紙の本
伝わってくるのは愛ばかりだった。
2009/09/14 16:16
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投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
安吾の本は40年前、20才のころ読んだ。堕落論や風と光と二十の私と、教祖の文学など夢中になって読んだ。爽快であり、感動があった。堕落論は本当の人間を生きよ、ということだったと思う。
教祖の文学では小林秀雄のことをさんざんに言っているのだが、伝わってくるのは愛ばかりだった。小林秀雄を愛し尊敬する安吾はまるで大好きな恋人に駄々をこねているように文句を言っているのだ。
「桜の森の満開の下」はうっすらとしか覚えてなかった。読んでもよく分からなかったのだと思う。40年後の今、これを読むとここに登場する女は安吾のおかあさんだったのだなと思う。男に亭主を殺されその男の妻となった女は男に理不尽な要求を次々としてくる。でもこれは安吾のおかあさんだったのだなと思う。
母を嫌っていた安吾、母に憎まれていると思っていた安吾は嵐の日に母の食べたいというものをとるために、海へ入る。安吾の切ない思いがあった。本当は安吾は母を一番愛していたのだ。
今も安吾の作品が若い人々に読まれているのは嬉しい。年とった私はというと、ちょっとふざけた「不落樽号の旅」なんぞを読んでいます。安吾を愛する方々がこれを面白く読んで下さると、また嬉しい。
不落樽号の旅
紙の本
安吾エッセイの代表作
2018/05/20 07:34
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
坂口安吾といえば「堕落論」というくらいに有名なエッセイ集である。「堕落論」以外にも「日本文化私観」など有名なエッセイも含まれている。個人的には坂口安吾の芸術論・美学論が興味深かった。ちゃんと整備された桂離宮のような美よりも、無造作に鉄筋が張り巡らされた造船の方に坂口安吾は美を感じるという。無造作だが「無駄のない」ところに美を感じ、小説や文学における美にも同様の考えを示す。その思考は、他の作家とも通じるところもあるが、一方で坂口安吾特有の視点もあり、興味深い内容がつまった作品である。
紙の本
騙された…
2016/12/17 15:42
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投稿者:yu - この投稿者のレビュー一覧を見る
前から欲しいと思っていたのですが、書店に置いてあるものはすべて表紙がアニメのャラのイラストで、普通のものが欲しいと思っていました。それで通販の方で検索してみると、水玉模様のようなシンプルな表紙のものがヒットし、探していたものがようやく買える、と購入しました。しかし、いざ届いて開けてみると出てきたのは写真とは異なり、アニメキャラの表紙の方でした。早く読みたいと思っていた本だけあってとてもショックでした。
本の内容の感想でなくて申し訳ないのですが、自分と似たようなことを思っている人の参考になればと思い書いてみました。
電子書籍
堕落論
2020/02/24 15:45
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
愛とは何かということも、あらためて考えさせられるような内容になっているので、いろいろと考えさせられました。
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テスト期間に読んで泣きそうになりました。これ、読み進めちゃって赤点とるしかないやん…!笑
ななめにうがった視線に慣れるのに時間がかかりそうだけど、とっつきにくくはなかった、そんな感じ。
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前々から気にはなっていたやつ。
戦時中や戦後に書かれた評論をまとめた本ですけど、あまり古臭さは感じませんでした。
いやまあ、所々時代を感じさせる描写はありますけど。
個人的に気になったのは何度も出てくる文学論。
文学とは自分の人生をかけるものだ、みたいな、気合の入った論です。
これは個人的に、近年のものと相当合わない気がします。
中村うさぎが「『自分の作品に命をかけている』といわれると白ける」みたいなことを書いてたのを思い出したせいでしょうか。
エンターテイメント性があふれてるのもあれば、重々しいのもあるわけです。で、どっちが優れてるとかいうのも変だし。
安易な作品なんて文学じゃない!とか言われても区別つかないし、特に区別する必要感じないし、
作者の魂がこもってないとダメだ、とか言われても読者にはよくわかんないですよね。
鼻歌交じりで書かれてようと傑作は傑作だし。
どうもその辺の気負いは共感できませんでした。
でも全体的にみて面白かった。やっぱ文章うめえよ文学者。
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「日本文化私観」「青春論」「堕落論」「続堕落論」「デカダン文化論」「悪妻論」「恋愛論」「エゴイズム小論」「欲望について」「大阪の反逆」「教祖の文学」「不良少年とキリスト」収録。
初坂口安吾でしたが、かなり面白かった。自分の嗜好に近いみたい。人生観というかそういうのが…
もっとも、時代を越えてこういう表現がマイルドになってコレなのか、当時においてもコレなのか分からないものの
こういう人は友人とか近しい人にはなれないし、近くにいたら腹立ちそうだけど。
特に、太宰の自殺をきっかけに(?)書かれたみたいな、坂口の太宰評の「不良少年〜」が気になる記述が多かった。
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坂口安吾の本。
有名な本なのであれですが、人間というものを、楽観的でもなく悲観的でもなく徹底的に見つめなおすことで、人というものの本質を見出していこうっていうのが堕落論です。
ただその表現は、とても厳しく、だからこそ力強いのでした。「生きよ堕ちよ」その厳しくも徹底的に前に進むという姿勢はとてもかっこいいす。
そのほかにも青春論とかいろいろあって面白い。必読。
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16歳で出会う。
工芸室の裏で読む。土の匂いと会談の雑草。
風と光と二十の私に重ね合わせる。野心は、悲しくない。
ゼミの提出課題に選んだ。
16歳で読んだあの時の衝撃や興奮が忘れられず本を読む。
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たまには古い人の作品でも読まねばなるまいと思って手に取ったのが本書である。坂口安吾については、「白痴」を読んだことがあるくらいで、他は何も知らない。そういえば高校時代に、国語便覧で戦後文壇の寵児だったと書いてあったような気がするが、ともかく彼がどういう人生を送り、どういう思想を持っていたかについては、何の予備知識もなかった。そんなバチアタリが一時の気の迷いの末に本書に飛びついてみたみたら、これが結構面白かったのである。言葉尻を捕まえれば、いくらでも矛盾を指摘することはできようが、そんな野暮なことはするまい。本エッセイには、坂口安吾という人物の世界観が、そのまま紙面に飛び出してきたようなところがある。安吾の孤独に関する洞察は徹底しており、他の何がぶれようが、その孤独に関する記述にだけはぶれがない。しかし、そんな魂の孤独を引き受けながらも、彼は他者に対する温かい眼差しを捨ててはいないのだ。本書の最後のエッセイに、安吾の真髄を見た気がする。
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坂口安吾の短編エッセイ集。
短編といってもひとつひとつ読み応えがある。
一度だけでは読みたいない。
何度も何度も読み返し、少しでも自分の血肉に変えて行きたいと思う。
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人間は何処まで落ちようと完璧に落ちきることはできない。そしてそれこそが人間のあるべき姿なのだ。
てなことを言っておられて、なんか救われた。
だからこそ、落ちた後は、這い上がる道しか残されていないのだ
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「孤独は、人のふるさとだ。恋愛は、人生の花であります。
いかに退屈であろうとも、この外に花はない。」
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僕が持っているこの本は、古本屋で140円で買った角川文庫。昭和五十五年 改版三十四版発行、とある、全体日焼けして茶色に染まり、破れかけた表紙をセロテープで補強し、それもはがれてきている年期もの。
買った22、3の頃、読んでみてもまったく受け付けなかったのだが、その後ニーチェの本を読みふけったのち、まだまだ自分の中に大きなわだかまりがあった頃、改めて読んだ時の衝撃・・・。
ホント人生観が大きく変わった気がした。
大げさに言えば、「罪と罰」のラスコーリニコフが「空気が必要だ」と言われた、その空気だったように。
その現実という大地(それがいいのか悪いのかではなく、それそのものとして)に足をつけて立つということを教わった。
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”この戦争をやった者は誰であるか、東条であり軍部であるか。そうでもあるが、然し又、日本を貫く巨大な生物、歴史のぬきさしならぬ意志であったに相違ない” このフレーズどこかで見た事がある、、誰?日本人じゃなかったような気はする
”朝儀を盛大にして天皇を拝賀する奇妙な形式が大好きで、満足していた。天皇を拝むことが、自分自身の威厳を示し、又、自ら威厳を感じる手段でもあったのである”
”人間は永遠に自由では有り得ない。なぜなら人間は生きており、又死なねばならず、そして人間は考えるからだ”
”美しいものを美しいままで終らせたいということは一般的な心情の一つのようだ”
天皇制、武士道は必要に迫られて出来上がったもの。システムに頼るのではなく、人は落ちるところまで落ちたときに自分を見つけ、自分を救う。