御手洗潔シリーズ みんなのレビュー
- 島田荘司
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紙の本龍臥亭事件 下
2001/08/13 17:04
石岡の、男としての再生のお話
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょこらんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分を置いて、遠く異国の地に旅立ってしまった御手洗。そんな御手洗を理解することもできず、あいかわらず横浜の馬車道のアパートで暮らす石岡は、まるで「老婆」のような生活をしていると自ら例えていた(なぜ「男」ではなく「女(婆)」と例えているのだろう石岡は? その時点でちょっとおかしくないか?)。
そんなある日、御手洗探偵事務所に一人の少女が訪ねてくる。ここから物語は石岡を巻き込んで思わぬ展開を見せ始めるのだが。いつもワトソン的な役割をしていた石岡だが、今回は頼りになる御手洗がいない。この難事件を自分ひとりで解決しなければならないのだ。慣れぬ役割とプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、着実に謎をといていく石岡。今まで御手洗の影に隠れ、自分でもそのポジションに慣れきっていた石岡だったが、門前の小僧が習わぬ経を読むように、常に間近で御手洗の推理を見てきた石岡には、知らず知らずのうちに解決までの道筋が見えるようになっていたのかもしれない。
推理小説で主人公が登場人物を集め「犯人&犯行」を解き明かしていくシーンがあるが、もし違っていたらどうしよう! というプレッシャーの中、犯行現場を実演して謎を解き明かすことに成功する。ここで初めて石岡は御手洗のことを心の底から尊敬するのだった。見事事件を解決した石岡にほんとは「御手洗」なんて人物はいないのではないか、石岡自身が御手洗なのではないか、と周りの人間は言う。それほどまでに見事な解決をした石岡は一人の人間として、男として生まれ変わることができたのだった。
電子書籍龍臥亭事件(下)
2023/03/29 23:47
石岡和己の旅の終わり、そして新たな旅立ち
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
御手洗潔が(ほとんど)出てこない御手洗シリーズ第八長編、後編。
国際電話で、御手洗に「僕は今手が離せない。君が事件を解決するんだ」と言われる石岡。「できるわけないだろう。しばらく会っていないうちに僕が誰だかも忘れてしまったのか」と嘆きますが、犠牲者は増え続け、やむなく石岡は手探りで推理を始めます。密室での銃殺などは上質のアイデアが盛り込まれ、おっかなびっくりながらも謎を解く石岡の姿は感慨深いものがあります。
さらに、すべてが解決した後にもサプライズが。伏線とは言えないほどあからさまに書かれていたのに見事に騙されました。見どころの多い傑作ミステリーです。
同時に本作は、失ったものに思いをはせ、取り戻せるものを取り戻し、決して取り戻せないものに別れを告げる青春小説の側面もあります。クライマックスで命も顧みず奮闘する石岡、そしてエピローグの彼の姿には目が潤みました。『龍臥亭事件』は、長い歳月を経て書かれた、あの作品(微妙にネタバレなのでタイトルは伏せます)の続編でもあるのでしょう。
電子書籍龍臥亭事件(下)
2022/01/05 17:30
業が深すぎ
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投稿者:ちーかま - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻になると岡山で実際に起こった大量殺戮事件(津山事件)と主犯の男について調べた話がかなり長く一体いつになったら現代に話が戻るんだと危惧したが、そこはさすが大御所綺麗にまとめ上げてます。結局御手洗登場なしで、愛憎と因縁にまみれた壮大な物語を石岡氏が解決するという形。
電子書籍龍臥亭事件(上)
2022/01/02 07:21
昭和ミステリーの趣き
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投稿者:ちーかま - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の原風景を舞台にした連続殺人。古き良きミステリーが好きな方におすすめ。石岡氏がメインの話で御手洗ファンはやきもきするところがあるとおもうが、自分は逆にこういう推理する余裕が与えられるような流れのほうがありがたい。御手洗が最初から登場する話で名作とか高評価されてる作品は、とにかく最後までわけがわからない展開で御手洗がラストで一気に種明かしで、あーそういうこと・・って感じでこっちが推理する余地がない。つまり正直楽しめない。この作品はそういう不満を持ってる読者にうってつけの作品で、あの時確か・・とかこれってひょっとしたら・・みたいな推理が楽しめる
電子書籍龍臥亭事件(上)
2021/12/08 18:01
御手洗シリーズ第八長編(?)
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
御手洗潔シリーズ第八長編。と言っていいのでしょうか。本作の主人公は御手洗の相棒、石岡和己です。御手洗は北欧の大学へ研究者として行ってしまい、横浜馬車道に一人残された石岡は無為に日々を過ごし、本作開始時には、生きる屍一歩手前、は言い過ぎでも三歩手前くらいまでは、いってしまっています。初読時はあっけにとられたものです。いくら何でも石岡君、駄目人間になりすぎでしょ……
依頼人に付き添い岡山の田舎まで赴いた石岡は、到着早々密室殺人に遭遇。龍臥亭という元・旅館に滞在することに。さらに殺人が続き……
島田荘司言うところの「器の本格」(密室や首の無い死体等、定番の道具立てを多用する本格ミステリー)を意識したというだけあり、密室や奇怪な死体遺棄の謎、怪しい行動をとる登場人物たちなど、古き良きミステリーの面白さとスリルが横溢する前編です。
2022/06/08 21:46
龍臥亭幻想 下
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投稿者:Keito - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎深き死体の出現
森孝魔王なる伝説の人が事件を起こしたのか?
そしてまた起こる事件
最後の謎解きといっていいのか分からないけどその部分が読んでいて切なく悲しくなりました
電子書籍龍臥亭幻想(上)
2022/06/08 21:41
龍臥亭幻想 上
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投稿者:Keito - この投稿者のレビュー一覧を見る
龍臥亭事件以来8年ぶりに貝繁村に行く石岡
懐かしの面々と顔を合わせつつまたもや別の伝説の事件に似たような事件が起こる
2020/06/21 04:02
最後はスッキリ
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻ではバラバラにされた死者が蘇って復讐をするという謎が。これは何かのトリックなのか、それとも伝説通りの出来事なのか?興味深く読めました。また、どうやって一人の人間をセメントで覆われている地面に一瞬で埋めることができるのか、についてもスッキリ解明!出てきた人たちも皆魅力的でしたが、最後に残された育子がかわいそうに感じました。龍臥亭事件も良かったけど、こちらも負けずに良かったです。
2020/06/14 02:26
御手洗の登場は?
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作から8年後の龍臥亭に集った面々。ユキちゃんも少しだけ大きくなり、里美は弁護士の卵に。そんな懐かしい面々が登場。龍臥亭事件から直接、すぐにこれを読んでいるのになぜか懐かしい気持ちに。さて、上巻では二つの死体が発見されますが、江戸時代の伝説などとも絡めて、まだまだ事件が起こりそうなことを匂わせながら、上巻は終了。今度こそは御手洗が登場するのか楽しみです。
紙の本龍臥亭事件 下
2020/06/07 03:03
胸打たれる津山事件の真相
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
この事件は、現実にあった津山三十人事件をモチーフにしているらしく、中盤でその事件を克明に描写。そのページ数は200ページ超。読んでいて、本編の内容がどうでもよくなりましたf^_^;津山事件はリアリティに溢れていて、優等生だった睦雄が結核に侵され、人から疎まれていく様子が書かれており、もちろん睦雄に非はあるものの、田舎の小さな閉鎖的な社会の怖さを感じさせられました。龍臥亭事件の結末はまぁトリックは島田さんらしい、そんなんありか?と思いつつも何となく予想ができたもので、むしろ津山事件に胸が打たれました。
紙の本龍臥亭事件 上
2020/05/19 16:51
事件の割にはのんびり展開
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
岡山県の片田舎に建つ、元旅館の龍臥亭。石岡くんが訪れた直後から、奇怪な事件が続発。片田舎の建物内で起きる事件、といえばこれはミステリーファンにとっては垂涎もの。さらにこの作品で魅力的なのは館の主人の娘の女子高生の里美。明るくて、話し方がサバサバしていて実に軽快!また、登場人物の所どころで出てくる岡山弁がのんびりした感じでこれもいい!警察官三人ものんびりしていて、これはこれで大丈夫か?と自問自答。そんなこんなでなんだか事件の割にはのんびり展開。さて、後半御手洗は登場するのか?楽しみです。
電子書籍龍臥亭事件(下)
2018/12/29 11:51
過去の事件の比重が大きすぎる
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻でようやく過去の因縁や龍臥亭の連続殺人の中で施されている奇妙な見立てがなんであるかが明らかになるような様々な過去の事件の記述にかなりページ数が費やされます。特に実際に起こった津山事件の都井睦夫の人物像が詳しく記述されており、本書の「都井睦夫の間違ったイメージを正す」という目的がここで十二分に果たされます。しかしながら、ストーリーの流れとしては過去の事件の比重が大きすぎるきらいがありますね。
津山事件は横溝正史の『八つ墓村』のモデルともなっているので、この『龍臥亭事件』もなんとなく横溝正史的雰囲気というのが漂っている感じがします。
石岡の自信回復の物語としてよめる微笑ましさもあります。
電子書籍龍臥亭事件(上)
2018/12/29 11:46
じれったい
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻では二宮佳代のせいでオカルトチックに始まります。龍臥亭でも睦夫の幽霊が登場し、御手洗シリーズなのにオカルトミステリー?と違和感を持たざるを得ませんが、村人たちの口が堅く、石岡はなかなか過去の因縁とやらに辿り着けないまま連続殺人に翻弄されます。岡山県警の人に御手洗の出馬を非公式に要請されますが、御手洗は上述のように手紙および「リュウコワセ」というヒントを書いた電報をよこし、あとは自分で人助けをしろというのみです。御手洗ファンにとってはじれったい展開ですね。
紙の本龍臥亭事件 上
2002/05/22 08:20
あと君に必要なのは自信だけだ
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投稿者:カレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
御手洗シリーズ番外編で、とうとう石岡くんが探偵役を果たす。
岡山県の貝繁村で起こる猟奇連続殺人事件と、戦前本当にあった「津山三十人殺し」の世間には知られていない事情との謎の二重構造になっている。
ここでは作中、島田荘司がいつも唱えている日本人論もからんでくるので、そこにも気をつけながら読みたい。
すると、貝繁村の人々の弥生人的、農耕民族的陰湿さこそが都井睦雄に「津山三十人殺し」を引き起こさせた、という読み方もできる。
最初は物をくれる睦雄にまんざらではなかった女たちも、一度彼が結核患者だとわかったとたん、無関係であることを示そうとして、ことさら彼をおとしめ、積極的に悪口を言ってまわるようになる。
その背景には、常に周囲との調和を第一に考えなければいけない農村での生活がある。
石岡もその日本人体質から自由になることはできず、御手洗に「勝手に劣等感の井戸の底に落ち込んでそれが道徳的だなんて馬鹿げた勘違いをしている」と言われてしまう。
密室、バラバラ殺人、みたて、とミステリーとしてもぞくぞくするような謎がいっぱいなのに、それ以外にも石岡の自信回復、竜臥亭の風流な様子、石岡と里美の出会い、などこれでもか、というほど見所いっぱい。
そしてなんと、ごぶさただったあの人の消息までわかってしまうのだ。
あの人って、誰?
それは下巻の最後のほうにフルネームが出てくるので、そこで確認してください。
電子書籍犬坊里美の冒険
2019/01/14 05:59
トリックは面白いけど
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの通り犬坊里見が主人公で、『龍臥亭幻想』のすぐ後、里見が弁護士としての修習で関わる事件が描かれます。衆人環視の総社神道宮の境内に、忽然と現れて消えた一体の腐乱死体。容疑者として逮捕・起訴されたホームレスの冤罪を晴らすために里見が奮闘するのですが、司法試験に受かったにしては里見の無知さが際立ち、彼女の劣等感や恐怖などリアルと言えばリアルなのかもしれませんが、かなりイラつきます。
この龍臥亭三部作は御手洗潔シリーズというより、石岡和己シリーズと言った方がよく、御手洗の天才的な推理とは無縁の作品群です。里見が苦労して行き着く推理は前作2作の石岡よりはさえているとは思いますが、御手洗潔の対極にある凡才の勇気を讃えるようなストーリー展開をじれったく感じずにはいられません。日頃自分の無能さに悩み劣等感を抱いて落ち込んでるような人たちにはもしかしたら励みになるのかもしれませんけど、正直私の好みではありません。使われたトリック自体は面白いと思いますが。