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紙の本
あなどるなかれ、”官僚力”
2009/08/26 17:06
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る
1960年代、池田隼人(59年通産大臣、60年内閣総理大臣)佐藤栄作(61年通産大臣、64年内閣総理大臣)政権下、日本が途轍もなく元気な時代に活躍した風越(モデルは佐橋滋通産次官)を筆頭とする官僚たちの話である
世間に反官僚ムードの高い今、テレビ・ドラマ化され、なかなかの人気である
何故だろうか?複雑な思いもある
”ミスター通産省”・風越(佐橋)は親分肌で傍若無人の超官僚、開襟シャツ1枚、ノーネクタイで大臣、財界人を睥睨する
テレビではより一層美化されているが、小説では辣腕官僚の傲慢不遜な”強権”ぶりもあからさまに描かれる
我が信念への絶大の自信ゆえ、大臣・財界人を馬鹿にし、吼える、恫喝する
自分の信念を実現する為、権力の頂点を目指し、意に叶った部下を集合し、組織の権限を守る
政治家は”人気取り”が命である、お役人は自分が案出する”政策”実現が命なのだ
その為、お役人は政治家とは比べようもなく勉強する、政治家がゴルフ場で政治を決めている時に、エリート官僚達は政策論争に身体を張る、時にはもろに権力の刃を振るおうとする
官僚の力は絶大、政策は日夜官僚の手で創られる
近い所では反官僚をうたった小泉=竹中氏も結果的には”仕事の出来る”官僚グループを身内に結集する事で”政策”を実現したのだ
日本経済高度成長への突入期、”国際派”対”統制派”の対立の中で、風越は”統制派”のボスである
風越らの立案、命懸けで日本経済を守ろうとした”特定産業振興法”は政治力に負け葬られ、風越の人事構想は挫折する
しかし彼らは生き残る
その精神は官民協調方式と体制金融に生かされ、日本の強力な自動車産業、コンピューター産業を育成し、”日本株式会社”の奇跡を生む
凄腕の官僚達が打ち出す”政策”が正しいかどうか、歴史のみが証明する
しかし、官僚達の”強権”を振りかざした命懸けの戦いを通してしか歴史は前に進まない
汚職や金銭欲・保身に汲々とする木っ端役人も居るだろうが、エリート官僚の”怖さ”はここにある
紙の本
温故知新で今を考える材料に
2018/12/08 23:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読人不知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和三十年代の金融業界を巡る経済小説。
霞が関の官僚、政治家、銀行員、記者などが情報戦で駆け引きの攻防を繰り広げる群像劇です。
最近、ブラック企業が何かと取沙汰されています。
この作品を読むと、ブラック企業の経営陣や管理職は、昭和三十年代のノリのまま思考停止しているのがわかります。
家庭を顧みず、休日はなく、深夜まで働いた後、更に政治家宅で打ち合わせ……それが、勤め人の「勤勉で仕事熱心で正しい姿」とされていた時代です。
それに付き合わされて、深夜から早朝にかけて宅飲みの酒肴を用意させられる議員の妻もいい迷惑です。
これに文句を言わないのが「良き妻」とされた時代でもあります。
仕事最優先で家族は顧みられず、尊重もされず、仕事に巻き込まれて非常識な時間に迷惑を掛けられても、文句を言うことさえ許されません。
仕事を失えば存在意義を失うところまで「自分=仕事化」していた世代の悪しき側面が如実に描き出されています。
因みに、作品が描かれた時代には、これらが美徳とされていました。
時代や世相が変われば、同じ作品でも美徳が底なしの悪徳に変わる好例です。
作中で唯一人、官僚の片山氏が、定時で仕事を終えて余暇を楽しんで仕事の能率を上げると提唱し、自ら実践していますが、作中では浮いています。
官僚の片山氏は「不真面目な奴」のレッテルを貼られ、出世コースから外され、他の登場人物からは冷ややかな目で見られています。
現代の価値観からすれば、片山氏はとても有能な人物ですが、この時代はそうではありませんでした。
現在、働いている方は、片山氏以外の登場人物の台詞に注目してください。
上司や経営陣から、ひとつでも言われたことがあれば、その会社は要注意です。
人事部に一人でも、風越氏のような人物がいれば、社内の風通しが悪くなり、不正や腐敗の温床を醸成しかねません。
発言者が同僚ならば、会社のブラック化を推進し、同調圧力でまともな人材を圧し潰す「ブラック人材」です。
作中の時代から高度成長期にかけてモーレツ社員だった人たちは、仕事以外の全てを擲って突っ走り続けました。
現実の社会で、未だに会社に籍を置くこの世代の人々は、若い世代から「老害」と呼ばれがちです。
退職後は往々にして、家庭内で「濡れ落ち葉」や「粗大ゴミ」と化し、家庭の収入源でなくなった途端、熟年離婚を申し渡されることも珍しくありません。
「終身雇用」が定年退職までの幻想だったと気付かず、自らを「単なる収入源」以外に価値のない存在にしてしまった人々です。
作中の時代にはまだ、頑張れば頑張った分、見返りがありました。
しかし、その社会の未来にある「現在のリアル」は、皆さんがご承知の通りの有様です。
古きを温ね新しきを知る。
本書は、悪い意味での「昭和のニオイ」を感じ取るガイドブックになることでしょう。
これから就職活動に臨む学生さんや、転職をお考えのブラック企業勤めの皆さんに読んでいただきたい一冊です。
紙の本
そして時代は経過していく。
2022/02/19 18:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
名作というか、もはや古典になりそうな域の一書と言えそうです。以前から知ってはいましたが、この歳になって読む事になりました。
本書に描かれている時代、それは所謂『モーレツ』の時代だったのではと思います。泥臭い事も多々あり、いかにも昭和、を色濃く滲ませていると思いました。
他方で本書には幾つか金言がありました。それらのワードは令和の時代になっても褪せる事なく息づいており、それらのワードが何より私にとっては大きく印象に残りました。
紙の本
官僚たちの政治的力学が学べます
2016/01/16 09:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し古い作品ではありますが、日本の官僚たちの政治力学といいますか、どのように政治を陰で支えてきたのかがよくわかる作品です。主人公がかなり型破りな感じではありますが、こうした型破りな人材も、統率された官僚組織の中にあっては必要なものでしょう。なかなか味のある作品です。
紙の本
日本を支えた男たち
2017/08/11 16:02
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高度経済性長期の日本を支えた通産省の官僚たちの働きぶりが生き生きと描かれている。