動物パニック小説で、こちらも話題となりました。

ミステリー、ホラー、SFなど、さまざまなジャンルの作品を上梓している篠田節子のデビュー作。不思議な絹糸に魅せられた主人公が、その繁殖のために科学者とともに蚕の改良を始め、破滅への階段を登っていく物語です。文学的な雰囲気のあるタイトルとは裏腹に、「虫」が大量に登場するバイオホラー風味の本格SFです。

トライアスロンが行われる富士山麓の湖で行方不明者が発生し、大会担当の矢代が湖を尋ねます。矢代はやがて湖にサメがいると信じる生物学者とともに事態に対処することに。静かな幕開けからピークを迎えるトライアスロン当日までの流れが、まるで映画を観ているかのようです。シリーズ化もされているB級映画的「サメ小説」、オススメです。

謎の祭りが行われる不思議な無人島にやってきた音大生たちが、虫に襲われます。そこには虫たちを音楽で鎮める巫女、そして、よからぬことを考える怪しい人々がいました。音楽に民俗学のうんちくも交えながら、虫と人が入り乱れるミステリーテイストのパニック小説。理系の本格ミステリーで話題をさらった井上真偽の、新境地ともいえる一冊です。