遠い太鼓 みんなのレビュー
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電子書籍遠い太鼓
2019/09/28 03:44
トラブル
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投稿者:Fortheseventhgeneration - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は海外生活20年くらいですが、今まで1回だけ置き引きにあったことがあります。ロンドンのホテルで、友人の子供たちに私のバッグを見てもらって、その子たちのための朝食を取りに行っている一瞬の隙でした。カードの入った財布もパスポートもそっくり無くなりました。
そこにデリカシーのない日本人がいて、打ちひしがれている私に向かって、
「私って以前ロンドンの旅行代理店で働いてたけど、日本人はどれだけ警告しても全然ダメなのよねー。海外では日本みたいじゃないんだから自分で注意しないといけないって、私が言ってるのにホントに日本人って不注意なのよね。(日本人ぽくない、注意深い私ってステキっ。ふふっ。)」ってバカにして笑ってました。
そうなのです。
海外では泥棒に会う人が悪いそうなのです。つまり間抜けなのです。
でもそれは、どれだけ注意しても対応できない場合も結構ありマス。
村上春樹の奥さんもイタリアで後ろから来たスクーターに、バッグをひったくられて取られたそうです。
ある日本人にそのことを話したら、
「いかにも馬鹿にしたような顔つきで、そんなの盗まれるほうが悪いんですよ、というようなことを口にした。(中略)要するにみんな他人の身に起こったことなら何とでも好きなように言える。常識を働かせなさい、注意深くしていれば大丈夫です。」
でも村上氏はこう述べます。
「僕は3年近くローマを中心に暮らしていて、この町で実にいろんな犯罪を目撃したし、自分の身にふりかかったこととして経験した。そしてそれは「常識さえ働かせれば」避けられると言うような生易しい種類のものではなかったように思う。」
旅先でのいろいろな出来事を記したこの本の終盤、こう書かれています。
「旅行にトラブルはつきものである。考えてみればろくに事情もわからず、知り合いもいず、言葉も満足に通じない見ず知らずの土地をうろうろ移動しているのだから、トラブルがないほうがおかしい。それが嫌なら旅行なんか行かずに家でじっとして貸しビデオでも見ていればいいのだ ー これは理屈である。
理屈であり正論である。でも実際に自分の身にトラブルが起こってみると、そう簡単には開き直れないものである。理屈とか正論というのはあっという間にどこかに飛び去って、遠い背後の風景と化してしまう。そんなものはもう何の役にも立たない。あとには不条理な現実に脅かされ、不確実な未来に直面している傷つきやすい自我がただぽつんと残されているのみである。
不思議な話だけれど(あるいは全然不思議ではないかもしれないけれど)人というものは他人の身にふりかかる災難については比較的簡単に想像力を駆使できるくせに(いや、そういうものだよ、そういうことってあるんだよ、それくらい予想していなくっちゃ云々)、それをいざ自分の身に当てはめるとなると、その精神的追求力は夏の午後の老人のように不活発になってしまう傾向がある。たとえばあなたは明日自分が癌だと宣告されることを想像できるだろうか?あるいはあなたの奥さんが明日どこかの男と逃げてしまい、銀行からの電話でクレジット・カードの引き落とし口座の不足額が五百万円に及んでいる事実を告げられることを想像できるだろうか?その時のショックと痛みをあなたは我がこととして想像できるだろうか?
できるわけがない。実際にリアルな現実としてそのトラブルが自分の眼前に姿を現すと、人はそれを理不尽だと思い、不公平だと思い、あるいは腹を立てさえする。そういうものなのだ。」
紙の本遠い太鼓
2001/02/14 21:04
多少素顔の村上春樹
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投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
主に外国での奥さんとの暮らしのことが書いてある。最初は楽しく読んだが、実は結構長い本で最後の方は飽きてしまった。何げない日常を書いているだけに飽きさせないのは難しいだろう。
奥さんが生理前だかなんだか、一ヶ月にいちどくらいものすごく不機嫌になるときがあるらしい。「そういうときは決して逆らってはいけない」という言葉に笑った。作家というのは気むずかしいものだと思っていたが、そうでもないらしい。きちんと一緒にいる人の顔色を見て暮らしたりするのだ。
読んでいる内に外国で夫婦二人で暮らす寂しさみたいなものを何となく勝手に感じてしまう、この不思議な作品。素顔の村上春樹にちょっとでも近づきたい人はどうぞ。
紙の本遠い太鼓
2002/07/24 15:13
旅の分量
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:HRKN - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上氏は本作に良く似た雰囲気のものをいくつか書いておられるが、私はこの作品が一番好きだ。冒頭におかれた「はじめに」は読むたびに何かしらの感慨が残る。本体のページ分量が多いことは、その旅〜村上氏の言葉によれば「常駐的旅行」〜のボリュームを体感できることに繋がっていると思う。それに所々に収められた美しい写真、それもいいブレイクになっていて心休まるのだ。
電子書籍遠い太鼓
2016/02/28 14:46
村上春樹 地中海滞在記
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投稿者:ぶーちゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹のエッセイは、特に海外滞在記のエッセイは良作が多い。
今作も氏のユーモア感覚、観察眼が生かされた内容となっており、読み応えがあった。
特にギリシャ編の冬の地中海滞在記は、意外に寒いという島での生活がイメージできた。
また、イタリアのエピソードを読んでワインが飲みたくなった。
紙の本遠い太鼓
2023/04/08 18:52
気軽に字面を追うことができて、しかも読みどころ満載の旅行記
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の小説作品とヮ異なり、
軽妙な筆致で綴られた作品です。
内容についてヮ、色々ありますが一点だけ。
著者にとって、シチリアヮ愉快な場所でヮなく、
パレルモヮ「ろくでもない街」だったようです。
紙の本遠い太鼓
2019/02/03 01:44
村上春樹のバックヤード
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
1986年から1989年まで断続的に3年間ヨーロッパに滞在した時期を取りあげた紀行文風エッセイ。この時期に『ノルウェーの森』『ダンス・ダンス・ダンス』ほかいくつかの短編と翻訳を仕上げた実り多い時期。夫人と一緒にイタリアに滞在し、ローマを根拠地にしてギリシャ、スイス、オーストリアなど様々な土地を旅する。日本にない風物に接してのエキゾチシズムを前面に出した内容だろうと思っていたが、むしろ海外生活の不便で理不尽な面に苦労話が多く、イタリアの郵便事情、治安の悪さを恨みもこめて語る。海外での生活苦労記といった趣きだ。しかし回想すればイタリアを懐かしみ、ギリシャの名も知れぬ島での孤独な生活にも愛着を語らずにはいられない。そこには少し前のインターネットも携帯もない時代のヨーロッパの一面が垣間見えるようだ。まとまりがなくて気ままに構成されているが、むしろ小説よりもおもしろいのではないか。
紙の本遠い太鼓
2002/07/01 23:08
住んでみた視点が面白い
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投稿者:ローズヒップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょうどギリシャへの飛行機の中で読みました。長い本ですが、どれもギリシャに「住んだ」著者ならではの視点からのエピソードで、面白かったです。旅行ならまだしも、ギリシャに住んだ経験がある人と出会うことはまだまだ少ないですよね。
『ギリシャ人というのはときどきものすごく哲学的な発言をする』というくだりは、「そんなものかな」と思って読んでいましたが、実際、お土産屋のおじさんなどのふとした一言にも哲学的なニュアンスが含まれていて感心したり…。日本とは全く違った気質をもったギリシャ。これを読むとたまらなくギリシャに住んでみたくなります。
イタリア、ドイツ、オーストリアでのエピソードも興味深いです。
紙の本遠い太鼓
2001/10/09 10:02
遠い太鼓
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投稿者:あんぱん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1986年から1989年までのギリシャからイタリアへの旅を綴った作品。その間に村上春樹氏は『ノルウェイの森』がベストセラーになったり、いろいろあったようだ。春樹的な視点で物事が見られていて、各国のこともわかるしほのぼの旅を疑似体験したい人にお勧め。
紙の本遠い太鼓
2005/07/04 15:26
春樹さん視点の旅行記
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CHIELATTE - この投稿者のレビュー一覧を見る
元々、村上春樹さんが好きで、この作品を読んでから10年以上経ち、今はボロボロになってしまいましたが、小説とは一味違う春樹さんに出会える作品だし、作家としての彼の生活が垣間見ることができます。ギリシャの記述に至っては、私自身、旅した気持ちになってしまいました。(実際、行ってみたいとも思いました)
電子書籍遠い太鼓
2016/02/13 18:40
南ヨーロッパ紀行文
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マネキンのローラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹の小説は苦手なのですが、エッセイは好きで、特に紀行文は好きですね。「遠い太鼓」は1980年代終わりに3年間、村上氏が奥さんと一緒に仕事を兼ねてギリシャ、イタリアなど南ヨーロッパを移動しながら生活した記録です。
私はヨーロッパが好きで、特にイタリアなんかはご縁がないのが悲しいですがすごく惹かれるば場所です。村上氏もその魅力を彼の独特の表現でとてもいい得て妙!に書いています。シンプルで表情豊かで人間らしく暮らせる街。イタリア車というのは故障の代名詞でとんでもない代物だが、なんとも表情豊かで愛着わく人間と同じようなもの。またこの先も住もうとは決して思わないけれど、後々ずっと覚えている印象の強い街。
だいぶ昔に書かれたものなので、現代の感覚からはずいぶんと思い切った表現をするんだなぁ~という箇所もいくつかあるのも面白い。歯に衣着せぬ村上氏の愛情こもった南ヨーロッパ紀行をぜひおすすめします!
紙の本遠い太鼓
2023/08/11 11:34
ギリシャ・ローマ紀行
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回初めて村上春樹のエッセイを読みましたが、小説よりもわかりやすくて面白かった。書かれた時代は私が青春時代を過ごした約35年前の話でしたが、古臭さを全く感じなかった。ギリシャやローマを旅したくなりました。
紙の本遠い太鼓
2024/01/08 14:14
村上春樹さんはエッセイも面白い!!
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ギリシャ、イタリアを中心とした著者のヨーロッパでの生活の記録。
ノルウェイの森はあの地でこうして誕生したのかーと興味津々で読んだし、観光では決して感じることができない、暮らしてみて初めて分かるその国の裏側を目の当たりにできる。
そして何より著者の巧みな表現力で、小説と同じくページをめくる手が止まらなかった。
次はどんな出会いがあり、どんな面白いエピソードが飛び出すのかワクワクして、終わってほしくないなと思いながら読んだ1冊だった。
その後はアメリカに拠点を移されたようなので、続編を期待している。
紙の本遠い太鼓
2023/06/27 14:03
名前が良いね
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
土曜日のお昼はキリリと冷えた白ワインを飲んで、炭火で焼いた魚とイカのフライ、グリーンサラダを食べてみたい、と思いました。
紙の本遠い太鼓
2023/02/26 05:23
この本が一番好きです
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投稿者:づー - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上さんの紀行はどれも面白いですが、この本が一番好きです。この本に刺激され、実際にギリシャ旅行にも出かけました。
紙の本遠い太鼓
2021/03/19 15:58
旅に行けないかわりに。
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹さんの作品は、実は小説よりエッセイ。特に海外での生活を描いた物がいちばん好きです。なかでも本書は、私の中のベスト・オブ村上作品な一冊。何度も読み返しているけど、また読む。『ノルウェイの森』が大ヒットして生活が一変。もしかしたら逃げるように日本を飛び出したのちのギリシャ・イタリアへ長い旅の話。コロナ禍の中、旅情を感じ、旅ができない自分を慰めてくれる一冊でもありました。