やっと放たれる朝の悲しみ。物語前半はこのためにあったのだなぁとも思う。
2023/11/03 23:09
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説家の叔母・槇生と姪・朝の暮らしも、少し多くの時を重ねて、互いの人間関係が融合し始める。しかし、だからこその他者と自己のぎくしゃくした関係も赤裸々に描かれ始め...。
前作で不安に思ったその答えみたいなものが本作で描かれて、朝が初めて親を失った悲しみを感じるややハードなエンディング。しかし、物語の前半は、このために描かれて来たんだろうなぁと思う。
そんな中、元カレから彼氏に返り咲いた気配のある笠町氏が、槇生の友人・醍醐さんに放たれる一言「あんなめんどくせーやつは、一部の好事家しか惚れねぇーよ。おめーのことだよおめーの」...にほのぼのしてしまう。
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投稿者:nico - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝の母の実里さんの背景もついに描かれて、なんだか登場人物全員がどこか何かしらの生きづらさを感じていて、この巻に限ったことではないですけどすごく心にくるものがありました。人物の掘り下げがすさまじいです。
自己理解と他者理解の行程や言葉にならないような感情をここまで繊細に描けて作品として昇華できるってヤマシタトモコ先生の手腕に脱帽です・・・。
一人一人が違国。
2020/03/03 22:15
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投稿者:なまねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝の母、実里がふつうであろうとしたのに、なぜふつうの家庭を持てなかったのかの一端が明かされる。
しかし、朝の父が結婚という形をとることをしなかった理由はまだ不明。
笠町くんの意外な過去もあかされる。
笠町くんと実里は案外似ているところがあるのかも。
実里の日記をいつ朝に渡すべきか迷う槙生。
渡す前に盗み見てしまう朝。
朝に読ませるために書いた日記のはずだが、実里自身が自分に言い聞かせているようにも思える。
槙生は悲しみを、感情を誰にも分かち合わない。
だからこそ物語を綴るのだろうし、たとえ相手が子供であっても(子供だからこそ)安易な嘘はつかない。楽はしない。
両親の死を本当の意味で受け入れた、というか思い知らされた朝。
つらいだろうと思う。
でもつらいだけじゃないラストだった。
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投稿者:うーよー - この投稿者のレビュー一覧を見る
槙生は、人の心を推し量ることはするけれど、「こう思ってる筈」といった決めつけはしない。とても誠実だし、その姿勢を崩すことはないから「信じられる人」だ。読者は傍観者なので、そう思える。でも朝のおかれた状況を考えると、朝に対しては、まず寄り添う言葉が必要かもしれない。朝の心を安定させないと、言葉が届かない。槙生の誠実さに気づくことが出来ない。槙生は親ではないから、親と同様に甘えられはしない。そして、信頼もさせてくれないかもしれない。でも、早く「信じられる人」である事には気づいて欲しい。朝自身の為に。
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投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれあり。
母の日記を読んで朝は動揺する。
しかし「あたしだけ何も持ってない」ってのはよくわからないな。
朝の父親がどうして入籍を嫌がったのかも謎だし。
しかし朝は田汲姓ってことは父親の戸籍に入ってるってことじゃん。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
笠町くんの過去のこととか、朝の両親がなぜ未入籍か理由は書いてないけど、知らなかったかなり衝撃的エピソード満載です。でも、距離は確実に近くなって来てますね、槙生にも朝にも幸せな人生で!
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今回もずっしりみっしりした内容でした。
泣いたよ、、、、そりゃもうわんわんと泣いた。
とりあえず胸にくる台詞を箇条書き
◉『自分が完璧を提出してたら まわりも同じようにできるはずだって思っちゃダメだよ』by笠町くん上司
◉『それは大きな穴を覗き込むような作業で その穴の底には本当は母はわたしを愛していなかったのではないか っという怪物めいた恐怖が潜んでいたのだった』朝
◉『孤独は彼女に寄り添うのに わたしにはちっとも優しくなかった わたしは絶対に正しい真実を欲しがったのに彼女は決してそういうものを示さなかった』朝
◉『なぜわたしの欲しい嘘を知っているのに たとえその場しのぎでも決してくれないのだろう なぜ?』朝
この最後の台詞で私の涙腺も崩壊、、、
ファミレスでえみりと朝が話してるのを見て全体的に朝は(当然なんだけど)子供だなあと。
えみりにひつこく恋話をしてみたり、まきおのことを『変』と縛るのも悪気があるわけじゃないのはわかるけど、、特有の無知さというか。彼女のそういう雑さ無知さは強みにも勿論なるだろうけど、人を傷つけてしまうだろうな。
笠町くん上司の台詞『自分が完璧を〜』は、頭をガツンとやられた、、。ショックだった。
後半は朝が母親の日記を読んでザワザワしとるんだけど
自分に足りない欠けたものにふわっと気づき始めてムシャクシャしよる。やっとやな…
まきおちゃんと話し合いをするもどうにもおさまらんけど、やっとやっと両親の死を体に落とし込めたように見えた。
毎回ハッとする台詞と展開で圧倒される、、、
あー、、感想書いてても重たいわ
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えみりさん苦い。朝は…しかたないのだよな、中3でいきなり両親を亡くして、まだ全然、ぜんぜん、嵐なのだ…本人は足跡が残る砂漠を歩いてるつもりだけど、その砂漠はたぶん、足跡どころか砂嵐で真っ暗な中をどこにいるのかわからないまま歩いてる(実は歩けてもいない)のと同じ…。ただ、渦中にいると虚無感が強くて暴風を感じないんだと思う……
誠実な大人ばかりだし、優しくはないかもしれないけど抱きしめてはくれる槙生ちゃん。
槙生ちゃん私より確実に年下だし、部屋の荒れようもすごいが、自分が潰れないできる最大限を提供しててめちゃくちゃがんばっていらっしゃる。
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──悲しみは果てのない
長い長い浜辺を歩くようなものだった。
ずっと先で砂と水と空とが溶け合って
どこで尽きるかもわからないような美しい浜辺だ。
一歩ごと足が沈み、
砂つぶが指の間に入り込み、
寄せる波に足首が濡れる。
冷たい怒りが足元を
濡らすたび はっとして
かれがいないことを思い知る。
俺の竜は死んでしまった。
もういない。
これからどうすればいい?
忘れよう。
いや許せない。
殺してやる。
誰を?
話したい。
誰に?
眠っていたい……。
寄せては返す波ごとに
ルカの心は小舟のように揺れた。
この浜辺はどこまで続くのだろう?
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ヤマシタ先生、10年くらい追ってて毎度毎度面白〜!!て思うけどこの作品はもうマジで現時点で集大成では!?て思ってしまうな、、、このお話を生み出すためにどれほど心身をつぎ込んでいらっしゃるかと感じるよ。
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「私とあなたは違うのだ。だからお互いを完全に理解することはできない(できたつもりになってもいけない)。しかしその前提の上でつき合ってはいける」というテーマを再認識したような感じ。一方で「人と同じであること」「完璧であること」を規範にしちゃうと、それが自分を傷つけることにもなりうる、というのがこの巻のポイントなのかな。
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もう一つの違国日記な訳だ。
ようやく、ついに、実感として、事実として、朝が両親のことを受け入れた、と言うことだろうか。
女子会恐い。
そう言う話ではないけど。
自分のことを理解し欲しいという欲求と、それに対する絶望と、それを超えた先での表現と。
達観している人が正しいわけでも、諦観している人が間違っていないわけではないし、納得と諦めの拮抗。
つらいなー。
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すごくよかった。子どもの頃は親を単なる「親」として認識しているけど、成長するにつれ「親」もひとりの人間で、人生があって、その人生の途中で自分は産み落とされただけなのだよなとわかってくる過程があると思うのだけど、朝の場合はとつぜんそれを突きつけられた状態で、いろいろ付いていかないだろうな、しんどいだろうなと思った。
両親がいないのは変、とかいろいろ、今まで自分が「普通」だと思っていたことから外れているのは彼女も多分なんとなく分かっていて、でもその「普通」ってのは実は自分の感覚の話で、誰かから押し付けられたり、誰かに押し付けたりするものじゃないってことはきっとまだ分かっていない。両親がいない自分は普通じゃない、普通じゃないのは変、変なのはよくない、みたいな。でもそれが自分の現状で、しかしこの現状に陥っているのはまったく自分のせいではない。悲しいのと、腹がたつのと、困惑と、でもそういうごちゃごちゃした感情にもならない何かを吐き出すすべを彼女は知らない。そういう子どもが、手では触れられない諸々を言葉にしていく小説家と暮らすことの意味、というのを、この巻になって私はようやく考えた。すごくいい。次巻もたのしみ。
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事実を受け入れてこれなかった朝の慟哭とその涙が切ない。
槙生は、真実を受け入れる準備ができたのだと語る。物書きであるが故に、文章を書き残すことの重みを語る。でも、浅の母の名づけの想いは、まだ、届かない。
母の日記?にある、母と父の結婚の事実が意外にエグい。両親の死には何か理由があったのではないか?とかちょっと深読みしすぎか?
さて、一部の好事家とされた笠町クン、そっちはそっちでがんばれ(笑)
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やっと泣けた朝ちゃんにつられて涙。
「わたしは」そう思う、という考え方の大切さ。
この物語の感想は、どうしても箇条書きになってしまう。
最後まで読み通したときに、私の中でもまとまっていくものがあるんだと思える。
こういう読書体験ができているのは幸せだ。