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人は死なないけれど…
2023/09/26 10:04
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投稿者:もちもちの木 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリの女王、クリスティの作ですが、特別な事件が起こったり人が死んだりは一切しません。しかし並の殺人事件モノよりよっぽど怖い本。最初は主人公ジョーンの上から目線なところにイラッとして、「いやいや、アンタ客観的に見たらソレやばくない?」と思うのですが、だんだん「…あれ、自分にもジョーンみたいなとこってあるんじゃない?」とジョーンを笑えなくなってくる。いつの間にかジョーンと一緒に、砂漠の真ん中でポツンと脳天を太陽にジリジリ焼かれながら今までの自分の所業をジョーンに重ね合わせ始めている。しかし最後にジョーンが出した答えは…。ゾッとするけどある意味リアル。時代も国も違うのに、こんなに共感できるのってどうしてなんだろう。
解説も読みどころ
2021/05/07 09:14
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投稿者:アキノ - この投稿者のレビュー一覧を見る
スゴ本の人がクリスティ最恐と評していたので読んでみた。否応なく自分を見直さずにはいられない本であり、万一これを読んで、主人公みたいな人いるよねーこわいねー、とかいう人がいたらそいつが一番ヤバいやつである。毒親を描いた本としても読めるが、毒親にならずにすんだ可能性はあったと思う。聞きかじった限りでは、もっとどうしようもなく恐ろしい毒としか表現しようがない親もいる。どうすれば毒親にならずにすんだかは、栗本薫の解説を読めばわかる。どうでもいいけど、中島梓ではなく栗本薫なんだな。
時間があるとつい余計なことまで考えてしまいます
2021/01/20 15:53
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーといえば、名探偵ポアロとミス・マープルの2人の名前がすぐさま出てくるほど、2人が活躍するミステリーは有名だし、何より面白い。
しかし、それ以外にこの2人が登場しない「ノンシリーズ」がある。
例えば、『そして誰もいなくなった』もそのうちの一作。
さらに、「ノンシリーズ」の中に、アガサがその名前でなく、「メアリ・ウェストマコット」という名前で発表した何作かがある。それらは特に「女性向けロマンス」とも呼ばれたそうで、この作品もそのうちのひとつである。
しかも、この作品は世評が高く、『アガサ・クリスティー完全攻略』という著作のある霜月蒼氏によれば「未読のひとは即座に読むべし」というほどである。
実はこの長編はほとんど同じ場所での同じ人物の回想で進められていく。
主人公のジョーンはバクダッドに住む下の娘が体調を壊して見舞いに出掛けた帰りの途上、悪天候のせいで列車に乗り遅れ、砂漠の中の寂れた宿に一人取り残されてしまう。
テレビもない、手元の本も読んでしまった彼女は炎天下の砂漠に散歩に出るしかない。
そんな彼女の頭をよぎるのは、今まで過ごしてきた夫とのこと、息子と二人の娘との確執、さらにさかのぼって女学生の時の思い出。
つまり、することのない彼女は人生で初めてといえる、自分自身と面と向かい合うことになる。
そして、気づくのだ。自分が正しいと思っていたことが誤りだったと。
しかし、最後に彼女がとった行動というと…、女性の読者なら彼女の気持ちをわかるのだろうか。
女性は愚かなのか、それとも賢いのだろうか。
底なしの怖さ…でした
2020/03/08 08:49
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投稿者:pizzaco - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店で何気なく手に取った本だった。それが、こんなに恐ろしい物語だったとは。
妻として、母として、一家の女主人として、完璧な私。と信じて疑わない主人公。
読者にはその綻びが少しずつ見えてくるが、彼女の
信念は揺らがない。
伸びやかな感性を彼女はどこで失ったのだろう。自分の価値観に合わない人を憐れむほどに。
これは彼女の物語であり、私自身の物語だと気づいたが、私は変わることができるだろうか。
面白いです。
2019/12/05 10:11
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投稿者:スッチー - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても面白いです。良いです。興味のある方にはオススメです。
著者の、女性としての鋭い視点
2019/11/03 16:58
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
うーん、よくこんな作品が書けたなぁ、と感心、頻りです。アガサの人間描写は定評がありますが、鋭すぎて、もう刺身包丁レベルです。後半からの懺悔というか、思い起こしが、言い得て妙味があると思います。
家庭を持つ母親にとって、ジョ-ンと同じ経験は多かれ少なかれあると思います。母親という女性に限らず父親とて当て嵌まります。私の場合は、後者を感じました。恐れと言い知れね不安を憶えました。
家族の和と愛情とを大切にしたいと心に刻みました。
アガサの、心象描写の差し迫り感とストーリーの運びの滑らかさに脱帽しました。
呪いの言葉
2019/10/18 11:33
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙がいまひとつ。ペディキュアにサンダルとはお堅い女であるジョーンのイメージに合わない。
この物語はロドニーからジョーンへのモノローグで終わる。
君はひとりぼっちだ、と。
これは彼女に人生の大事な部分を奪わた夫の呪いの言葉だ。
夫も子供達もとうにジョーンに絶望して諦めている。
家庭内の暴君だったジョーンには大切な人たちとの間に心の繋がりなどないのだ。
ジョーンは自分の過ちに気づきながら、全てに目をつぶる精神的な籠城を選んだ。
ブランチも貴族の女性も彼女を新しい道に進むきっかけになってくれる存在だったのに。
もう彼女には籠城戦に必要な援軍さえ来ない。
君はひとりぼっちだ。
ここまで優しく投げやりで絶望に満ちた呪いの言葉を私は知らない。
恋愛小説!?
2019/09/10 19:40
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーがメアリー・ウェストマコットの別名で発表した恋愛小説。と聞いて読み始めました。ミステリーと思って買った読者ががっかりしないようにとの配慮から別名にしたとか。題名も美しく、普通に恋愛小説だと思って読み始めて見事に騙されました。殺人事件がないのにミステリーよりも恐ろしい・・・。自分の言動が他人にどういう影響を与えるのか、 他人の立場で物を考えるとはどういうことなのか。そして、自分は本当にこの主人公ほど酷くないと言い切れるのか。何度読み返しても恐ろしい本です。
愛を考えさせられる
2019/04/26 22:00
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投稿者:yaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショーンとロドニーの間に愛はあるが、双方の未熟さ故に「すれ違い」という言葉では片付けられないほどの溝が生まれたのか。ある意味似たもの同士の二人な気もした。実際にこのような夫婦も実は多く存在するのではなかろうか。「愛とは信念である」とどこかの本に書いてあったが、互いに信念を持ち合うことこそがまさしく愛するということなのかもしれない。
現在でもありうる人の思い込みと傲慢からくる情報の選択が真実を見えなくする
2019/01/02 15:53
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投稿者:Uni - この投稿者のレビュー一覧を見る
推理小説ではないクリスティの心理ミステリー.
ポアロでもそうですが,人の心理を突いてくるクリスティならではの作品です.
思い込み,すり込みから,自身の考えをすべて美化,都合の悪い情報はすべてなかったこととして忘却の中に葬り,成功者,勝ち組と思い込んで生きてきた女性.どれだけ真実を見ようとしなかったことで,周りを不幸にしているか,全く理解していなかった,そしてまた自身の楽なほうに流されてしまった,悲しき人間を描いています.
読み進むほどこれほど都合のいい情報しか認めない人間というのは実在するのだろうか?とも思いましたが,「自分は幸せ」「こうでなければならない」という思い込み,忠実であること真面目であることを誇り,傲慢となった状況ではそうなりうるかも,とも.情報がないからこそ起こりうるものかもしれません.
また逆に,情報があふれる現在は多すぎるからこそ情報を選択すること,見て見ぬふりをせざるを得ないことが起こりうる環境であり,常に人にはそういうことが起こりうるとも感じた,80年近くたってもありうる心理を描いた作品です.
味わったことのない恐怖
2017/11/23 18:19
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投稿者:ばぁ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーらしい、予想ができないストーリー展開。
ホラーではないものの、忍び寄る恐怖。
旅を通じて、今までの生活を紐解いていくと、幾つかの疑問が・・。
アガサ・クリスティー自身が謎の失踪をしたことを思いながら読むと
更に面白さが増したように感じました。
気づかない方がよいこともある
2017/10/05 21:53
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投稿者:さそり - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語自体は、主婦があるきっかけから人生を振り返えるというシンプルなものですが、読み進めるにつれて背後から恐怖が迫ってくるような感覚に陥ります。
自分の見ていた世界がすべて嘘偽りだと気づいた時、人はどれほどの恐怖を感じるのでしょうか。。
読後にはもし自分だったら…と恐怖が後を引くような作品ですが、それでも何度も読み返したくなる不思議な魅力のある作品です。
ミステリー小説の巨匠が執筆した恋愛小説
2017/05/26 15:23
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投稿者:にゃんこ鍋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
意味ありげな表紙に惹かれて(笑)購入という、ほとんど「ジャケ買い」である。感想としては、部分的にミステリー要素があり、ヴェールに包まれた文章だなぁという感じを受けましたね。
人間に巣食う自己満足、独占欲がもたらす罪
2009/05/28 17:21
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投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦がはじまる少し前の話である。
主人公ジョーン・スカダモアは中年の美しい主婦。夫は弁護士。子ども三人を立派に育て上げ、自分たち夫婦ほど幸福な者はいないと思っていた。それはひとえに自分が夫や子どものためにがんばってきたおかげだと自負するのであった。
末娘の嫁ぎ先のバグダッドへ娘の病気見舞いに行き、ロンドンへと帰路につく途中、テル・アブ・ハミドの砂漠地帯で長雨のため足止めを食う。
足止めを食っている宿泊所で退屈な日々を過ごすうち、来し方のあれやこれやを思い起こす。自分がどれだけ理想の家庭を築いてきたか、夫のためにつくしてきたことや、子どもたちの為に良かれとしてきたことを邂逅するうち、徐々にそれらが本物だったのだろうかと疑念を抱く。
夫の愛情の真偽、子どもが自分に抱く感情にはじめて気がつくのだった。
自分の顔は自分で見ることが出来ない。
どんな概容をしているのかを知るためには鏡でみると分かる。では鏡を見ることが出来なかったらどうだろうか?家族や、友人、周囲の反応が如実に物語ってくれる。
しかし、彼らが発する言葉や態度を正しく読み取れず、自分の都合の良いように解釈したとしたら、「自分」を正しくみることはできない。
人は己を直視することは少ない。自分の醜さの部分ならば、さらに直視しようとはしないものだ。自分を正しいと思いこみ、他者の人生までも自分の思い通りにしようとする。しかも、それが愛するが故の強制であったなら思い通りにされた者の人生はどうなるのだろうか?しかも「愛」と思い込んでいたものは、実は自己満足以外の何ものでもなかったとしたら。
愛するがゆえに赦されないものは何だろう?
幸福とは何だろうか?自己満足と云う愚かしさ、独占欲がもたらす罪。
それらが織りなす物語。
虚構の世界ではあるけれど、現実にどこにでもあるあの人やこの人の人生がここにはある。いや、これは私のことかもしれないと思ったとたんぞっと過去を振り返るのだった。
そして何よりも一番怖かったのは最後に夫のロドニーがつぶやいた言葉である。
人間に巣食う自己満足や、独占欲、幸福のあやうさを、淡々としかし深遠にえぐってみせたメアリ・ウエストマコットの最高傑作である!
実は何を隠そうメアリ・ウエストマコット!というのはアガサ・クリスティーの別名である。
アガサ・クリスティーが殺人も、探偵も出てこない小説を6篇だけ書いた。
そのうちの一つがこの本。
アガサ・クリスティーは長い間アガサの名を隠してメアリ・ウエストマコットの名のままこの作品を出していた。
アガサ・クリスティーはこの本の構想を長年練ってきたそうだけれど、書き始めたら1週間で書き上げたのだった。そして完成したときは性も根も尽き果ててすぐベッドにもぐりこんで、一語も訂正せず、そのまま出版したという。
アガサの名をなぜ長い間秘して本書を出版したのか?その謎を推理してみるのも面白い。
言葉の泉
主観と客観の大きなズレが生む恐怖
2009/05/03 23:43
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
推理小説ではない、クリスティー作品です。
ところが並みの殺人事件よりも恐ろしい。
一人の平凡な主婦の独白が、次から次へと恐怖を提供してくれます。
結婚して遠方に住む娘の見舞いに出掛けたジョーン。
母親としての役目を無事に終えた充実感を胸に、帰路へつきます。
鉄道宿泊所の食堂で、学友の女性とばったり顔を合わせるのですが、
若さを保ち、品の良い弁護士夫人である自分とは対照的に、
落ち着きのない薄汚れた中年女になった友人の姿。
幸せになる努力もしないで、好き勝手に生きてきた彼女の自堕落さを、
憐みつつも、ジョーンは優越感にひたります。
その後、思うように運ばない陸路での旅で時間を持て余すジョーンは、
この学友の言葉に導かれるように、愛する夫や子供たちとの会話を、
じっくりと思い返すことになってしまいます。
いわゆる「何を言っても、聞く耳を持たない人」というのがいますが、
じつはジョーンがそうなのです。
それがどう家庭に、生き方に影響しているのか、薄皮を剥ぐように少しずつあきらかになっていきます。
彼女の回想は、かなりはっきりと客観的事実をこちらに伝えてくれます。
ここまで気づいているのなら、なぜ自分の家庭が順風満帆だと思えるのか、逆に不思議でたまらないくらいに。
そこにこの物語の、本当の恐ろしさがあると思うのです。
同じ事実を前にしたときの、ジョーンとそれ以外の人たち(読者も含む)のとらえ方のあまりの違い。
主婦として懸命に働き、家族のことに心を砕いて努力を怠らないで生きてきたと言い切るジョーン。
しかし彼女は、いちばん大切であるはずの「目の前の事実を受け入れる」ということに対して、
恐ろしいほどに怠惰だったのです。
ジョーンが、そして彼女に不満を持ちながらも逃げるか諦めるかしてやり過ごしてきた家族が、
気の毒ではなく恐ろしく感じる、そういう物語だと思います。
殺人も命を脅かす出来事も起こらないのに、終始ゾクゾクして一気に読んでしまいました。
ジョーンに救いはあるのか、未読ならばぜひ確かめてみてください。